お題:○○隠しに沿うワンシーン
ログライン:当時を知るロリババアがからかい半分で考古学者の助手になってみた
以下、導入部分の草稿。
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(千年前? ついこの前じゃな)
ヴァイスマン教授の考古学講義の教室は空きだけだった。受講者はほんの数名、中央の席を陣取って頬杖をつく彼女――ミヤビもまた、欠伸をしながら退屈そうに聞き流していた。
(考古学とはのう。生き証人がここにいるとは知らずに滑稽なものじゃ)
彼女にとっては、すべて知っている話だったからだ。
「本講義の主題となるのは○○時代に残された数々の王墓です。各地に点在する王墓はいずれも一つの建造物といえるほど巨大なものであり、複雑な迷宮構造を持つことが特徴です。その構造の意味と、なぜ点在して立地しているのか。これらは現在でも明らかになっておらず、考古学上で大きな謎の一つとなっています」
(大きな謎じゃと? 見てわからんものかの)
ヴァイスマンが黒板に王墓の模式図を描く一方、ミヤビはノートもとらずにまたひとつ欠伸をした。
「謎だらけの王墓ですが、文献を紐解くうち、その謎を解く鍵となりうるある人物の名が浮かび上がってきます。数々の王墓の設計を指示したとされる人物です」
(お、わしの話じゃな)
「それがエンゲルハルト氏です」
(誰!?)
眠気が飛んだ。王墓の設計指示というか、原型を考案したのは自分のはずだ。ミヤビがこの退屈そうな講義をわざわざ聞きに来たのもそのあたりが聞けるのではないかと期待していたからだ。現在に至ってどのように話が伝わっているのか――そこに興味があった。
それがこの結果だ。
「王墓の迷宮構造には多くの盗掘者が苦戦し、ときには命を落としています。一説には、このような盗掘者対策としてわざわざ複雑な構造にしたともいわれています」
(いやいや、そんなはずないじゃろ……というかエンゲルハルト氏って誰?! わしそんな名前のやつ知らんのじゃけど!)
間違って伝わっているのか。どこかで偽史が紛れ込んでいるのか。
気が気ではなかった。王墓の設計に誇りを持っているとか名誉を汚されたとかではないが、歴史がまったく知らないものとすり替わっているのは気持ち悪くて仕方なかった。
(おのれエンゲルハルト……いや待て、わしの名前がなんか間違って伝わったのか? “ミヤビ”がこう、なまって……ミヤゲンハルト……無理じゃ……)
集中力を乱され、以降の講義は頭に入って来なかった。ただ、特に問題はないと思った。彼女の心は決まっていたからだ。
久方ぶりに現世に降り立ち、どの程度の変化があったものかと学ぶため姿を偽り王立学院へと潜入した。勝手がわからずどうにも外見年齢を若くしすぎたようだが、それはよい。
いくらかフラフラと講義を受けてみて、魔術理論も実践も思ったより発展がなく、失望していた先でからかい目的で受けに来たのがこの講義だ。
(適当な講義をしおって……待っておれよ)
彼女の心は決まっていた。
ヴァイスマン考古学研究室への配属を志願し、間違った知識を披露するたびに論破して馬鹿にして遊んでやる。
新しいおもちゃを見つけて彼女はほくそ笑んでいた。
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考古学とか歴史の設定が固まれば本稿ではもう少しディティールを盛る予定。
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