第4話 子供達への虐待に近い締め付け
子供らの通学も始まった。
おのずと、外へ出る以上、荷物を持って行ったり帰ったりする。
子供らは玄関や居間に鞄を放置する。それが夫には気に入らなかったらしい。何度も注意を受けた。しかし、子供というものは無意識に置いてしまう生き物でもある。息子はそれが特にひどく、私は何度も注意をした。しかし、時々、やはり水筒などが置き去りにされたりがあった。息子の管理ができていないという風に夫は取ったらしい。そもそも、息子の管理ってなんだ。子供の管理って…それは家畜かなにかか?
その後、一度でも放置をしてあるのを見つけたら、ゲーム禁止が言い渡された。永久に死ぬまで、一生なしというのである。夫の寿命が尽きればそんなことはあり得ないし、子供が自立すればそんな禁則事項は関係ないだろう。しかし、それを未成年の小学生の息子に言うというのは虐待ではなかろうか? むしろ、私はそう言いつつも、いつか禁止を解くつもりなのだろう? と、聞いてみた。しかし、旦那は一生だという。私にすら禁止事項が終わる日を教えない。私も途方に暮れた。
ゲームを禁止にされた息子はぼ~として、することもなく、病み始めた。ゲームのコントローラーを持ってはゲームをしているようなそぶりをして、泣きそうな顔をしている。水筒一個の片付け忘れでこれである。夫などゲームにパソコンし放題、食べたお菓子の袋はゴミ箱にも入れず、パソコン周りに放置、ペットボトルも処理せず、キッチンに放置である。一番辟易したのは紙マスクだ。このコロナのご時世に、食卓テーブルに放置するのである。捨てようとすると、また明日も使うなどという。もう困ってないのだから毎日変えてくれ、というか、毎日、自分でゴミ箱に捨ててくれ、もしものことがあったらどうする? と、何度言っても聞かない。大体、帰ってきて夕飯前に手も洗わない。本当なら、帰って来た途端、スーツをアルコール消毒して、そのまま、お風呂場へ直行して風呂へ入ってから、食事をするぐらいのことをしてもいいと思うのだけれど、それもしてくれない。
ウチの家に基礎疾患のある人間はいないけれども、少し離れた夫の実家には年配の義祖母と、ご両親がいる。私は車の免許は持っているけれども、ペーパードライバーなので、義母さんに週二ほど買い物に連れて行ってもらっている。そんな方に私からうつすようなことがあってはならない。おのずと、義母さんへ買い物を頼むのはのっぴきならないとき(あまりにも重くて持てない物を買う時)だけとなった。
後、通勤するようになってから、寝室を一緒にしていたら、いびきがうるさいなどという理由から夫は居間のとなりの和室で寝るようになった。その上、私がそばにいると、存在自体が邪魔などと言うようにもなった。どちらが先だったかは判らない。けれど、夫が会社から帰ってきて、居間でMacのノートをいじりながら、だらだらいるのは非常に憂鬱だった。子供らも何かにつけて、怒鳴り声をあげ、禁止だと叫ぶ夫を疎むようになり、居間は家族の楽しいスペースではなくなった。
娘が昔のパパがいい、昔のパパじゃなくなった。と、悲しそうに言うので、私は非常につらかったし、息子は夫と顔を合わせようとせず、逃げるように部屋に飛び込むので、申し訳なかった。
子供のパソコンの使用時間にしろ、ゲーム時間にしろ、確かに約束は必要だと思う。しかし、ガチガチに禁止を突きつけたところで、それは歪むだけではないのだろうか? 子供達だって、何もかもが好きで学校へ行っているわけではないし、勉強をしているわけではない。必死で嫌な時も学校へ行っているわけであり、勉強をしているのである。息抜きも出来ない家なんて、どこが楽しいのだろう。
そもそも、夫は散らかそうが、怒鳴ろうが、ゲームもパソコンもスマホも使い放題で、家のことは何もしないのである。子供らは少なくとも、夕食の皿洗い、皿拭き、頼めば、洗濯物の取り込みなどもしてくれる。自主的に行いはしないが、言えばきちんとしてくれるのである。その上、箪笥に衣服をしまってたら、自分で出して着る。
夫はというと、箪笥から出しもしないで、ないと騒いでいる。
おかげで、スーツ用のシャツ、靴下などのセットをスーツの近くに置いたり、吊って置いたり、果てはパジャマとパンツを洗濯機の上において置いたり(洗濯機の隣が風呂のため)どこが大人なのだろう。子供らの方がよっぽど大人である。
