122 簒奪者


《敵を全滅させた!》


《経験値を0獲得。》


《12,258,070円を獲得。》


《「ストレングスポーション」を手に入れた!》



 いくつかの敵編成を撃破した俺は、


「経験値を気にしない稼ぎ、気持ちEEEEEEEE!」


 ってなった。


 獲得マナコインも敵のレベルのおかげでべらぼうに高い。

 五重ジョブのデメリットによって経験値の心配もなく稼ぎ放題だ。

 これを気持ちいいと言わずしてなんと言うのか。


 ……と、思いかけた俺だったが、


「いや、なんでだよ。普段だってそんなの気にしてないはずだろ」


 むしろ、どれだけ効率よく経験値を稼げるかに腐心するのが普通だ。

 俺だってこれまでずっとそうやってきた。


 それがなぜ、ずっとはめられてきた枷がなくなったような解放感を感じてるんだ?


 だいたい、「稼ぎ」といっても、現状稼げてるのはほぼ金だけなんだよな。

 ジョブの熟練度も貯まってるはずだが、目に見えるものじゃないし。

 この状況で経験値が入らないことを「喜ぶ」というのはおかしな感覚だ。

 もちろん、特殊条件達成のためにレベルを抑制する必要はあるんだが……。


 それはさておき、最初に確認すべきことは確認できた。


 モンスターのレベルだ。


「アークサハギンが9536、ダークゲイザーが9540、キングローパーが9542……これなら条件を満たしてるな」


 モンスターのレベルは階層を進むごとにおよそ3%ずつ上がることが知られている。

 スプレッドシートでの計算によれば、一層でモンスターのレベルが9518以上だと、四層で同じモンスターのレベルが10400を突破する。

 このまま進めば「レベルが400以上高いダンジョンボスをソロで倒す」という特殊条件を満たせるだろう。


 だが、そのこと自体が懸念材料でもある。

 四層まで進むと、(このダンジョンでは)最弱のアークサハギンですら、レベルが10420にも達するってことだ。

 レベルが844も上がる計算だな。


「聞いてはいたけど……これはキツいな」


 モンスターのレベルが100だったら、階層ごとにレベルが3%上がったとしても、絶対値として上がるレベルは3だけだ。


 だが、モンスターのレベルが高いSランクダンジョンになると、この3%の上昇がかなりの壁になってくる。

 一層でのモンスターのレベルが1000だったとしても、二層になれば1030。

 絶対値で30も上がるわけだからな。


 一方、探索者のほうは一層を踏破するあいだにレベルが1上がるかどうかだろう。

 実際にはレベル的な余裕を持って(つまりモンスターより高レベルの状態で)探索することが多いから、レベルを1上げるのに数ヶ月かかることも珍しくない。


 まあ、既に高レベルに達してるなら、無理にレベルを上げずともダンジョンからの上がりだけでも飯を食ってくには十分だ。

 わざわざ危険を冒してまでレベル上げに励む動機が薄いともいえる。


 だが、高ランクダンジョンの踏破やレベルランキングの上昇に血道を上げる探索者ももちろんいる。


 そんな彼らの前に立ちはだかるのが、この「3%の壁」なのだ。

 Sランクダンジョンとしては最下位レベルの、出現モンスターがレベル1000からスタートのダンジョンですら、二層に進むには30ものレベルアップが必要になる。

 そのためにはどれだけのモンスターと戦わなければならないか。

 Sランクダンジョンがすべて未踏破な理由はいくつもあるが、そのうちのひとつがこの「3%の壁」だ。


 ともあれ、四層でのレベル10400以上が保証されたから、特殊条件の心配はいらなくなった。


「まあ、そもそも無事にたどり着けるかって問題があるんだけどな……」


 普通なら無理だ。

 フルパーティですら無理なんだから、ソロならなおさら無理である。


 だが、俺はどうにかしてその無理を通す必要がある。


 そのための鍵は既にいくつか手に入れたが、それでもなお、足りない部分がありすぎる。


 その鍵のうちの一つ、「簒奪者さんだつしゃ」について見ておこう。



Job────────────────────

簒奪者 ランクC


「俺はすべてを奪い、すべてを従える。たとえ相手が王であろうと神であろうと」


憎しみルサンチマンに取り憑かれ、他者の力を嗤いながら奪うもの、あるいは、余所の子を妬むだけの卑しき幼子~


「盗賊」系統の上級職である「簒奪者」は、他者から奪うことに特化した特殊なジョブです。

モンスターを含む他者から奪った技能を我がものとして使い、従えた他者をおのが下僕として使役します。下僕とされた他者は、死して亡霊となったのちもその支配を脱することができません。


