第6話 Fランク冒険者の仕事

 それから俺は毎日冒険者ギルドに通い、熱心に依頼をこなしていった。その理由はもちろん、フラウのミッションを達成するためだ。


 フラウのミッションである『冒険初心者ミッション2』をクリアした後に出てきたミッションは二つで『冒険者初心者ミッション3:冒険者ギルドの依頼の結果を報告しよう』と『冒険者初心者ミッション4:冒険者ギルドの依頼を達成しよう』だった。


 これのクリア報酬はもちろん冒険者ガチャチケット十枚だ。


 しかも建設作業員の依頼なんて失敗しようがない。よって、これだけで二十枚もガチャチケットが貰えるのだ。


 ということは、だ。8 マレの達成報酬と昼食を貰ってしかも 600 マレ分のガチャチケットがついてくるのだからこの日の日当は実質、608 マレだ。


 これほどの高収入のチャンスを逃す手はないだろう。


 しかも、3と4のミッションを達成した次のミッションは『冒険初心者ミッション5:冒険者ギルドの依頼を二つ受注しよう』だった。その次は『冒険初心者ミッション6:冒険者ギルドの依頼を二つ達成しよう』だった。


 どうやらソシャゲと同じように少しずつ達成しなければいけない依頼の数は増えていくようだがこの程度であればまだ大丈夫だ。


 このミッションも達成すると次は必要な依頼数が四つに増えた。そしてさらに『冒険者ミッション:冒険者ランクをEにランクアップしよう』というものも現れた。


 冒険者ランクがEにアップすれば町の外での依頼も受注できるようになるため、冒険者としての活動の幅が広がる。


 だがしかし俺としては外に出るのは不安だ。それにこの高額なガチャチケットをお金で買う気にはなれないので、やはりこうして建設作業員をしながら堅実にミッションをクリアしてガチャを引くのが良いと思うのだ。


 そう、ガチャは引けども課金せず、というやつだ。


 こうしてしっかりと自制してガチャと付き合っていれば前世のように破産することは無いのだ。


 そしてあっという間に一週間の休みが終わり、いつもの監督の現場へと戻ることとなってしまった。


「よう、ディーノ。お前、冒険者登録したらしいじゃねぇか」


 いつもの集合場所に行くと、監督が俺を待っていた。


「え? どうしてそれを?」

「そりゃ、休みの間他の現場に顔出してやがったんだ。知らねぇわけねぇだろ?」


 なるほど。現場監督の横のつながりってことか。


「マルコにも聞いたが、打ち上げの後に手ひどくやられたそうじゃねぇか。だが、そいつをバネにしてハズレスキルでも冒険者として成功を目指すとは見上げた根性だ」


 あ、いや、そういうわけではなくただ単にガチャが……。


「そういうわけで、俺が話を冒険者ギルドに話をつけておいてやった。ディーノの仕事はこれから全て冒険者ギルド経由になるからな。ちゃんと一日の作業が終わったらギルドに報告に行くんだぞ」

「え? え? あ、もしかして日当は……」

「当然、一日 8 マレだ。ウチがお前ひとりに払える金額が増えるわけないだろ。だが、こうやって仕事をしていれば冒険者としての実績になる。そうすれば、お前の這いあがるチャンスが増えて、そのうち建設作業員なんかじゃなくてもっとちゃんとした依頼をこなせるようになる。頑張れよ」


 そう言って監督は俺の肩をポンと叩くと他の作業員たちに指示を出すべく歩いて行った。


 俺が呆然ぼうぜんと立ち尽くしていると、今度はマルコさんがやってきて俺の肩を軽く叩いた。


「よう、ディーノ。聞いたぞ。頑張れよ。いつかビッグになってあの男を見返してやれ」

「え? あ……」


 そうしてマルコさんも自分の持ち場へと向かった。


「おい! ディーノ。さっさと持ち場につけ」

「は、はいっ!」


 監督にどやされた俺は慌てて自分の持ち場へと向かったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る