第2話 呼び名

次の日、俺は電車に乗り学校へと向かった。

やっぱりまだ昨日のことが頭から離れない。

俺はイヤホンを付け携帯の音楽の再生ボタンを押した。


放課後はいつも通り屋上に行った。

すると屋上には楠ことりがいた。ことりは鉄の柵に左肘を置き、左手の平で頭を支えて、右手は軽く鉄の柵にのせて景色を眺めていた。


まるでその顔は悲しそうな顔。


俺は声をかけようとしたら、ことりが気づいた。

「お!風輝くんじゃん!」

ことりはさっきまで悲しそうな顔をしていたのが嘘みたいに笑顔だった。

「私、風輝くんが何しに来たのか分かるよ。絵を描きに来たんでしょ?」

「え、なんで知ってるの?」

「それは秘密。それより、風輝くんが描いた絵を見せてよ。」

「うん。いいけど、そんな上手くないぞ。」

俺はタブレットを出し、電源をつけて絵を見せた。

俺はことりに絵を見せた。

その絵はこの学校の屋上からみた景色。

するとことりは「きれい、やっと、やっとだ・・・」とつぶやいた。

「やっと?」

「あ、ううん。なんでもないよ。それよりこの絵めっちゃきれい。」

風輝はこの絵の説明を始めた。

「この絵はこの屋上からみた景色の絵だ。」

ことりはその絵と屋上からみた景色を比較した。

「すごい。そっくりそのままじゃん。」

ことりは絵と景色を交互にみていたら1本の黄色の細い棒が絵に描いてあった。ことりのみた景色はそんなものは無かった。

「この黄色の細い棒のとこなに?」

ことりは黄色の細い棒が描かれた絵を指さした。

「あー。これは、絵を描いてるときそこのマンションを工事していたクレーン車のクレーンだ。この絵はその時にみた景色を絵にしたんだ。」

「なるほどなるほど。」

「そういえば、楠さん。」

「ことりでいいよ。」

「ことり・・・さん。」

「ダメダメ。ことり。」

「それじゃことり。」

「うんうん。よくできました!」

俺はその時思った。なんでこの屋上にいるのかと聞こうとしたがあの悲しそうな顔をした、ことりが思い浮かんだ。やっぱりこの話はまた今度話そう。

「風輝くんなんか言いたかった?」

「ううん。なんでもない。」

「えー、なになに教えてー。」

「また今度な。」

「風輝くんの意地悪。」

ぷくーってなった顔も可愛い。

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