豊富な手札を誇る反面、自身の能力値は著しく低い傾向にあります。

また、どのような能力を奪えたかによって戦い方が大きく異なります。

蒐集した能力を組み合わせて戦略を組み立てることが死活的に重要となるでしょう。


◇アビリティ

【権能簒奪】

アイテム、能力、ときに相手の存在そのものを「奪う」ことができる。奪った能力や存在はカード化され、そのカードを使用することで能力の使用や存在の使役を行うことができる。カードには再使用可能なものと使い切りのものとがある。


◇サポートアビリティ

【奪取無効】

自分に属するあらゆるものを他者に奪われることがない。脅迫等、間接的な手段による強制的な譲渡には効果がない。


◇ユニークボーナス

通常の「簒奪者」と比べ、

・あらゆる種類の武器をひととおり使いこなすことができる

・装備を一瞬で切り替えることができる

・あらゆる攻撃の命中率が破格に高い

・クリティカル発生時にまれに即死効果が発生する

・攻撃に溜めを作ることで溜め時間に応じて攻撃の威力がそれなりに上昇する

・奇襲、先制攻撃、背後からの攻撃時にダメージがそれなりに増加する

・「暗殺者」「忍者」の技能をひととおり使いこなすことができる

・死亡するダメージを受けても一度だけHP1で生存することができる

・自身に迫るあらゆる危険をそれなりに察知することができる

・気配を隠匿する技術が破格に高い

・気配を察知する技術が破格に高い

・ダンジョンにしかけられた罠をほぼ確実に見破り、ほぼ確実に解除できる

・他者のステータスを破格の深度で読み取ることができ、ステータスの偽装をほぼ確実に見破ることができる

・自身のステータスをそれなりの強度で偽装することができる

・モンスターからよりよいアイテムを得られる可能性がわずかに高い

傾向にあります。


◇レベルアップボーナス

「簒奪者」はレベルアップ時の能力値上昇に以下のボーナスが加算されます。

DEX +3, AGI +3, LCK +3

────────────────────



 とまあ、こんなジョブになっている。

 斥候系の技能を維持しながら「奪う」ことに特化したジョブらしい。

 スキル世界で取得していた「強奪」に、「忍術」や「暗殺術」といった攻撃スキル、「気配探知」や「隠密」のような気配の察知・隠匿に関わるスキル、さらには「鑑定」「看破」「偽装」のようなステータス情報を取得するスキルが加わったような感じだろうか。

 その系統のスキルは軒並みユニークボーナスに吸収されたみたいだな。


 サポートアビリティとして新たに手に入った【奪取無効】も、今後「盗む」「強奪」のようなスキルや盗賊系のジョブを持つ探索者と敵対したときのことを思うと有り難い。

 スキル世界では「盗む」はほぼ知られていないスキルだったが、ジョブ世界には盗賊系ジョブの持ち主がそれなりにいるからな。


 ちょっと変わってるのが、アビリティの【権能簒奪】だ。

 スキル世界の「盗む」「強奪」の上位互換のような内容なのだが、盗む対象はドロップアイテムや装備品に限らない。

 「アイテム、能力、ときに相手の存在そのものを『奪う』ことができる」という。

 しかも、「奪った能力や存在はカード化され、そのカードを使用することで能力の使用や存在の使役を行うことができる」。

 ドロー! モンスターカード! ドロー! 魔法カード! ……っていう遊びができるわけだな。

 ……もっとも、このアビリティを持ってるのは今のところこの世界でも俺だけだろうから、デュエルの相手はいないのだが。


「遊ぶには別途友達が必要ですってやつだな……」


 友達とは違うが、「簒奪者」に転職したときに、俺は何枚かのカードを手に入れている。

 「堡備人海ほびとうみLv9999」「布袋ほていLv9999」「源内Lv9999」……そして、「地獄の炎に身を焼かれる凍崎とうざき純恋すみれの亡霊Lv2941」、「世界の狭間で自らの所業を後悔し続けるクローヴィス・エルトランドの亡霊Lv5079」だ。

