第2話 出逢い



【FUTER】の本社にようやく到着した俺達は


 突如として現れた豪寺を無視して入り口に足を踏み入れる。


 入り口には蓮達と同い年であろう人達が50人近くいる。


「思ってたよりも少ないなー本社のビルだってのに。」


「まあ、無理もないわよ。」

「なんせあの災害があった時のモンスター達と戦うんだからね。」

「命を無駄にしたくないって人の方が多いと思うわ」


芽衣が真剣な表情……。

いや、悲しい表情を浮かべる。


「そうだな……。俺の父ちゃんもあの時の災害で……。」

小次郎が目に涙を浮かべる。


「なーーに2人して落ち込んでんだよ!」


「あんなことがもうないように、俺達が全ての時代の平和を築きあげるって約束したろ!」


「いつもみたいに俺を小馬鹿にしてくれよ笑」


俺はその場を和ませるために芽衣と小次郎を励ましてみた。


「それもそうね。蓮に励まされるなんて初めてかも笑」


「ありがとな…。蓮…。でも……お前が1番泣いてるぞ?笑」


「お前らのために泣いてんだよ、

俺が馬鹿みたいに泣いてれば2人とも元気出すと思ってな笑」


       『『はいはい。笑』』



 『【FUTER】試験に参加の方々は受付を次第このビルの99階まで来るような!』


黒服のスーツを着た男が声を放った。


黒服の頭の上には黒い羽と黒いツノを生やした小さな悪魔のようなモンスターがいる。


「何、あの悪魔ちゃーん♪チョー可愛んですけどー♪」


すかさず可愛いものに目がない芽衣がその黒服の男に近づいていった。


「芽衣!やめとけって!」


俺は少し焦った声で芽衣を止めようとしたがあのはしゃぎっぷりだと無駄だと悟った。


「大丈夫だって♪少し触らしてもらうだけだからっ♪」


やれやれとした表情で、小次郎が呆れた顔で俺と目が合った。


「その悪魔ちゃんって貴方のパートナーなんですか?

少し触らせてもらうことってー……」


芽衣が気さくに声をかけたが、


「そんなことより受付はもう済んだのか?」


「ここに遊びにきたのなら帰ったほうがいい。」


「それにこいつはちゃん付けで呼ばれるような可愛い奴じゃないんでな」


黒服が芽衣に目も合わせず厳しい言葉をぶつける。


「……。」


まさかここまで厳しい言葉が返ってくるとは思っていなかったのか、芽衣は目をまん丸にして立ち尽くしていた。


「すいません。この馬鹿が気も使わず変なことを言ってしまって泣」


すかさず俺と小次郎がフォローに入るが、


「仲良しごっこをするためにここにきたのならお前らにこの仕事は向かない。」


さらに厳しい言葉が返ってきた瞬間、


「なによ!初めて人間を襲わないモンスターを生で見たんだから少しぐらいはしゃいだっていいじゃない!!」


「このまっくろくろすけ!!!」


周りの人達が俺たちに注目している。


そりゃ、こんなぺえぺえの若造で、まだ【FUTER】試験にも合格してない奴らがここの会社の人間に対して文句を言っているのだ。注目を浴びるのは当たり前だろう。


「わかったから行くぞ芽衣!

