第7話 怒涛の百十連


 それから四週間、出てくるミッションを達成し続けた俺はついに百枚のガチャチケットを貯めることに成功したのだ。


 そこで今日、これから怒涛の百十連ガチャを引いて行こうと思う。これをお金で買っていたとしたら 3 万マレ、日本円に換算するとおよそ 300 万円だ。


「フラウ、とうとうこの日が来てしまったぞ」

「ええっ? どうしたの? ディーノ?」


 フラウは大げさに驚いて俺に聞き返してくる。


「わからなのか? ついにこの日だ」

「だから何の話なの?」

「フラウ、このスクリーンを見るんだ」

「わあっ。すごいっ。ちけっとがひゃくまいもあるー」


 最後の方のフラウの演技が何だかものすごく棒読みだったがまあいいとしよう。


「これから、この一生懸命貯めたこの百枚のチケットを全ツッパしていこうと思う」

「ふふっ。ディーノ頑張っていたもんね。おめでとう」

「ありがとう。だが、これからだ。俺が神引きする様をとくとご覧あれ」

「うん。ディーノならできるよ! がんばれ!」


 こうしてフラウの応援を背に俺はガチャを引いて行く。


 まずは最初の十一連だ。いつもの演出が始まる。木箱が八個と銅箱が二つだ。しかしそこから木箱が一つ銅箱に変化した。


 出てきたアイテムは☆3が『旅人のマント』『皮の袋』『石の矢×10』、☆2は『皮の紐』『腐った肉』『馬の糞』『ただの石ころ』『動物の骨』『藁しべ』が二つだ。


 そして最後はオマケのひと箱だ。白く輝く箱からアイテムが飛び出す。


『☆4 MGC強化』


「よーし! 最初から引いていくぅ!」

「さすがディーノ! やるぅ!」


 俺はガッツポーズをするとフラウとハイタッチを交わした。


 最初からステータス強化を引けるとはアツい。今日のガチャは神引きできそうな気がする。


 俺は間髪入れずに次の十一連を開始した。木箱が八つ、銅箱が二つだ。そしてそのうちの一つが銀箱に変化する。


「よし! いけ! いけ!」


 そして銀箱か出てきたのは『鉄の盾』だった。


「あー、ステータス強化じゃない! でもよし! よーしっ! 盾はいい! 当たりだ当たり!」

「二回連続で☆4を引くとかすごーい!」


 フラウも俺の引きに感動しているようだ。


 そして銅箱からは『薬草』が出てきた。怪我をしたときにすり潰して傷口に塗ると治りが早くなるのでこれも実はかなりの当たりだ。


 残る木箱からは『腐った肉』が三つ、『枯れ葉』『馬の糞』『薪』『動物の骨』『皮の紐』がでてきた。


 そして最後のオマケは!


 残念ながら『動物の骨』だった。


 まぁ、こんなところだろう。


 ☆5こそ出ていないものの、かなり順調な滑りだした。


「よし、このまま☆4を連発して、☆5を出してやるよ」

「すごーい。ディーノがんばってー!」


 フラウの応援を背に俺は気持ちよく次の十一連を引いてくが、ここから俺は大苦戦をしてしまった。何とここから五回連続で☆4を一つも引けずに爆死してしまったのだ。


 ☆3は『鉄のスコップ』と『薬草』が二つ、『テント(小)』『鉄の小鍋』『銅の剣』『皮の帽子』『皮のブーツ』『片刃のナイフ』『旅人のマント』『堅パン』が一つずつだ。


 まあ、爆死とは言ってもやはり☆3はそれなり役に立つし銅の剣があれば【剣術】のスキルを活かすことができそうだ。


 残る☆2はというと『ただの石ころ』と『動物の骨』が八つ、『枯れ葉』が五つ、『糸』と『薪』『藁しべ』が四つ、『小さな布切れ』と『馬の糞』が三つ、そして『皮の紐』と『腐った肉』が二つだった。


「おいおい、ちょっとまずいよ。どうなってるんだこれ」

「ディーノ、ちょっと焦らないで落ち着こうよ。大丈夫、一回深呼吸をして! 集中して!」


 俺はフラウに言われてハッとなった。


 そうだ。前世でもこうやって熱くなって雑に引いた結果、神引きできずに爆死を繰り返して破産したんだ。せっかく新しい人生を貰ったというのに、俺は一体何をやっているんだ!


