第2話 防衛戦準備

2020年5月5日 ニューヨーク 国連本部


シャイローが持ち帰った降伏勧告状は世界に波紋を呼んだ。転移した先に世界がとてつもなく物騒な世界だったのだ。


「この降伏勧告状は、我々旧地球圏に対する宣戦布告です。これに対し戦い自らの自由を守るべきと考えます!」


アメリカ国連大使は、得た情報を開示し史上初の国連軍の派兵の必要性を説いているところだ。


「実際に赴いた外交官達の証言によると第1波でさえ50万の軍勢が攻めてくるというとです。最悪の事態を想定し、太平洋への国連軍の派兵、編成を要請いたします。我々アメリカは現在、最終目標をバステリア帝国攻略とし、軍事行動を検討しております。」


いつもはどこかが拒否権を使い纏まらない安全保障理事会も今回は満場一致で派兵が決定した。しかし、第1波防衛には編成が間に合わないので帝国攻略からの編成である。


その頃外務省では、菅野があった事を全て話していた。その内容に同僚達は憤りを覚えた。国交開設に向かったはずが、隷属を求められ拒むと殺されそうになるという話だ。そして、バステリア帝国は50万の派兵の準備をしているという事も。


そしてさらにその頃ペンタゴン


シャイローが記録した映像やデーターを分析していた。

あり得ない事だらけに分析官達は唖然としていた。

文明レベルは中世、陸戦の主戦力は、長槍兵とマスケット銃手であり、補助戦力で騎兵など、そして、航空戦力は2タイプの竜騎兵、現代兵器で言うところの戦闘機と攻撃機の様な2タイプだ。

海上戦力は、戦列艦である。しかし、技術レベルは問題ではない寧ろ数である、第1波で50万とはとんでもない戦力だ。

数の暴力である。

そして、衛星写真でも超大規模な戦力の集結を確認している。

1ヶ月程で日本の領海に到達することが予想されている。50万と言うのもあながち嘘では無いようだと言うことも確認された。

あまりにも敵の数が多いいので、戦艦ミズーリの様な前時代の戦闘艦を復活させた方がいと言う意見も出てきた程だ。

詳細は実際に赴かないと分からないので、タイフーン級とブラックバードを派遣し調査を続行するととなった。。


50万人の兵力を輸送するとなると相当数の輸送船と護衛が必要になるだろう。

何隻で来るかなんて全く予想さえ出来ない。これらを効率的に"処理"するとなるとこちらも相当数の船が必要だ。

日米の艦隊も大規模になるだろう。

以上の情報を以って司令部は編成を決定した。

編成は以下だ。

(編成の部分はあまり話と関係ないので読み飛ばしてもらっても問題ありません)

海上自衛隊

第1護衛艦隊

DDH-183 いずも

DDG-171 はたかぜ

DD-101 むらさめ

DD-107 いかづち

第5護衛隊

DDG-173 こんごう

DD-108 あけぼの

DD-109 ありあけ

DD-115 あきづき


米海軍

第五空母打撃群

USS Ronald Reagan(CVN-76)


USS Antietam CG-54

USS Chancellorsville CG-62

USS Shiloh CG-67


第15駆逐艦隊


USS Curtis Wilbur, DDG-54

USS John S. McCain, DDG-56

USS Fitzgerald, DDG-62

USS Stethem, DDG-63

USS Benfold, DDG-65

USS McCampbell, DDG-85

USS Mustin, DDG-89


第3艦隊

ニミッツ型原子力空母

USS Nimitz (CVN 68)

USS Carl Vinson (CVN 70)

USS Abraham Lincoln (CVN 72)

USS John C. Stennis (CVN 74)

USS Ronald Reagan (CVN 76)


揚陸艦

USS Boxer (LHD 4)

USS Bonhomme Richard (LHD 6)

USS Tarawa (LHA 1)

USS Peleliu (LHA 5)



アーレイバーク級駆逐艦

USS John Paul Jones (DDG 53)

USS Russell (DDG 59)

USS Paul Hamilton (DDG-64)

USS Benfold (DDG 65)

USS Milius (DDG 69)

USS Hopper (DDG 70)

USS Decatur (DDG 73)

USS Higgins (DDG 76)

USS O'Kane (DDG 77)

USS Howard (DDG 83)

USS McCampbell (DDG 85)

USS Shoup (DDG 86)

USS Preble (DDG 88)

USS Chafee (DDG 90)

USS Pinckney (DDG 91)

USS Momsen (DDG 92),

USS Chung-Hoon (DDG 93)

USS Halsey (DDG 97),


タイコデロンガ級巡洋艦

USS Bunker Hill (CG 52)

USS Mobile Bay (CG 53)

USS Antietam (CG 54)

USS Lake Champlain (CG 57)

USS Princeton (CG 59)

USS Chancellorsville (CG 62)

USS Chosin (CG 65)

USS Lake Erie (CG 70)

USS Port Royal (CG 73)

旗艦 原子力空母 ニミッツ

の計55隻である。


そして、さらに補助艦艇多数

史上まれに無い大艦隊であり地球上の国なら中規模の国家までなら焼け野原に変えてしまえるレベルだ、しかし敵の数から考えると不足なぐらいだ。強襲揚陸艦が含まれているのは、そのまま本国に攻め込むと言うオプションが含まれているがゆえである。


日本国内でも、この降伏勧告と外交官の身の上に起きたことは大々的に報道され、恐ろしい世界に転送された事を理解した。この事実は世論を大きく動かし、憲法改正の声まで上がった。普段は武力や戦争といったものを禁忌にとらえているマスメディアもこれはビッグニュースだとばかりに煽り、老若男女問わず開戦支持の方向に傾き、特例法の制定もスムーズに進んだ。


5月12日、日本も防衛出動を発動し、米艦隊とのランデブーポイントに向かって、横須賀と佐世保から、今までではほとんどなかった数千人に及ぶ声援に見送られながら出港した。永遠の平和を信じて疑わない日本国民もさすがにバステリア帝国の横暴な要求に怒りを覚え、不安を感じたのだろう。


同日、敵艦隊を追跡している潜水艦から敵艦隊出港の報が入った。敵艦総数5000以上と言う驚きの数に世界は揺れた、いくら現代技術があろうと55隻で5000隻以上の敵を止めることが可能なのだろうかと誰も不安に感じた。


DDG-173 こんごう 艦橋

「艦長、あと5時間程でランデブーポイントに到着します。」


「そうか、わかった。副長、君は今回の戦いをどう思うかね?君の意見を聞かせてくれ。」


「はっ!正直に申し上げますと一つ疑問に感じているところがあります。

敵は兵力50万と言う話ですが、それを中世レベルの技術でどの様に統制を取るのかと言う点です。今回は陸戦ではなく海戦です。

そうなれば密な連携が必要となるでしょう。しかしも相手は大陸全てを支配してると言うでは無いですか。地球上のどの王朝も支配範囲が広大になると統制しきれなくなり、崩壊しています。しかし敵はそれを成しています。自分は、敵がなんらかの特殊な通信手段など有している可能性があるのでは無いかと疑問に思います。いかがでしょうか。」


「確かにそうだな、妙だな。リアルタイムで交信をしてる可能性が高い。これは上に上げておこう。」


「しかし、今回の作戦なら寧ろそちらの方が好都合では無いでしょうか?」


今回の作戦というのは大まかにはまず、空母のF18で敵護衛艦を殲滅し、敵輸送船団にはご帰宅願うという作戦だ。しかし、今回は全く先が見えないのでどうなるか分からない。間違っても敵艦全艦撃沈だけは避けなければならない。全艦沈めると捕虜が何万人になるか予想さえ出来ないからである。捕虜だけで、地方都市が一つできてしまう。


「その通りだ。護衛艦隊全滅を知らせて、撤退許可を取ってご退場願いたいものだ。」


ランデブーポイント 坊の岬沖100キロ

そこには、米海軍6個空母打撃群が集結していた。ドッグ入りしていたものも稼働できるものは全て引きずり出して来たのだろう。米軍が保有する原子力空母の半数である。各艦90機搭載し、合計で540機となる。日本の作戦機数が200機であることを考えるとこれがどれ程のものなのか分かるだろう。地球上の国家ならこれがどれ程の破壊力を持っているのかは知っている。ましてや喧嘩を売ろうなどと思わない。

それぞれの空母打撃群は輪形陣を組み中心に空母と強襲揚陸艦を置き6つの輪を作り航行している。



時を戻し、外交官達が去った直後のバステリア帝国

外交官達を逃してしまったことを知った皇帝は激昂した。


「衛兵は何をやっておったぁ‼︎夜番と警備隊長をここにつれてまいれぇっ。」


怒った皇帝の前に出た二人は青ざめていた。城内の警備の任を預かっているだけに、この流れを何度も見たことがあるのだ。


「この役立たずが、貴様らは帝国の恥だ。みすみす蛮族どもに逃げられるとは何事か?」


「申し訳ありません、敵があまりに素早く、集結した時には既にもののからでした。」


「なんと、貴様らは蛮族を見ることすらできなかったということか。その様な無能を入れる場所は帝国には無い。だが余は慈悲深い。死を持って償えば、その罪許してやろう。」


「それだけはどうかお許しを!」


聞き入れられないのも分かっているが言わずにはいられなかった。


「衛兵、余の剣を持てい」


剣を取るとその場で2人の首を一太刀で切り落とした。その場には、血が吹き出し、頭を失った胴体が2つ出来上がった。この国では、人の命とは、皇帝の気分次第なのだ。


こんな状況を側近の1人として見ているものがいた。バステリア帝国軍参謀付情報分析官エル・スペンサーである。彼は、貴族出身であり、今は見習いとしてこの地位についている。まだまだ若い彼がこの様な立場にいるのはこの先指揮官として軍を率いいくことが約束されているからだ。

(あの使者達の服装は見た事が無いが、どんな国なんだろうか。そういえば、確か技術立国のムー共和国の使者に似てるな。あそこの軍隊は数こそ我々の方が多いが、装備が強かったな。)

彼らの文化に興味が湧いて来たのだった。


「エル、どうした?そろそろ軍務省に戻るぞ」


彼はエルの上官であり、参謀長のヨハン・グラムスである。ちょうどエルの父親くらいの歳だ。


「いえ、少し考え事をしておりました。派兵が決まった。ニホンとアメリカは彼らによるとここから東に9000キロほどという事ですが、長旅になりますね。」


「そうだな、しかし我が海軍の艦隊にとっては大した障害にはなるまい。なんせ、この辺りでは最大級の船ばかりだからな。しかし、ムー共和国の内燃機関付きの戦艦が羨ましい。あれは夢の様な技術だ。」


「確かに羨ましいですね。そういえば、今回の戦争債券の売れ行きはどうです、いつも通りもう売り切れましたかね?」


「あぁ、多分売り切れただろう。絶対に儲かる話だからな。喉から手が出るほど欲しいだろう。今回も我々軍は、敵国を占領しあとは、政治屋に渡すだけだ。」


「50万の軍なんて見たら、降伏してしまうかもしれませんね。今回も戦わなくていいかもですね。」


そんなことを話しながら、皇城のすぐ近くにある軍務省についた。煉瓦造りの3階建ての建物だ。そこでは、陸海軍の人事から作戦立案まで全てを司る。


「そうだエル、今回の出兵に参謀付き見習いとして参加して見てはどうかね?東の蛮族相手なら君の身に危険が及ぶことはないだろうしな。」


「はっ、ぜひ参加させてください。是非、我が海軍の活躍をこの目に焼き付けたく思います。」


そんなこんなで、エルは今回の戦争に参加することになった。自分の属する艦隊が、一方的に敵を撃破する様子が、頭に浮かびとても興奮していた。


*****************************


2020 5月12日 早朝 バステリア王国帝都バルカザロス沖1000キロ

哨戒中のE-2ホークアイから日米連合艦隊旗艦ニミッツに敵発見の報が入って来た。


「こちら、シーカーキング、艦隊400キロ前方に敵大規模艦隊確認。間も無く、そちらの電探索敵範囲に入ると思われます。」


護衛艦こんごう CIC内


「対水上レーダーに反応!IFF応答ありません。不明艦≪ボギー≫は敵の大規模艦隊と思われます。多すぎて探知可能数の上限を大幅に超えてます。」


副長は電探員から驚嘆が混じったの報告を受けスクリーンに目をやると、400キロ先の海域に、数え切れないほどの光点が輝いていた。

旗艦ニミッツより、対水上戦闘用意の指示がが下り。戦闘開始まではあとわずかだ。


「艦長!戦闘用意が下命されました。」


静かにマイクを持ち上げ、戦闘開始を全艦に伝えた。


「総員対水上戦闘よーい!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る