申し訳ございませんでした。後で厳しく言っときます。」


小次郎が芽衣を受付のロビーまでひきずるように連れて、


「まあ、芽衣らしいっちゃ芽衣らしいな笑」


「後でお偉いさんに叱られなきゃいいけど泣」


俺は、不安を感じながらも小次郎達の後を追う。


すると受付を済んだのであろう、あの成金、豪寺康雄が、前から歩いてきた。


「はぁ、お前らと同じ街に住んでると言うことが恥ずかしくて恥ずかしくてたまらんよ。」


「お願いだから僕に迷惑をかけることだけはやめてくれたまえよ。」


悔しいし反論できないのが歯痒いが


「別にお前に迷惑かけるつもりなんてねーよ

そもそも俺らに絡んでこなきゃいい話だろ?」


必死に出てきた反論だが


「今そこの女が現にみんなに迷惑をかけているし

ここで私が注意をしないで誰がすると言うんだい?」


「くっ…。」


ぐうの音も出ない。


その張本人は、黒服に向かって威嚇をしている真っ最中で話を全く聞いていないのが不幸中の幸いだ。


「まあまあ2人ともここで喧嘩をする方がみんなに迷惑だと俺は思うんだが?」


小次郎が間を割って入ってきた。


「ふんっ、まあ精々この試験に落ちないように祈りたまえよ。」


豪寺康雄は嫌味を吐き捨てその場を後にした。


「助かったよ小次郎〜泣」


半分なきべその俺は、小次郎に感謝の意を込める。


「芽衣もいつまでもそんな不貞腐れてないで行こうぜ!」


「今日は大事な日なんだろ?問題はなるべく起こさない方がいい。」


「そ、そうねいつまでもあんなまっくろくろすけ相手にしてられないわ。」


「相手にされてないのはどっちなんだか。」


と、心の中で思った。


そして受付を済まし99階に足を運ぶ俺たちは、

 様々な形や、模様をした卵を見て興奮気味になっていた。


「すっげー!この中に俺のパートナーになるモンスターがいるのかー!」


「どんなかっこいいモンスターと出会えるんだろうなー」


「そうねーあたしも物凄く強いモンスターとパートナーになりたいわ♪」


「2人とも理想が高いなードラゴンとか、そういった強いモンスターは中々現れないって言う話だぞ?」


俺達が理想のパートナーについて話をしてる時奥から、


「おーこいつはすごい。」

「こんなモンスターは初めてだ。」

「たしかに。」

「生まれたてなのにこの大きさは規格外だ」


「なんか奥でざわついてるな何があったんだ?」


俺達は、奥の様子を見てみると、そこには豪寺康雄とその隣には2メートル以上はあるであろう、キラキラに輝いたゴーレムのようなモンスターがいた。


「ふっふっふっ。当然だ。なぜならばこの豪寺康雄様のモンスターなのだからな!」


「悔しいけど、羨ましいぜあいつ。なんだかすげー眩しかったけど。」


「まっ世界の為に働いてくれるなら俺たちにとっても世界にとっても頼もしいやつになるさ!」


「あんなのほっといていきましょ、もうすぐあたしたちの番よ!」


俺達の番が、ついに回ってきた。


中には、卵が羽化してくれなかったのか、1人部屋を後にするものもいた。


それを見て俺は 


「小次郎、芽衣、最後に1つだけ。」


俺は、真剣な眼差しで2人に話しかける。


「3人揃って。いや、パートナーを含めて6人で!最高のヒーローになろうな!」


「あったりまえでしょ!」


「そうだな!」


2人の表情を見て安心する


「よしっ、最初はあたしの番ね♪」


芽衣がegg summonの装置に近づく。

 芽衣に反応したのか装置が青白く光出す。

そして芽衣の目の前に卵が現れた。


「この卵に君の手を当ててみてください。」


「そうすれば貴方が選ばれたのなら卵は羽化して貴方の言うことを聞くようになりますよ」

試験官の1人が言う。


「わ、わかりました。」


手を少し震わせながら芽衣は手のひらを卵に触れる。


 その瞬間卵が光に包まれ可愛らしいパンダ?のようなモンスターが生まれた。


     『『ぱ、パンダ?』』


「蓮。今日はよく思考が合うな。」


「言葉がそれしか見つからないからだろ。笑」


「にしても芽衣のやつ強いモンスターがいいって言ってたけどあんなパンダみたいなモンスターでいいのか?」


俺の心配は無駄に終わる。


「か、か、かわいいーーーーーー!!!!♪♪♪」


芽衣は瞳をキラキラさせて声を上げている。


「芽衣が可愛いものに目がないのを忘れてたよ笑」


「まあ、でもあれなら問題なさそうだ」


「よし、次は俺の番だ。行ってくる!」


小次郎が少し緊張しているのがわかった。


「小次郎なら大丈夫さ!」


小次郎は俺に手を向け

 心配すんなよと、ジェスチャーで答える。


「見て小次郎、チョー可愛くない?」


「ジャイアントパンダっていうモンスターなんだって♪」


「生まれたては可愛いし大きくなった強くもなるなんて最高だよー♪」


「わかったわかった笑」


「次は俺の番だな。奥で楽しみに待っててくれ。」


少し緊張が伝わってきたのか、芽衣は


「うん、わかった!後でみんなのモンスターに名前つけてあげようね♪」


そう言って奥に試験官と共に消えていった。


さっきと同じように卵に手を当てる小次郎。


卵から羽化してきたのは影武者というモンスターみたいだ。


「うん!俺のイメージ通りの相棒だ!よろしくな!」


小次郎も良い相方が決まって俺は、自分のことのようにホッとしていた。


そして最後。俺の番が回ってきた。


「先に行ってるぞ。」


「おう!芽衣と待っててくれ!」


小次郎も奥に試験官と共に消えていった、。


「ではここに手を当ててください。」

試験官の言う通りに手を当てる。


しかし………。


 シーーーーーーン………………。


反応が全くでてこないのだ。


「おいおい…………。嘘だろ?」


試験官達の残念そうな顔が横目に見える。


「これじゃ、2人に合わせる顔が。」


すると頭の中に声が聞こえてきた。


『蓮様。私の事を強く深く願ってください。』


『そして貴方様の暖かくて大きな両方の手で私に触れてくださいませ。』


 俺はその聞きなれたような声に咄嗟に反応し、


 今までの事


 2人のこと、


 そしてこれから共に死戦を歩むであろう。パートナーの事を。強く。深く。願い、両手を卵に当てた。


すると卵から白い光が辺りを包む。


「な、なんだこの大きくも小さくもないふっくらとした感触は、」


目が慣れ、目の前に目を向けるとそこにはまだ幼さを感じる女の悪魔のような子がいた。


「ってことは今俺が触ってるこれは……。」


「うわわわわー!ご、ごめんそんなつもりは!!」


「いいんです、蓮様。私の全ては貴方様の物です。」


「てか、君はモンスターなのか?喋るモンスターなんてきいたことないぞ!」


すると試験官達が疑問の表情を浮かべる。


「さっきから君は何を独り言を言っているんだ。」


「このモンスターは、女型の悪魔族だ。」


「非常に珍しいモンスターだ。頑張って育成したまえよ」


俺はついに、あたまがおかしくなったのか?

 女型の悪魔族と、目が合う。


「私の声は今、蓮様にしか聴こえていませんよ、

それに私はテレパシーというやつで喋っております♡ニコ」


「は、ははは、はは」


「私はサキュバス、バスティーって呼んでくださいご主人様♡」


こうして無事?にパートナーとの出逢いを果たしたのである!


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