第51話 究極のカレー

2021/01/28 不合理な部分を修正するためガチャの有効期限を二日間へと変更致しました。

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 俺たちはガーゴイルの守っていた扉を開け先へと進んだ。扉の向こうには階段があり、それを降りた第三階層は第二階層のような仕掛けはなく、トーニャちゃんに言わせると普通の迷宮と同じような状態らしい。


 そんな第三階層を俺たちはゴブリンを倒して魔石を回収しつつ帰り道の目印をつけながら攻略していく。先頭はトーニャちゃんとカリストさんで、その後ろにメラニアさんと俺が位置取り、後ろの守りをルイシーナさんとリカルドさんが担ってくれている。


 そして程なくして俺たちは第四階層へと降りる階段を発見した。


「順調ねン。ここで一旦休憩よン」


 リーダーであるトーニャちゃんが休憩の指示を出した。そんなトーニャちゃんにカリストさんが話しかけた。


「アントニオさん、さすがですね」

「あら、何がン?」

「マッピングです」

「ああ、慣れればできるようになるわよン」

「いえ、僕にはいくら頑張っても無理でした」

「あら、そう?」


 ん? マッピング? 地図を書いている気配は無かったような?


「ちゃんと覚えようと思っていれば覚えられるものなのよン」

「それが難しいんですよ。多少なら何とかなるんですけど、こうも似たような場所が続くと……」

「あらン? きっと移動した方向や距離がちゃんと分かっていないのかもしれないわねン」


 なんと、トーニャちゃんは脳内マッピングをしていたらしい。


「そんなことより、ちゃんと食べておくのよン」

「はい」


 そう言ってカリストさんは腰を下ろすと堅パンを取り出して口の中でふやかしながら少しずつかじっていく。


 俺もそれに倣って堅パンを取り出した。すると突然フラウが目の前にやってきた。


『ディーノ! 新ガチャが実装されたよっ!』

「え? このタイミングで!?」


 俺は慌ててガチャのスクリーンを開く。


 するとそこには見慣れた「冒険者ガチャ」と「断魔装備ガチャ」の他に妙なものが並んでいた。


「んんん?」


 俺は訝しみながらもタップしてガチャの内容を表示する。


────

絶品! 二日間限定「究極のカレーガチャ」開催中!


☆3提供内容:

【絶品ポークカレー】【コク旨ビーフカレー】【濃厚バターチキンカレー】【本格スパイシーマトンカレー】【旨辛エビトマトカレー】【とろとろ牛すじ煮込みカレー】【ヘルシー野菜カレー】【黒辛イカスミシーフードカレー】


[ガチャを引く][10連ガチャを引く]


保有チケット:0 枚[チケットを購入する]


・提供割合

・提供元:アコギカンパニー

────

注)提供割合と提供元は非常に小さな文字で書かれている


「カレー?」

『えへへ。凄いでしょ? あたし、頑張ったんだよっ!』

「お、おお! すごい! すごいけど……」


 嫌な予感がした俺はチケット購入画面を開いてみる。


────

〇チケット購入


・究極のカレーガチャチケット × 1 枚:10 マレ [購入する]

・究極のガチャチケット × 10 枚: 100 マレ [購入する]


保有チケット:

