第28話 店内探索2
できれば、米を食べたいよな。欲を言えば、ハンバーグも。
二週間前から、食事は主に非常食。
物流が止まっているだろう。現在。食事の選り好みは叶わず、調達も難しいのが現実である。
「もしかしたらよ。弁当が残ってるんじゃね?」
お菓子を詰め終え啓太は、防災袋を持ち言った。
「あんたは馬鹿!? 残っていても、腐ってるに決まってるでしょ!」
返すハルノの指摘は、当然のもの。
「ちょっとした冗談じゃん。でも、あれ。レンジで温めるご飯とかなら、食べられるんじゃね? 他にもインスタント食品とかなら、賞味期限も長いはずじゃん」
次いで啓太が出した案は、現実的なものに聞こえる。
「賞味期限は大丈夫だろうけど。今は電気が使えないからな。簡単には食べられねぇよ」
現在の札幌は、停電。そのためレンジは、使用不能。湯を沸かすにも、火が必要となる。
火を起こすには、道具が必要。となれば手間も、時間もかかるのだ。
「ならやっぱり、缶詰とかじゃん。もしくはお菓子で、我慢するしかないんじゃね?」
食料の調達を気にしつつも、啓太は冷蔵庫を開け始めた。
「そうだな」
四列目以降の陳列棚は、数列に渡り傾き倒れている。
四列目は、三列目に。五列目以降も。奥から手前に寄りかかるよう、絶妙なバランスを保っているのが現状だ。
食事がお菓子だけじゃあ、やっぱり物足りないよな。
「ボトボトボト」
奥へ進むか思案していると、ペットボトルが連続で落下した。
床に転がる、ペットボトル。異変を察知して、視線を上へ。すると冷蔵庫の奥からは、血に汚れし手が伸びていた。
「なんだよ。いきなり。ちょっと、ビビっちまったじゃん」
驚いた様子の啓太は後退し、陳列棚に背をぶつけている。
「普通の人間がする行動じゃないし。間違いなく、屍怪だろうな」
ペットボトルを押し出した犯人。それは屍の怪物と称される、意志なき屍怪の仕業だった。
自動で閉まろうとする、冷蔵庫の扉。屍怪は何度も繰り返し、押し返し続けている。
「屍怪がいるなら、これ以上の長居は無用だな。お菓子だけど。一応は食料も手に入ったし。これだけあれば、腹も膨れるだろ。飲み物を持って、早く外に出ようぜ」
ペットボトルを拾い、即時の撤退を決断。
「そうね。屍怪と顔を合わせるのも嫌だし」
屈んでお菓子を詰めるハルノも、外への撤退準備を始めた。
「まあ、お菓子だけど。これだけあれば十分じゃん」
陳列棚から背を離し、賛同する啓太。
すると、途端に。陳列棚はグラグラと、横に傾き始める。
「危ねぇ!! ハルノ!!」
異変に気づき、即座に手を引く。
「バタンッ! バタンッ! バタンッ!」
響く騒音と、揺れる振動。陳列棚はドミノ倒しのよう、全てを巻き込み倒れてしまった。
「大丈夫か?」
騒動が一通り収まったところで、怪我の有無など安否を問う。
「ありがとう。大丈夫」
手を離して答えるハルノは、幸い怪我なく無事であった。
「間一髪だったな」
陳列棚は窓際の一列目へ向かい、完全に倒れてしまった。
お菓子を詰め、気づいていなかったハルノ。巻き込まれれば、大事になっていただろう。
下敷きになっていたら、大変だったな。とりあえず、無事で良かったぜ。
「それより、あんたっ! もっと気をつけなさいよっ!」
憤りを露わに、ハルノは啓太を咎めた。
原因はおそらく、啓太がぶつかった衝撃。四列目以降の陳列棚は、寄りかかるよう倒れていた。一件が引き金となって、完全に倒れてしまったのだろう。
「わっ、悪い。二人とも大丈夫か?」
自身の行動が発端と悟っては、啓太も慌て心配をしている。
「ああ。大丈夫だ。問題ない。今のは故意にでもないし。気にするなよ」
今回の結果に至った要因には、屍怪の存在によるところが大きい。
冷蔵庫の奥から、屍怪の出現。読めるものではないし、驚くのも無理はない。そういう点では、不運としか言えないだろう。
「ああ。すまん」
俯いたまま啓太は、再びの謝罪。不運とも思える展開。
しかし啓太としては、自責する部分もある様子。肩を落としては、申し訳なさそうにしていた。
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