第14話 Dirty Marine Cops

上陸開始前の強襲揚陸艦 LHD-4 ボクサー ウェルドック内

俺はボビー・ニール軍曹だ。今俺は合衆国に殲滅戦を宣言して来やがったクレイジーな野郎共にお仕置きをするために今出撃を待っているぜ。車の中で男だらけは暑苦しい。おおっと、俺たちの班長はマム(mom)だったぜ。男とか言ったらボコられちまうぜハハハ。そろそろ班長の訓示が始まるようだ。

「クソ野郎共!遂に私たちの出番だ。死ぬ準備はできているかっぁ!?」今日も小隊長殿はキレキレだな

「イエスマムッ!」

「合衆国に喧嘩をふっかけてきたビッ○共にお仕置きだ。舐められた野郎はサメの餌だ!」

「イエスマム!」

「ボビー、海兵隊のモットーを言ってみろ!」俺かよ!!

「全員精強であります!」

「そうだ。だが私のチームは全員最強だっ!貴様らの中にヤワわおらんっ!」

「イエスマム!」

「この戦いでどこよりも働くのは私のチームだっ。あの砂浜のサノバビッ○共をいかして返すなっ」

「イエスマム!」

「ではクソ野郎共、出撃だっ!!」今回も熱い訓示だったぜ。愛棒のM16A5がずっしりと来るぜ。

波に揺れられて少しすればそこは地獄の三丁目だ。それにしても今日は海が騒がしい、バトルシップまで持ち出すなんて、ジェネラルもクレイジーだ。喧嘩を吹っかけたのが悪いが、これじゃぁ敵さんも可哀想だぜ。

「小隊!後3分でお掃除開始だっ!装備チェック!」

「イエスマム!」

「一分隊チェック完了!」

「二分隊いけますっ!」

「三分隊いつでも!」

「行けるようだな野郎共!行くぞ!」

「オォォォォォォ!」

おっと、バスが目的地に着いたようだ。

「第二小隊の皆さん、後部ランプが開きます。地獄の三丁目にようこそ。おきをつけて!ハハハ」運転手さん、ありがとよ。

「降車降車降車!GOGOGOGO!」血と硝煙の匂い、これが戦場の匂いだ。帰ってきたぜ。??ってあれ。血の匂いはするが....。なんだこれは、マジで地獄になってるじゃねぇか。なんだここは、見渡す限り、大穴と肉片しかねぇぞ。何も動いてるもんがない。ん?今踏んだのは何だ?火縄銃??連中火縄銃で俺たちに喧嘩売ったのか。正気の沙汰じゃねぇ。ファック、ったくどうすんだどよ小隊長どの、なんて言ったら殴られちまう。ここは丁寧に...

「小隊長殿っ、どうするのでありますか?」

「ちょっと待て、今通信が入った、ほう...その仕事ウチがやりましょう。」

仕事が入った様だな。

「野郎共!仕事が入った。A-10から報告があったそうだ。正面の丘の上に敵の幹部が数人いるらしい。私達は運が良いぞ、そいつらに一番近いのは私達の様だ。捕縛する。やるぞ諸君!目標正面の丘の上っ!小隊ぜ全速力で突っ走れ!警戒を怠るなよ!」

「イエスマム!」全く遮蔽物がない。危険だ。カバーしながら進まなければ。

「全分隊のブラボーチームはアルファチームが移動中周囲の警戒を!アルファ、ブラボー相互に援護しろ!」流石小隊長殿、わかっていらっしゃるか。ブラボーチームに命を預けて、ダッシュする。100mほど走ったところで小隊長殿が拳を上げ。停止 。今度はブラボーチームが駆け上がって来る。その間、俺達アルファチームは銃を構えて、周囲を警戒する。俺の相棒はM16だから良いけど、MINIMI(軽機関銃)持ちのやつは大変だ。流石漢の武器って呼ばれるだけあるぜ。

これと同じことを繰り返して数回。敵の指揮官連中が視界に入った。距離200m。何やら揉めているのか?スコープで覗いてみたら、どうだ。敵の指揮官がイカれちまったようだ。周りが必死で抑えている。こりゃシェルショックか?とにかく心がぶっ壊れたみたいだぜ。周りに護衛が30人、全員マスケット銃装備だな。横一列に並んで待ち構えている。当然気付かれてる様だな。どうする小隊長。

