都内 フリーライターT氏の自室にて 2
『モキュメンタリーとしては20点、創作ホラーにするなら甘めにつけて30点。もちろん100点満点で――』
手元のメモにさらさらと書きつけ、伝えるならもっとマイルドな言い方をに変換しなければと思い、うまい言い換えが何も浮かばず意味もなくメモに落書きを始める。髪の長い女の子の顔を書く。笑う口元。揺れる髪。少し遠くを見るような眼差し――
『リーコの写真は、プラス50点。あれはいい』
あの子はどこから見つけてきたのだろう。音声の女の子とは別の役者を使ったのだろうか。ものすごい美少女というわけではないのに、妙に引き込まれる。何とも言えない雰囲気がある。撮影者の腕なら大したものだ。アマチュアというのも馬鹿にしたものではない。
写真と音声を合わせたホラー作品を作りたいという話を佐藤から聞いたのは、確か一年ほど前のことだ。
いわゆるモキュメンタリー、フェイクドキュメンタリーをやりたいのだという。
人物写真に不気味なエピソードをくっつけて、都市伝説ふうにしたいらしい。美少女の写真は既にある。写真をめぐって繰り広げられる音声も用意した。その音声と写真は別々にネットに流し、できるだけ拡散をこころみる。様子を見て、種明かしのテキスト――音声のテープ起こしと、それぞれのエピソードを小説にしたものを投稿サイトにアップする。
ただ良い写真というだけでは、注目されないのだと佐藤は言った。
良い写真は日々、いくらでも産み出される。何らかの付加価値、話題性がなければ記憶に残らない。
「『いいね』がたくさん押されて、それで終わりにならないものを作りたいんだ」
手を貸してほしいと言われるままに、私は仕事の合間を見て、まずは音声をテキスト化することをはじめた。
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