 スキル「シークレットモンスター召喚」と「英霊召喚」の一部がジョブ「簒奪者」に反映されてるみたいだな。


 シークレットモンスターズのレベルが上がってるのは、「シークレットモンスター召喚」が「召喚されるモンスターのレベルは、召喚者のレベル、撃破時のモンスターのレベル、召喚できる他のモンスターのレベルの中から、最大値となるものが適用される。」という仕様だからだろう。

 「英霊召喚」は対象の死亡時のレベルで召喚される仕様だったので、残念ながら今の俺のレベルまで引き上げられたりはしなかったようだ。


 ……まあ、レベルが上がってたとしても積極的に呼び出したいような連中じゃないけどな。

 いつのまにかクローヴィスまで召喚可能になってるし……。

 スキル世界で凍崎純恋の亡霊を召喚したときの様子からすると、当人の口から生前に知り得た情報を引き出すことも難しそうだ。


「っていうか、この世界では凍崎……いや、氷室純恋はまだ生きてるはずだよな」


 スキル世界では、紗雪がいじめを苦に自殺したあと、SNSに遺書が流れたこともあって、氷室純恋は転校を余儀なくされた。

 いや、ジョブ世界でも、紗雪へのいじめを俺が止めたことで、氷室純恋は俺たちの通う高校から姿を消している

 スキル世界ではその後、氷室純恋は凍崎誠二に拾われて養女となり、姓が凍崎へと変わっていた。

 凍崎純恋となったあの女は、超絶ブラックな探索者ギルド「羅漢」を率いて無理なダンジョンアタックを繰り返し、最後には俺の見ている前で部下からの謀反を受けて死んでいる。

 だが、この世界ではまだ、事態はそこまで進んでいない。

 そもそも、氷室純恋がこの世界でも凍崎誠二の娘になるのかもわからない。


 それでも、少なくとも現時点ではまだ生きてるはずだ。

 まだ生きてるジョブ世界の氷室純恋に、この「地獄の炎に身を焼かれる凍崎純恋の亡霊Lv2941」を対面させたらどうなるんだろうな?


 ……いや、そんな趣味の悪いことをするつもりはないが、並行世界のパラドックス的な意味では気になるところだ。

 タイムパラドクスではないのだから同時に存在しても何も起きないのかもしれないし、何らかの仕組みでいずれかが消滅するのかもしれない。

 それを言うなら、そもそも俺はどうなんだって話になるけどな。


 って、話が逸れてしまったな。


 簒奪者のアビリティ【権能簒奪】の話だった。

 簒奪者になったときにカードが手に入ったのは今述べた通りだ。

 そしてもちろん、実際にモンスターをカードにできるかどうかも既に試した。


 その結果、俺の手元にはここに来る前にカード化した「ロックゴーレムLv24」が12枚、ここに来てからカード化した「アークサハギンLv9536」が2枚、「キングローパーLv9542」が1枚ある。

 ダークゲイザーは視線による即死が怖いので捕獲よりも殲滅を優先した。

 堡備人海たちシークレットモンスターズとはちがって、これらのモンスターに名前をつけることはできないらしい。


 「ロックゴーレムLv24」はあっさりカード化できたが、「アークサハギンLv9536」と「キングローパーLv9542」は、HPをかなり削ってからでないとカード化できなかった。

 アビリティの説明にある「能力」のカード化は、今のところどうやればいいかもわからない。


 ところで、今の説明を聞いて、こう思ったやつはいないだろうか?