「小隊全員構え!指揮官の周りにいるお粗末な護衛共を排除する!捕獲目標に当てたやつはビーチに埋めて帰るからな」全員が膝撃ちの姿勢に入る。目標は斜め上、向こうの方が有利だがそこはテクノロジーの差で問題ない。

「単射っ撃てっ!」

パンッ 目標が重なっていた様だな。まだ立ってる奴がいる。

「撃てっ!」

パンッ

「護衛を排除!目標は目の前だっ。突撃!走れ走れ走れっ」

ピッピッピーーーーーーーー 突撃の笛がなった。バステリアのチキン共が逃げ出したが、目標の幹部5人とも遅い。俺達から逃げようたって100万年早ぇ。

「ウオォォォォォォォ」小隊全員が掛け声と共に、一気に距離を詰める。必死で逃げるが1人ずつ捕まる。俺に捕まったのは、豪華な装飾の服に身を包んだおデブちゃんだ。

「オラァ、動くな!跪いて後ろむけ!」パニックになってやがる。当たり前か。だが油断はできねぇ。アフガンでこの瞬間に自爆した奴もいたらしい。

「頭の上に手をのせろ!動いたらテメェの頭が吹っ飛ぶぞ」よし、後はこいつが自爆でもしなけりゃ大丈夫だ。

「ボディチェック!コニー、こいつの服をまさぐれ!」

「イエッサー」

コニー上等兵が、こいつが危険物を隠し持ってないかをチェックする。少しでも変な動きをしたら脳天にいつでも弾をぶち込んでやる。

「軍曹殿、チェック完了です。危険物は、この短剣だけでした」コニーのての随分と豪華な装飾が施された短剣だ。

「汚れた手でそれに触るなっ!」俯いていたデブがいきなり喋り出した。やっと正気に戻ったか。

「あぁ?動くなっ。撃つぞ!貴様は捕虜だ。変な動きをしなけりゃ命は保証してやる」

「捕虜だと!?ふざけるな。この私を誰だと思ってる?バステリア帝国貴族ブリタス家の家督を継ぐ者だ。貴様らとは違うんだよ。ムーの犬共め」ったく、捕まっておきながら生意気な奴だ。

「はいはい分かりました。貴族どの、ご演説の続きは沖の船の上で何時間でもどうぞ。もうすぐお迎えが来ますからっ!」皮肉っぽく言ってやったが気付いたか?それにしてもなんで敗将の癖してこんなに元気なんだ?この丘から見りゃ分かるが、自分の部下殆ど死んでるってのによ。この砂浜はマジで生き地獄だよ。見渡す限りこいつの部下の死体が累累だ。他の連中が浜辺をクリアリングしているが捕虜も殆どいねぇ様だ。そもそも殆ど人の形をしたものがねぇ。

おっと、小隊長殿達も捕虜を連れて戻ってきた。合わせて5人、どうやら全員とっ捕まえたみたいだな。

「ボビー、シルバースターものだ!貴様らが捕まえた奴がどうやら敵の指揮官らしいぞ。こいつらが吐いた」指差した先には、他の幹部。

「一体何をしたんですかい?」

「優しく聞いてやったよ。ついでにどうやら私達の事を他の国と間違えてたみたいだ。私達は合衆国海兵隊って言ったら、蛮族とか言いやがった。ジュネーブ条約がなきゃ今頃こいつはタマ無しになってるよ。条約に感謝しなっ」絶対に優しくは聞いてないな。確かにこのデブもムーの犬だとか抜かしてた。ムーってなんだ?あれか?オカルト好きが言ってる消えた大陸ってやつか?

