第2話 侵入者

 恐る恐る階段を降りて行く。

 階段の下は廊下で、それはキッチン、リビング、バスルームへと分かれている。

 キッチンのドアが開いていたので、そこにいるのかと俺達は覗き込んでみた。

 いた事はいた。

 ただし、首と腹からおびただしい血を流し、足をおかしな方向に捻じ曲げて横たわっていた。

「ヒュッ!!」

 声にならない声を上げ、駆け寄ろうとした俺を仲間が止めた。

「死んでる!」

「でも!」

「落ち着け!見ろ」

 言われて、もう1度よく見る。

「あ」

「熊?」

 赤い足跡が、そこらじゅうについていた。こいつを襲って、その血を踏んで、その足で歩き回っているらしい。

 皆、その熊の姿を探すようにキッチンを見たが、熊の姿は見当たらない。

 カウンター越しに見たリビングにも、足跡はあるが、熊はいない。

「出て行ったのかな」

 息も声も潜め、皆でギュッとひとかたまりになりながら、せわしなく辺りをキョロキョロとして言う。

「今のうちに、逃げよう」

「いや、外に熊がいたら、俺達が出たらヤバイだろ」

「とにかく救急車だ。いや、警察か?」

 言いながら、スマホも荷物も全て2階に置いてあったので、階段を上り始める。

 そこで、見てしまった。

 階段の下のちょっとした物置から、のっそりと熊が姿を現すのを。

 そして、俺達の方に血にまみれた顔を向けるのを。

「ぎゃあああ!!」

「バカ!!騒ぐな!!」

「走るな!!」

 もう遅い。熊は新たなご馳走を見付け、階段の下に回り込む。

 それを見た俺達はパニックになって、我先にと階段を上がり出したのだった。


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