それにもかかわらず、私のことを「なにもしてくれない」と、夫は怒鳴り散らすのである。私はあまりに疲れてしまい、「家事をやりやすいように、和室で寝たい。貴方が帰宅してからは二階のパソコン部屋兼寝室には入らないから、二階で寝てください」と言った。それから、夫は帰宅するとご飯を食べ、二階のパソコン部屋へ行くようになった。どうやら、誰か、私の知らない人とオンラインゲームを楽しんでいるようだった。もはや、私はたとえそれが女性でも構わないと思うようになった。外に男でも女でも誰がいたってかまわない。ただ、子供らにつらく当たったりせず、優しくしてくれるならそれでいいと思うようになった。
その後、息子はあきらめて自分でパソコンを買った。私の実家の父から少々早いが中学祝いという形で資金援助を受け、私のクレジットカードで購入した。それを知った夫はというと、ネット回線を使わせるな!と、また子供のようなことを言い出した。しかし、息子は上手である。Wi-Fi機能のあるパソコンを買った。しかし、パソコンに堪能な夫はどうやったのか自宅のWi-Fiに制限をかけた。すると、息子はルーターからLANケーブルをひっぱり、自分の部屋のパソコンへとつないだ。もはや、息子は夫を信じず、夫に何を言ってもやってくれない人、ATMとまで呼ぶようになった。これについては、夫が酷いのか、息子が酷いのか判らない。一応、私は息子へ育ててくれているし、夫は頑張って働いてくれているのだから、そういう言い方はないだろうとたしなめたものの、効果はなかった。当然だが、私も散々たるこれまでの仕打ちに対し、同じように少し思うところがあったからだ。そして、夫から「今度、一度でもLANケーブルをつないで、息子がパソコンをしようとしたら、息子と二人でいるもの持って出て行け!」と言われた。
私は息子へ何とかするから、しばらくはあきらめるようにと言った。少しでも時間が欲しかったし、急に放り出されたらどこへ行っていいかも判らなかったからだ。ちなみに、それなら「貴方がでていけばいい!」と言い返した私に夫は「なら、通帳とカードをよこせ! でていってやる!」と言ったのもこの頃である。それはそれで困る。私は専業主婦であるし、お金を握られている以上、そこは弱点だ。
娘の不登校が始まった。
どうやら、娘もスマホをとりあげられ、パソコンを取り上げられ…参ったようだった。正直、私はこれについて一つも口を出せない。どうしてかというと、家族との連絡用にとライン電話を契約したのだけれど、それをクラスメイトや学校の友達以外の見知らぬ人とも交流に使っていたからだ。それは危険なことであるし、よろしくないと何度も言ったけれども聞かなかった。仕方がないのでスマホを取り上げると、隠し場所を探し出して、自室にまた隠す。そして、私がなくして困っていると、自分は知らないと嘘をつく。
これに対して娘は非常に悪いと思うけれど、思うけれども、年頃の中学校の子供なんてそんなものだろうと、私は少し思っている部分がある。親に言えない(正直大したことではないのだけれど)ことなどごまんとある。それを締め付けたところで隠すばかりだ。そもそも、予測は出来たのだから、契約しなきゃよかったのである。(これについては、バレた時点で契約解除して、消去すればよかったのではと何度も思う)
で、困ったことに不登校で家にいたとしても、それを行うのであるから、私は娘をずっと見張っていないといけなかった。買い物にもほとんど行かず、私が少しでも昼寝をすれば、スマホやパソコンを使う。洗濯と食事の支度でぎりぎりだった。しかし、夫は「また、学校へ行かせてないのか」という。行かせてないのではない。行かないのだ。娘は腹痛だというので病院へ行き、血液検査までし、どこもおかしくないという検査結果を得ると、とにかく学校へ行くように、行けるようにと行動した。夫はというと私を責めるばかりで、何かしてもらった覚えはない。実はこの辺り、あまり記憶がない。何故かというと、必死だったからだ。もう、必死だった。
息子のゲームがしたいという泣きそうな声に耐え、娘を何とかしなければならないと思い。夫の世話をまるで幼稚園児並みに手間をかけねばならなかったからだ。
この頃、実母へは毎日電話をかけ、何が起こったか、どうなったか、どうしたか…を伝えていたように思う。メモをしてくれ、頼むから記録しておいてくれと言ったような気がする。自分は記憶が飛びそうだから、せめて、なにかどうにかなった時のための証拠を取っておこうとしたのだろうと、今になって思う。
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