「ボビー、母艦から迎えが来る。こいつらの移送準備をしろ」

「イエスマム!」

お迎えは....これまたでかいのが来たな。オスプレイ2機か、行きとは違って直ぐに着くな。

「コールサイン スクリュー1、2へ。こちらC中隊第二小隊。LZイエロー、地点は丘の上。赤の発煙筒を焚いている。オーバー」

「こちらスクリュー1、貴隊の位置は確認した。直ちに着陸する。LZ周辺の警戒の継続をリクエストする」

「了解した。アウト」大きな機体が次第に近づいて来る。 この瞬間のヘリは格好の餌食だ。今が一番危ない。まぁ敵がRPGなんて持ってるようには思えんがな。

「タッチダウン!」オスプレイ2機が着陸して、ケツを開けた。

「分乗する一分隊、1機目に捕虜を詰め込んでおまえ達が乗れ」

「ラジャー!」

この捕虜共はちっとばかり態度がでかすぎる。

「オラァ、とっとと大人しく乗りやがれ!」そう言って乗るなら苦労しないが。

「こんなに蛮族の乗り物なんざ乗りたくないわい」

「そうだ、こんな飾り気一つない箱に詰められてたまるか」

ったく、こいつらは...



5分かかったやっと乗せれたぜ。最後は抱えて乗ったがな。そういやこいつらに聞きたい事があったな。

「おい、そこのデブ!貴様らが言っていたムーってどんな国なんだ?」

「そんなことも知らんのか?無知だな。ムー共和国は我が栄えあるバステリア帝国と長年争っている国だ。これぐらい東洋世界の文明国と言わずとも野蛮人共のガキでも知ってるわ。島国らしくて数が少ない。数で勝るバステリア帝国軍の前では敵ではない。所詮、小手先の科学技術しか持たん猿共だ!」

「ムーについてよりお前達のバステリア至上主義の方が分かったよ。まぁ、俺達から言わせれば、国自体が骨董品の遅れすぎて一周してかっこいいぐらいだけどなハハハ」全員が言いたいことだったみたいだな。笑いたくてしょうがないみたいだ。

「な、なんだと。貴様らの国には竜騎兵も戦列艦も無いと言うじゃないか。どうせ、あの戦艦もこの飛行機械もどこかの列強にもらったんだろう。野蛮人が文明人の褌で立派に相撲を取ろうとするな」

これがこの国の貴族かよ。プライドばっかり高すぎだろ。さっきの戦闘を見ても分かんねぇのかよ。どう考えたって、技術で遅れてるのはそっちだろうに。

「おい、デブ。お前らの国はお前のような頭が足りない奴を指揮官にする程人手不足なのかい。ハハハ」

おっと、おデブの顔に青筋がたったぞ。

「ボビー!その辺にしておけ。その頭が足りんやつを相手にするな。それより他の幹部共を見ろよ、そいつらは状況を理解してるようだぞ」確かに小隊長が言う通りだ。4人のうち2人は青ざめた顔をして下を向いて黙っている。

「そろそろ着くぞ、降りる準備をしろ」


そう、他の4人はしっかりと状況を理解していた。

参謀長のクエイト・スネル この男は実は日本とアメリカの外交官達が皇帝に謁見した場にいたのだ。

くそ、あの時はこんな事になるなんて思っていなかった。東の果ての蛮族風情が。なんて思っていたが、対等な関係、相互不可侵、これは我々にとって美味い話だった。上陸戦を見る限り、バステリアは勝つことはないだろう。この飛行機械だってそうだ。魔法文明国家でさえこんなものを前線にいくつもいくつも持ち出せるほど持っていない。今窓から見える戦船だってそうだ。こんな巨大な船はエーリッヒ公国でさえ作れないし無論バステリア帝国には無い。

「おい、おっさん着いたぜ。とっとと降りてくれ」

「そう急かすな、大人しく降りるから」

飛行機械から降りるとどうだ、なんだこの真っ平らで巨大な船は。そもそも材質が分からん。船体は鋼鉄製のようだが甲板は何でできているんだ?明らかに未知の技術だ。見張台に何か書いてあるぞ。『LHD-4 USS BOXER 』この船の名はボクサーと言うのか。

「こんなボロ船なんぞ本国の艦隊の前では海の藻屑となるだろう!」またブリタス家の長男か....この後に及んで貴族の坊ちゃんはそんな事を言うのか。叩き上げと、貴族出ではこうも現実の見え方が違うものだろうか...。

