第4話 案ずるよりも生むが易し

 強引に、サンドイッチを飲みかけのココアではなく、新たに購入したミネラルウォーターで、流し飲んだエミリーへの課題の天使は震える手で罵る言葉を吐き出したので、予想よりも簡単にエミリーは訓練をクリアーし、更新の申請のあと、反対側にあるもう一つの天空のお城行きのバスにのりこんだ。


 でも、エミリーはなにかすっきりしない気持ちが残り、上司からお城について退勤カードをおしたら、好きなゴスロリ服に着替えて、私の部屋にいらっしゃいなさいとテレパシーを受けた。


 了解しましたと答えてエミリーは震えても泣いても諦めず家を守るためにあんな男のもとへなどお嫁へ行きませんって父様や母様や乳母へ本心を伝えていれば自殺なんてしなかったのかも知れないっ。


 そうすれば実家も嫁ぎ先もエミリーのことを新聞報道されてつぶれることなかったし、愛もなくエミリーと結婚し、彼女を一度を抱かなかったばかりか義理の父にエミリーを与え、姑との中も悪くしたあの憎い夫でさえも遊郭あがりのスタイルだけは良かった妾と心中未遂を起こし一人だけ生き残ることもなかったかも知れない。しかも、女の腹には二人が気づかなかった赤子もいたのに…。


 過去に思いをはせ、表情が蝋人形ろうにんぎょうみたいになるエミリーの横顔を車窓のまどはずっと映していた。

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