「ありがとう、フラウ。俺、ちょっと熱くなりすぎてた」

「うん」


 俺がそう言うとフラウはニッコリと微笑み返してくれた。


「よしっ!」


 俺は一度深呼吸してから気合を入れ直す。そして集中して気合を入れ、タイミングを見計らって……。


「ここっ!」


 ガチャを引く!


 スクリーンの中で妖精たちが再び箱を抱えてやってきた。全て木箱だ。


「えええっ。頼む! お願い! 頼むっ!」


 だが俺の祈りは届かず四つの箱が銅箱になっただけだった。☆3は『鉄の小鍋』『石の矢×10』『旅人のマント』『テント(小)』だった。


 ちなみに☆2は『藁しべ』『小さな布切れ』『ただの石ころ』『糸』、そして『動物の骨』が二つだった。


 また爆死か。


 気落ちしそうになったところでオマケの箱が開かれる。


『☆5 水属性魔法』


「え?」


 スクリーンから鳴り響くファンファーレに俺は何が起きたのかわからず、ただ呆然とスクリーンを見つめる。


「すごい! さすがディーノ! この最後にこれを引けるなんて!」

「え? あ、あ、あ! よし! よーし! よしっ! 見たかっ! これが実力ってやつだ!」


 脳汁があふれ出て、興奮して、最高の気分だ。


「うん! さすがだね!」


 フラウにこうやって持ち上げられるのもまた気持ちいい。


「よーし。じゃあこのままの流れであと二十二連やっていこう」

「おー! 頑張れディーノ!」


 俺は次のガチャを引く。妖精たちがまた箱をぶら下げて飛んでくる。木箱が七つ、銅箱が二つ、それに銀箱が一つある!


「よーし。調子いいぞ。来い! そのまま金に変われ!」


 残念ながら金には変わらなかったが銅箱が一つ銀箱に変わった。


「よしっ! ステータス強化! 来いっ!」


 最初の銀箱から出てきたのは『HP強化』だ!


「よーし! よしよし!」

「やったね!」


 俺はまたまたフラウとハイタッチを交わした。


 そしてもう一つの銀箱からは『毒消しポーション(低)』が出てきた。これも中々な高級品だ。低品質のポーションとはいえ店で買えばかなりの値段がするはずだ。


 ただ、今の俺には使い道が全くないがな。


 そして☆3は『皮のブーツ』だった。やはり☆3は出やすいせいか同じものが何度も出ている。


 ちなみに☆2は『小さな布切れ』『ただの石ころ』が一つずつ、そして『藁しべ』『枯れ葉』『動物の骨』が二つずつだった。馬の糞と腐った肉が出なかったのは素直にありがたい。


「よし、ラストだ。ここで☆5をもう一つ!」

「うん! ディーノならできる! 頑張って!」

「任せろ。ここっ!」


 俺は再び全神経を集中させてガチャを引く。


 そして妖精たちが運んできたのは……。


 全部木箱だった。


「あ、あ、ヤバい。変わって。変わって。変われっ!」


 しかし俺の願いも空しく一つが銅箱に変わっただけだった。☆3は『旅人のマント』だった。☆2は、まあいいや。


 それにまだ諦めるのは早い。最後のオマケがある。


「来い! ここで、俺はまた奇跡を起こす! ☆5っ!」


 そして光り輝く箱から飛び出してきたのは『腐った肉』だった。


「爆死だー」


 俺は前回同様再びテーブルに突っ伏したのだった。


────

今日のガチャの結果:

☆5:

 水属性魔法

☆4:

 HP強化

 MGC強化

 鉄の盾

 毒消しポーション(低)


☆3:

 テント(小)×2

 堅パン

 石の矢十本×2

 鉄のスコップ×2

 鉄の小鍋×2

 銅の剣

 皮のブーツ×2

 皮の袋

 皮の帽子

 片刃のナイフ

 薬草×3

 旅人のマント×4

☆2:

 ただの石ころ×12

 枯れ葉×9

 糸×7

 小さな布切れ×6

 薪×6

 動物の骨×16

 馬の糞×5

 皮の紐×4

 腐った肉×8

 藁しべ×10


================

☆5と☆4は確率通りですが、☆2が少し多めに出たのでやや爆死といったところでしょうか。それにしても安定の動物の骨ガチャですね……。どうしてこうなった(笑)

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