 ・究極のカレーガチャ:0 枚

────


「あれ? リーズナブル?」

『でしょー? 頑張ったでしょ? ね? ね?』

「ああ、すごいな。ありがとう、フラウ」

「あの、ディーノ様? 一人で誰と話しているんですの?」


 つい普通の声でフラウと喋ってしまったせいでメラニアさんに不審な目で見られてしまった。


「ああ、すみません。俺のギフトで食べ物が買えるようになったみたいで、そのギフトの妖精と喋っていたんです」

「え? え?」


 メラニアさんが困惑した表情を浮かべている。


「あらン? ディーノちゃんのそのギフト、便利ねぇ。何が買えるようになったのン?」

「カレーなんですけど……」

「カレー? カレーって何かしらン?」


 そうトーニャちゃんに聞かれて気が付いた。よく考えればカレーという食べ物を俺はこちらの世界ではまだ見たことがない。


「カレーというのはですね。スパイスを使って煮込んだシチューのような物で、パンやライスと一緒に食べるんです」

「あら、そうなのン? それでいくらかかるのかしらン? また一回 300 マレとかかしら?」

「いえ、そうではなく一回 10 マレらしいです。ただ、割引は無いみたいですけど」

「んー、スパイス煮込みシチューってどんな味なのか想像もつかないけれど、スパイスを使っているならその値段というのも納得できるわねン」


 トーニャちゃんはそう言って俺に 10 マレを手渡してきた。


「それでちょっと買ってみてちょうだい」

「良いんですか?」

「もちろんよン」

「分かりました」


 俺はスクリーンにお金を投入してチケットを一枚購入するとガチャを引いた。


 するといつもの妖精が宝箱ではなく丸いお盆に銀のクローシュを被せたものを運んできた。


 すごい! まるで妖精が給仕をしてくれているみたいだ。


 俺はその演出に感心しながら見ていると、妖精はいつもの祭壇の上ではなくテーブルクロスの敷かれたテーブルの上にお盆を置く。


 そして妖精がおもむろにクローシュを取った。


 『☆3 絶品ポークカレー』


「あ、当たりっぽいですね」


 俺は出てきたポークカレーをトーニャちゃんに渡した。皿なしで出てくるのではないかと不安だったがどうやらそれは杞憂だったようで、大きな葉っぱの上に盛り付けられた状態で出てきてくれた。


 そしてカレーの美味しそうなスパイスの匂いが辺り一帯に漂い始める。


 う、これは滅茶苦茶腹が減るやつだ。


「あらン。これ、いい香りねン。それにすごく美味しいわン。こんなに美味しい食べ物が 10 マレだなんてお買い得ねン。ディーノちゃん、すごいわン」


 トーニャちゃんはそう言いながら堅パンをカレーにつけてふやかしながらかじっている。


「まあ、それでしたらわたくしも試してみたいですわ。10 マレをディーノ様にお支払いすればよろしいんですの?」

「え? はい」

「では、お願いしますわ」


 俺はメラニアさんの分のガチャも引くと、出てきたのは『☆3 ヘルシー野菜カレー』だった。


「お、これも当たりっぽいですよ。ヘルシー野菜カレーだそうです」

「まあ、わたくしお野菜は大好きですわ」


 メラニアさんは俺からカレーを受け取るとやはり堅パンを浸して食べている。


「まあ、こんなお味があったんですのね」


 そう言いながら笑顔で食べているのでメラニアさんものお眼鏡にもかなったようだ。


「ちょっと、あたしも!」


 続いてルイシーナさんの分も引くと『☆3 濃厚バターチキンカレー』が出てきた。


「バターチキンカレーみたいです」

「何だかいい香りね」


 ルイシーナさんはそう言って堅パンを浸し、それを口に運ぶと笑顔を浮かべた。やはりカレーの美味さは万国共通らしい。


「あの、カリストさんとリカルドさんもいかがですか?」

「僕はみんなが食べ終わってからでいいよ」

「俺もだ。食ってるときに襲われる可能性もあるからな。ディーノは先に食っとけ」

「わかりました。ありがとうございます」


 俺は 10 マレを投入するとガチャを引いた。


 『☆2 馬の糞』


「おいっ! ふざけんなっ!」


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提供割合:

☆3:42.00%

☆2:58.00%


☆3提供内容(各 6.00%)

【絶品ポークカレー】【コク旨ビーフカレー】【濃厚バターチキンカレー】【本格スパイシーマトンカレー】【旨辛エビトマトカレー】【とろとろ牛すじ煮込みカレー】【ヘルシー野菜カレー】【黒辛イカスミシーフードカレー】


☆2提供内容(58.00%)

馬の糞


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金貨の価値で換算すると 10 マレ≒ 1,000 円ですが、建設作業員の月収が 200 マレほどであることを考えるとかなりの高級料理ですね。

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