船の中へと連れられたが、中が明るい。天井に魔石か何かを埋め込んであるのか?そして清潔だ。船旅と言えば、最悪流行り病が蔓延する程不潔なのが常識だが。もはやここまで違うと勝てるわけがない。

「君、この中へ入りなさい」なんだこの小部屋は?入ると真ん中に机があり、それを挟んで椅子が二つあって、そのうちドアから遠いい方に座らされた。

少しすると陸にいたのとは違う青いマダラ模様の服を着た男が入って来た。

「初めまして、私は貴方を担当する尋問官です。よろしくお願いします。」随分と捕虜に対して丁寧な対応だ。

「まず、貴方の所属と階級を伺いたい。お答え頂けるかな?」

「私はバステリア帝国 陸軍 軍務省付き参謀です。この度の戦いでは先遣隊の参謀長を仰せつかっていました」

「成る程、貴方は中央から派遣されて来たと言う事ですね。ではいくつかの質問に答えていただきます」軍機についても聞かれるだろうな。どのぐらい話したらいいものか。

「あの、私からも聞いて良いですか?」

「基本的に貴方からの質問には答えない事になっていますが、良いでしょう。答えれる範囲で答えましょう」

「この度の上陸戦では貴方方の被害はどれくらい出ましたか?」

「その事ですか...成る程」どうやら彼は真意を理解した様だ。

「痛いのは財布位のもんで被害は未だ1人も出ていませんね。ですが、そちらに出向いた外交官のうち数名が心に傷を負いました。原因は言わずともお分かりでしょう」 被害無し...此方は1000万を数分のうちに失ったと言うのに。これは遠征軍は海上で既に叩かれているだろう。バステリアは完膚なきまで叩かれる、もう何を隠してもしょうがない。

「分かりました、知っていることは全て話しましょう」尋問官の口角が上がった。

「ご理解頂き何よりです。では、貴国の総兵力と人口を教えて頂きましょう」

「人口は約20億...」尋問官が吹いた。どうしたのだろう。

「20億!?それは多いいですな」

「あぁ、しかし市民権を持つものは8億人他の12億は奴隷です」

「奴隷?貴方がの国には奴隷制度があるのですか。そいえば確か、一週間程前でしたっけ。数十万単位で虜囚を解放する作戦を陸軍が実施しましたね。しかし合計で12億もいるとは」

「そして、総兵力は如何程で?」

「大体1億程です。しかし北の守りについた1000万は既に貴方方によって消されましたがね」

「1億....バステリアが人海戦術頼りなのは予想がついていましたが、かなり多良いんですね。それで、北の1000万ね...、南の方の部隊も同規模の部隊だったんですか?」

何?『だった』だと?

「1000万ですが、まさか南の軍団も我が軍と同じ様に?」

「えぇ、同時刻に作戦が開始され大方制圧は終わっているらしいと、しかし南の方は捕虜が数万人単位でいるらしいですよ。そっちは別の国が担当してるんで戦い方も異なります」

「南は捕虜がいるのか、よかった」しかしその瞬間尋問官が哀れむ様な目で遠くを見つめて言った。

「バステリア帝国か属領にはシベリア....いや、湯が一瞬で凍る様な地域はありますか?」

言っていることの真意が読めない

「いえ、バステリア帝国本土とその周辺は農業に向いている温暖な気候ですよ」

「そうですか、それはお気の毒に。北側の住民は運が良いですね。そして貴方も」

「言っていることはがよく分からないのですが」

「じきに分かりますよ。まぁ、取り敢えず今日はこのくらいにしましょう。そちらの将軍と違って貴方は協力的ですし特に抵抗の意思もない様なので、個室を一つ自由にお使いください。何か用がある様でしたら、部屋の外に見張りがいるので声をかけて下さい。食事も同様に見張りに言って下さい。あぁ、それと艦内は広いですがくれぐれも逃げようなんて考えないで下さね。それではまた明日」敵に捕まった時は拷問を覚悟していたが、客並みとはいかないが十分丁寧な扱いだった。バステリア軍だったら絶対拷問にかけていただろう、本当の野蛮人は我々なのかも知れないな。


一方バステリア帝国の南側では、ロシア軍と中国軍が上陸地点を確保し、続々と兵員と車両を揚陸しているのだった。





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