119 新たなる可能性
『自分よりレベルが400以上高いダンジョンボスをソロで倒せ』――
神様が口にしたお告げとそっくり同じ特殊条件を、俺は元の世界で確かに満たしている。
それは、これだ。
Congratulations !!! ────────────
特殊条件達成:「自分よりレベルが400以上高いダンジョンボスをソロで倒す」
報酬:スキル「幻獣召喚」
────────────────────
「クダーヴェか……!」
たしかに、世界そのものすら灼き尽くすメギドブレスを持つクダーヴェなら――
「……いや、そうか?」
ここが元の世界と境界を接した異世界なら、世界に穴を開けて押し通るという手は(かなり危険だろうが)なくはない。
クローヴィスがダンジョン崩壊を利用して元の世界への帰還を目論んだみたいにな。
だが、今俺がいる世界は、元の世界の並行世界である可能性が高い。
並行世界(仮)については何もわからないが、元の世界と異世界のように隣接してるわけじゃないだろう。
差異はあっても時空間を含むほとんどの部分が共通してるんだからな。
その問題をさておくとしても、そもそも俺は既に「幻獣召喚」を取得済みだ。
特殊条件をもう一回満たしても、取得済みのスキルを二重に取得することはないだろう。
もし取得したとしても、ジョブシステムしか存在しないこの世界では手持ちのスキルは使えないのだ。
いや……待て。
そういえば、授業中に気になる「天の声」が来てたよな。
《不明なスキル???が1つ未取得状態???になりました。》
《このスキル???についてこれ以上の操作は必要ありません。》
こういうやつだ。
完全に余談だが、パソコンで出てくる「これ以上の操作は必要ありません」は大抵のばあい嘘だよな。
フリーのソフトウェアが勝手に削除されてて、それを手動でもとに戻す必要があったりする。
「ひょっとして……」
俺はステータスを開き、一時格納されてるスキルを見る。
Status──────────────────
スキル???槍技5槍術5短剣技5短剣術5槍投げ5格闘技5弓技5弓術5体術3格闘術1棍術1打撃武器1暗殺術4忍術4ショートテレポート4毒噴射1エナジードレイン1地割れ1疑似無敵結界1強奪1MP破壊攻撃1魔力暴走シークレットモンスター召喚3英霊召喚1古式詠唱5強撃魔法5魔法連撃2MP節約1属性増幅1二重詠唱1奇襲1先制攻撃1先手必勝1先陣の心得1自爆攻撃5ロックオン3バックスタブ1渾身の一撃1凶暴化1チャージ1自己再生5回避アップ1幽体防御1魔法障壁1セルフダメージ軽減1絶対防御ソリッドバリア魔法相殺パリング1土俵際確率効果無効幽体生存1リバイブサバイブスキルコンボ5切り札化4天誅4思考加速3魔神化1魔人化3虚仮の一念1HP最大時攻撃力アップ1ホットハンド1クイックドロー逆行威圧ノックアウト追い払う分裂1HP強化5MP強化5攻撃力強化5防御力強化5魔力強化5精神力強化5敏捷強化5幸運強化1身体能力強化1能力値成長率アップ1感電耐性3麻痺耐性2石化耐性2睡眠耐性2即死耐性2混乱耐性2沈黙耐性2罠発見5罠解除5アイテムボックス5危険予知隠密5気配探知4索敵3獲得SPアップ3ステルス鑑定簡易鑑定偽装窃視看破再鑑定アーカイブミニマップトレジャーハント1財宝発見隠しポータル発見エバックダンジョントラベル魔法言語ダンジョン生成1
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隙間もなく詰め込まれてるから見にくいが、あったはずの「幻獣召喚」が見つからない。
朝ほのかちゃんとバスに乗ってたときにはあったはずだ。
「天の声」の言う未取得状態になったスキルは「幻獣召喚」だったのか。
「なんで『幻獣召喚』だけなんだ?」
この世界にスキルシステムはないにもかかわらず、他のスキルはなくなってない。
「魔剣士」のジョブに一部のスキルが吸収され、残りは保留のような扱いになっている。
それなのに、「幻獣召喚」だけが消えている。
どうしてだ?
「……そうか。この世界にはクダーヴェがいないからか」
ひょっとしたらいるのかもしれないが、(この世界の)俺に召喚されたことはない。
この世界の俺は魔剣士だからな。
「クダーヴェを再召喚するのが元の世界に戻る鍵ってことか?」
ただ、クダーヴェに並行世界のあいだを行き来するような能力がなさそうなのは気になるよな。
まあ、ひょっとしたら俺が知らないだけであるのかもしれないし、この並行世界が元の世界と地続きになってる可能性もある。
なんとなくすっきりしないものがあるが、少なくとも神様のお告げは真だからな。
……ところで、スキルの「抜け」は本当に「幻獣召喚」だけなんだろうか?
ジョブ「魔剣士」に吸収されたスキルと残存しているスキルを合わせると、たしかに記憶にある通りのラインナップにはなっている。
それなのに、どうにも「何か」が足りないような気がするんだよな。
それも、肝心要の何かが。
「なあ、神様」
「なんじゃ?」
「元の世界の記憶が、ところどころ曖昧なんだ。これを神様の力でどうにかすることはできないか?」
「むむむ……それはちと難しそうじゃの」
「そうなのか」
「うむ。先にも云ったように、今おぬしは二つの魂が重ね合わされた状態にある。その記憶喪失がこの状態に伴うものであるならば、下手に干渉するのは危険じゃろう」
「それは……触らないほうがよさそうだな」
「自然に思い出すのを待つほうが無難であろうな」
「じゃあ、使えなくなってる元の世界のスキルや能力値は?」
俺は一部のスキルが魔剣士に吸収されたことを神様に説明する。
「ふむ……興味深い現象じゃな。スキルという異なる世界のシステムを、この世界のジョブシステムに翻訳する作用が働いておるようじゃの。であるならば……」
と言って、神様が金の瞳を俺に向ける。
「ほう、ほう! 成る程。おぬしは弱体化したと思っておるかもしれぬが、あながちそうでもないようじゃ」
「えっ、どういうことだ?」
「どうもこうも、この世界では此方こそ我が領分なのじゃ」
「この世界では……?」
「うむ。この神社がこの世界でなんと呼ばれておるかは知っておろう?」
「転職神社、だよな。ってことは、ひょっとして……」
期待に滲んだ俺の言葉に、神様は重々しくうなずいた。
「
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