 モンスターがカード化できるなら、道中のモンスターをカード化して次のモンスターにぶつければ楽ができるんじゃないか――と。


 俺も最初はそう思ったんだが、どうもそれはできないようなのだ。

 具体的には、カード化したモンスターは、敵に同種のモンスターが含まれるときには召喚できない、という制約があるみたいだ。


 その理由をあれこれ考えてみた結果、一応それっぽい理屈は思いついた。


 【権能簒奪】のアビリティは、モンスターをカードに封じ込めてるんじゃなくて、そのモンスターを生み出す「権能」をカードにしてるんじゃないか?

 つまり、【権能簒奪】が簒奪の対象とするのは、個々のモンスターではなく、ダンジョンに備わったモンスターを生み出す「権能」だという可能性だ。

 だから、ダンジョンによって生み出された当のモンスターを目の前にすると、あくまでも簒奪したものでしかないカードの権能はその効果を発揮できないのではないか。


 だが、この制約があるにせよ、たとえばアークサハギン2体とダークゲイザー1体の敵編成に対し、キングローパーのカードを切ることはできる。

 要は、敵編成に含まれないモンスターのカードなら使えるってことだ。


 それからもちろん、このダンジョンには出現しないシークレットモンスターズは何の問題もなく呼び出せる。

 もっとも、ゴールデントレジャーホビットの「布袋」やからくりドクターの「源内」は戦闘向きじゃないんだよな。

 唯一前衛を張れるのは「堡備人海」だが、槍を持ってるアークサハギンとの相性はいまいちだろう。

 何より、ダークゲイザーの即死が怖い。

 シークレットモンスターズのカードはいずれも再使用可能なタイプだ。

 でも、召喚したシークレットモンスターがやられたばあい、再召喚できなくなる可能性もある。

 気軽に使えるという意味では、通常のモンスターカードのほうが使い勝手はよさそうだ。


 さて、今のところモンスターカードのいちばんの使いみちは、


「……出たな」


 得体のしれない鍾乳洞の奥に、巨大な目玉が数体浮いている。

 いわずもがな、ダークゲイザーだ。

 奥にいるダークゲイザーたちの編成は……ダークゲイザー×5。

 これまで一層で見てきた中でもいちばん厄介な編成だな。


 だが、混じりけなしの純正ダークゲイザー編成なら打つ手はある。


「行け、アークサハギン!」


 俺は手持ちのカードから「アークサハギンLv9536」二枚を抜き、トランプ投げの要領で前に投げる。

 二枚のカードは青白く輝きながら弧を描いて鍾乳洞の奥に吸い込まれる。

 狙い通り、ダークゲイザーの近くでアークサハギン二体が実体化。

 ダークゲイザーたちの視線が二体に集中するうちに、俺はマジックバッグから弓を取り出して装備する。


 簒奪者には、



Job──────────────────

◇ユニークボーナス

通常の「簒奪者」と比べ、

・あらゆる種類の武器をひととおり使いこなすことができる

・装備を一瞬で切り替えることができる

・あらゆる攻撃の命中率が破格に高い

・クリティカル発生時にまれに即死効果が発生する

・奇襲、先制攻撃、背後からの攻撃時にダメージがそれなりに増加する

(後略)

