第5話 限界を感じた日
夫婦の寝室を追われ、夜に居間でぼんやりするしかない私。
昼間は娘をなんとか学校へ行かせるべく頑張り、ムリならあきらめて、勉強を一緒にし、息子が帰って来ると、ゲームがしたいと泣きつかれる。もう、限界だった。
せめて、息子がルーターを介さず、セキュリティに問題のある方法でゲームをしようとするのだけはさせないようにしたかった。もう、どうにでもなれという気持ちで、Wi-Fiのルーターを自分名義で契約した。
息子は学校へ行き、学校で頑張って勉強し、きちんと、塾にすら行っている。なんら悪いことは一つもしていない。片付けが少しできてないぐらいだ。それを片づけもしない、食卓テーブルに置かれた紙マスクに殺意を感じ。追い出されるか、旦那が出るか、どっちでもいいと思った。離婚や別居云々よりも、それをするときの手間が憂鬱なだけで、旦那と離別することに別段何も感情はわかなかった。これからの生活、子供らへお金の不自由なくなんとかやっていけるのかとか、そういうことで頭がいっぱいだった。
息子の部屋へルーターを据え付け、多分、近いうちに夫にバレるであろうと思いつつ、しばらく、娘へ集中したかった。
娘は行きたい高校も決まっていて、彼女の実力なら、頑張れば入れるラインであったが、その不登校気味のお陰で勉強は歯抜けになり、著しく学力が落ちていた。私は薄っぺらな中一・二の総復習できる問題集を五教科分買い揃え、この冬休みを過ごすことを決めた。
息子がゲームをしていないと思っている夫はやや上機嫌になり、夫婦の寝室兼パソコン部屋であった部屋に家計費で自分のデスクを買いそろえ、なにかとこまごまとした備品を買い、また、嬉しそうにしていた。
娘の対策として、家の居心地を悪くする。そして、学校へ行く方がマシだと思わせる。しかし、本人があまりに苦痛にならない方法で…というのを考え、六時~7時までを地味に起こす時間。7時からを過激に起こす時間と決め、それでも、学校へ行かない場合は午前中は自主学習として、私が見張りながら居間で五教科を勉強させ、私自身で教えた。予定通り終わらない時は昼食後もさせた。それにより、娘はこれなら学校へ行った方がいいと思ったらしい。冬休み四日前ぐらいからきちんと定期的に学校へ行くようになった。
そして、早々とルーターは見つけられ、夫は私に詰め寄った。
私は夫の給料からもらっているお小遣いからの出費であり、それならばよいじゃないかと言ったが、夫は「なら、そのお小遣いをなくそう」と言い出した。とにかく、家から息子と一緒に出て行けと言われた。もしくは、通帳とカードを渡せ、俺が出て行く。と言った。私は考えさせてほしいと言い、夫はLINEで「今週中にきめてくれ」とメッセージを寄越した。
その後、娘と夫は喧嘩をし、娘も一緒に連れて行けとLINEのメッセージをくれた。
そう、LINE…これもまぁ、また、色々あったなぁと思い出す。
在宅ワークから出勤に変わった頃か、変わった前か、忘れたが夫は毎日帰る前にラインのメッセージをくれていた。しかし、くれる時間は5時半から6時である。そんな主婦の忙しい時間に返せるわけもない。返すどころか、観る暇もない。それが夫は寂しかったのだろう。送る意味もなしと、送るのを辞めた。おかげでいつ帰って来るのか判らず、ひやひやしたっけ…
そう言えば、こんなこともあった、私が夫の昼食のために菓子パンを用意していたら、こんなパンはいらないと文句を言い始めた。手が汚れるようなパンはいらないと…私は当惑した。それってどんなパン? 結局、これも夫のわがままだった。だって、ピザパンはダメで、ウインナーにマヨネーズがかかったパンはいいとか…どういう理由かがさっぱりだ。嫌がらせ以外に思えなかった。とうとう、夫は自分でパンを購入するようになった。
つまり、「何もしてくれない」ではなく、それらその他を全部拒否したのは夫である。
何もしてくれないのではなく、何をしていいかをわからなくしたのは夫である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます