第二章第19話 フラウ召喚
2021/04/01 ステータス表記内の冒険者ランクの誤りを修正しました
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「フラウ。ごめん……」
俺は敗北者だ。これほど健気に応援してくれたフラウの期待に応えられなかった。
俺は……引き
俯く俺をフラウは笑顔で励ましてくれる。
『いいよっ。気にしないで。ディーノがこうやってあたしのために頑張ってくれただけで嬉しいの』
「フラウ……」
『それに。あたしを召喚できるようになってくれたでしょ? だからね。あたし、ディーノと一緒に冒険できるだけで嬉しいの。ね? これからは一緒に冒険しようねっ』
そうか。フラウはこんな……引き弱な俺でもっ!
「……ありがとう」
少しだが、元気が出てきた。もう何度目か分からないが、失敗してもこうして前に進めるのはフラウのおかげだ。
『うんっ。落ち込んでいるディーノよりも、楽しく冒険して生き生きとガチャを引いているディーノのほうがかっこいいよっ?」
「ああ。そうだな。よし。それじゃあ早速フラウを召喚しようか」
『ちょっと待って!』
「え?」
せっかく手に入れたスキルを試そうとしたが、フラウに止められてしまった。
『その前にうんちを片付けないと』
「あ……」
言われて初めて馬の糞が散らかっていることに気付いた。そして一度気にし始めると悪臭が鼻について仕方がない。
俺は頬を掻くとそそくさと後片付けをするのだった。
◆◇◆
「よし、召喚!」
覚えたての召喚術でフラウを召喚すると、光と共に目の前にフラウが現れた。
「はーいっ! フラウだよっ!」
フラウが元気に俺の前に浮かんでいる。
「なんか、いつも通りだな」
「そりゃあ、ディーノは元からあたしが見えるし触れるからねっ」
「他の人も見れるようになったのか?」
「そうだよっ。これで、クッキーの人にもお礼を言えるんだっ」
「そうか。それは良かったな。じゃあ、明日またギルドに……あれ?」
MP を全て使い切ったのを感じる。
『あ、戻っちゃった』
フラウが残念そうな表情をしている。
「なあ、フラウ。召喚術ってもしかして、召喚している間ずっと MP を使うんじゃ?」
『そうみたいだねっ。あたしも知らなかったー』
召喚していられた時間はおよそ一分くらいだろうか?
俺はステータスを開いて確認してみる。
────
名前:ディーノ
種族:人族
性別:男性
職業:冒険者(D)
年齢:14
ギフト:ガチャ
ステータス:
HP:3/3
MP:0/2
スキル:
剣術:2
槍術:2
体術:1
弓術:1
杖術:1
水属性魔法:2
火属性魔法:1
風属性魔法:1
召喚術(フラウ):1
────
「ああ、やっぱりな。MP が 0 になってる……ん?」
俺は自分のステータスを二度見した。
────
────
どうやら見間違いではなかったようだ。
「なあ。MGC が前に見たときから 10 も増えているんだが……」
『え? だって、【MGC強化(大)】を引いたでしょ?』
「あれひとつで 10 も上がるのか」
さすがは☆5だ。これほど上がるものがピックアップされているというのはものすごくお得な気がする。
ん? そういえばもう一つピックアップがあったような?
ガチャ画面を開いて確認してみる。
────
ピックアップあり! 召喚士ガチャシリーズ第一弾「召喚士入門ガチャ」!
(有効期限 60 日)
ピックアップ:
【召喚術(フラウ)】【精霊花の蜜】【MP強化(大)】【MGC強化(大)】
────
なるほど。そういうことか。
つまり、召喚をできるようになっても MP がなければ使えないからここでたくさんガチャを引いて MP をあげておけってことか。
そうすることで後々実装される、あのお知らせ動画で見た美少女たちを召喚して戦ってもらえるようになるということに違いない。
そのことを踏まえると、この MGC も召喚に関係ありそうだ。
「なんて良心的なんだ!」
前から思ってはいたのだが、もしかしてこのガチャの運営はもしかして神なのではないだろうか?
これほど親切なガチャが未だかつてあっただろうか? いやない!
「フラウ。俺、このガチャを引くよ。もう、引けるだけ引く。【精霊花の蜜】もあるし、スキルレベルも上げる。そんでステータスもガンガン強化する」
『え? あ、う、うん。でも、無理して引きすぎるのはダメだからね?』
「ああ。ありがとう。フラウ、見ていてくれよ!」
『うんっ』
◆◇◆
一夜明け、俺は昨日のガチャで出た不用品を持ってギルドへとやってきた。
「おはようございます。ディーノさん」
「おはようございます。セリアさん。今日はガチャで出た不用品を買い取ってもらいに来ました」
「まぁ。また引いたんですね? 空き巣に入られて大変だったでしょうに、きちんと節約してくださいよ?」
「分かってますよ。でも、おかげで前に話してた妖精を召喚できるようになったんです。今召喚しても大丈夫ですか?」
「召喚? いつも傍にいるのではなかったのですか?」
怪訝そうな顔をしながらそう聞かれてしまった。
でも、妖精がいるという話は信じて貰えていないだろうから仕方がないか。
「そうなんですけど、召喚すると他の人にも見えるようになるそうです」
「はあ。そういうことでしたら。危険がないのでしたら召喚してくださって構いませんよ」
「わかりました。では、召喚!」
淡い光と共にフラウが俺とセリアさんのちょうど間に現れた。セリアさんは驚き目を見開いている。美人はこれでも絵になるのだからすごいものだ。
と、そんなどうでもいいことを考えていると、フラウが笑顔でセリアさんに挨拶をした。
「こんにちはっ! あたしはフラウだよっ」
するとセリアさんの顔にぱぁっと笑顔の花が咲いた。
「まぁっ。可愛い! こんにちは。私はセリアです。よろしくね。フラウちゃん」
「うんっ! よろしく! セリアっ!」
セリアさんがあっという間にデレデレになった。やはり妖精であるフラウの可愛らしさは万人に共通のようだ。
「あのねっ。セリア」
「なあに? フラウちゃん」
「いつも、ディーノがお世話になってますっ! ありがとーございますっ。それとねっ。クッキー、ありがとーございましたっ! とっても美味しかったですっ!」
「まぁっ! まぁっ! どういたしまして。そんなに美味しかったならまたクッキー、焼いてあげるわね」
「ほんとっ? ありがとうっ!」
「それから、フラウちゃん。ディーノさんをお願いね。ディーノさんはちょっと危なっかしいところがあるから」
「うんっ! 任せてっ!」
フラウはそう言ってドンと胸を張る。
どうやらフラウはあっという間にセリアさんのハートを鷲掴みにしてしまったらしい。セリアさんが、それはもう見たこともないような柔らかい表情を浮かべている。
「あ、あれ? フラウちゃん?」
しかし突然セリアさんはフラウを見失い、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
『あー、MP 切れだねっ』
おっと。もう、か。やはり早く MP を強化しなければ。
「すみません。俺の MP が無くなって召喚が終わってしまいました。次までにはもう少し MP を増やしておきます」
あと二百連を引くお金は入ってくるはずだ。そうすれば一つくらいは引けることだろう。
「そうでしたか。でもディーノさん。あんなに可愛らしくてしっかり者のフラウちゃんがいるんですから、あのお金がかかるスキルに頼らないできちんと修行を頑張ってくださいね」
「え? あ、はい。まあ、修行も頑張りますよ」
「修行も、ではなく修行を第一に頑張ってください」
「わ、分かってますよ。メラニアさんに習った瞑想、ちゃんと毎日やってますから」
「……なら良いのですが」
セリアさんは俺のことをジト目で見てきた。
「だ、大丈夫です。ちゃんと、生活費と貯金を除いたお金でやってますから」
「……わかりました。それで、買い取りでしたね」
「はい」
俺は売りに出すものを渡し、しばらく待っているとセリアさんがトレイをもってやってきた。
「今回の査定額は 1,650 マレとなります」
う。相変わらず安い。
ただ、不用品がお金になったと考えれば悪くはないかもしれない。
「ありがとうございます」
俺はそう思い直し、当面の生活資金となるお金を受け取るのだった。
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