────────────────────



 これらのユニークボーナスがついている。


「GUI!?」

「GYAA!!」

「GYA...!?」


 立て続けにクリティカルヒット。

 一体、二体、三体。

 俺の放った矢が、あっというまにダークゲイザーを撃ち落とす。


 ダークゲイザーはHPもVITも低い。

 AGI(回避率)も低いし、LCKが低いからクリティカルヒットも喰らいやすい。

 そして意外なことに――状態異常「即死」への耐性がない。

 視線を除けば、弱点が宙に浮かんでるみたいな奴だよな。


 何気に仕事をしてくれてるのが、数合わせで入れた「弓使い」のジョブだ。

 複数のジョブを同時にセットしても、普通ならメイン以外のジョブは十分な効果を発揮しない。

 だが、俺の「魔剣士」のサポートアビリティは、



Job──────────────────

◇サポートアビリティ

【戦略的曖昧性】

メインに設定されていないサブジョブの効果をそれなりに引き出すことができる。このサポートアビリティは「魔剣士」がメインに設定されていないときであっても常に有効。

────────────────────



 この一見地味なアビリティが、メイン以外のジョブの能力を「それなりに」引き出してくれている。


 ジョブ世界の俺は、これまでこのアビリティを「ハズレ」の部類だと思ってたらしい。

 複数ジョブは基本的に避けるべき、というのがこの世界の常識だからな。

 そもそも、魔剣士自体、魔法と剣を天秤にかけて戦うトリッキーなジョブだ。

 攻撃の手は足りてるから、サブに何をつけるかは悩ましい。

 しいていえばヒーラー系のジョブだろうが、残念ながら俺が就職可能なジョブの中にヒーラー系のものはひとつもなかった。

 中途半端なジョブをつけるくらいなら、何もつけないほうがいい。

 せっかくのサポートアビリティが無駄にはなるが、獲得経験値が下がったりレベルアップボーナスが平均化されたりするほうが嫌だからな。


 今回枠埋めに使った「弓使い」は、スキル世界で取得したスキルの影響か、ユニークボーナスがCランクの基本職とは思えないほどに充実している。

 スキルで言えば「弓技5」「弓術5」だけでもかなりの効果があったようだ 。


 しかしさすがに全弾クリティカルヒットというわけにはいかなかった。

 俺の矢が四体目のダークゲイザーを仕留め損なうのと、俺が最初に召喚したアークサハギン二体が視線即死で倒れるのがほぼ同時。


 残り二体のダークゲイザーが、俺に死の視線を向けてくる。

 簒奪者には「隠密」のスキルは吸収されてるが、スキル世界で重宝してた「ステルス」のスキルは吸収されていなかった。

 装備した「幽界のマント」の効果で視認しづらくはなってるはずだが、完全に見えなくなってるわけじゃない。

 要は、ダークゲイザーの視線を躱すことはできないってことだ。


 となると、後はスピード勝負。


「行くぜ!」


 俺は片方のダークゲイザーに向かって全力でダッシュ。

 鍾乳石を蹴って跳び上がり、空中で装備を魔剣に戻す。

 逆手に装備した魔剣を、跳躍の勢いで天に振り抜く。


「GGYAAAAAAA!!!!」


 目玉を割かれ、落ちゆくダークゲイザー。

 目玉しかないのに、どこからその悲鳴を出しているのか。

 そんなことはどうでもいい。

 手応えはあったから、末路を確認する必要もない。


 俺は空中で身をひねると、


「ブラストノヴァ!」


 ラス1のダークゲイザーに爆光魔法を放った。

 威力も十分、めくらましにもなるという選択だ。


 だが、一瞬だけ遅かった。

 ダークゲイザーの視界が爆光で閉ざされる前に、ダークゲイザーの視線が俺に通る。

 運の悪いことに、状態異常「即死」が発動。

 俺の冒険は終わってしまった。


 ……というのは冗談だ。


 俺の命が尽き果てる代わりに、俺の装備してた「身代わり人形」が砕け散った。

 用心のために用意してきたアクセサリだが……ものすごくお高い。


 俺が着地するのと、爆光に呑まれたダークゲイザーが壁にぶつかるのがまた同時。

 だが、さっきの剣で斬ったやつとは違い、こっちはまだ生きている。

 剣→魔法の順で攻撃したから、魔剣士のアビリティ【ロンド・オブ・マジックソード】が発動してるんだが、そもそもダークゲイザーは魔法に強い。


 でも、仕留め損なったわけじゃない。


 俺は壁にバウンドしたダークゲイザーからアイテムを盗む。

 【権能簒奪】ではなく、普通に盗賊系の上級職である簒奪者の技能で盗んだのだ。



《「身代わり人形」を手に入れた!》



「よし!」


 と喜びながら握り直した魔剣を振り下ろす。

 剣→魔法→剣なので威力アップだが、それがなくてもHPは残りわずかだったろう。


「GIIIAAAAAAAAAA!!!!」


 耳障りな悲鳴とともにダークゲイザーが息絶えた。

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