第2話:彼女の異変
僕たちが交際を始めて数ヶ月が経った。お互いに時間を作りながら会う回数を増やしていた。そして、僕たちが出会って初めてナイトデートに行こうと計画をしていて、お店もプレゼントもすべて滞りなく決まった。しかし、恋愛の神様は今まで経験をしたことのないような出来事を僕の試練として、与えてきた。
その事件が起きたのは二人で約束していたデートの一週間前だった。その日はとても寒い日で、いつも寒くて丸くなる僕は厚着をして、完全防備で大学に向かった。そして、大学では普通に授業を受けて、みんなで談笑して、バイトをこなしてといつもと変わらないローテーションをこなしていた。しかし、その時は突然やって来た。僕がユックリテレビを見ながら大学の課題をこなしていると、いきなりスマホが「ピコン」と鳴った。すると、彼は「また誰かが雑談でも始めたのだろう・・・」そう思ってスルーしていたが、少しすると携帯がブルブルと震え始めて、スマホを手に取ると彼女といつも一緒にいる佳菜がメッセージアプリの通話機能で電話してきた。
「もしもし、こんな時間にどうしたの?」と聞くと、彼女は「明莉が家で倒れていたから一緒に救急車に乗って、病院に着いたところ」と今にも倒れてしまいそうな声で言った。しかし、凉真にとっては寝耳に水だった。というのは、彼女と二時間前に「さっき、バイト終わって帰っているところ。凉真は何しているの?」とチャットでやりとりしたばかりだった。しかも、彼女から電話が来て、彼女の相談を聞いて、終わったらたわいもない話もして「おやすみ」と言って通話を終えたのだった。
その時は違和感がなかったが、少し前にあった時に足がよろめくことや急に横になる事もあったことを思い出したが、今回倒れたこととの因果関係が分からない。そして、彼女の友人から「もし可能なら今から病院に来られないかな?」というと凉真はすかさず車に飛び乗り、彼女が運ばれた病院に向かった。僕は心の中で「明莉いま行くからな!待っていろよ!」と叫んでいた。実は彼女と付き合い始めた時もいきなり連絡が取れなくなったことがあって、何があったのかと思うと「低血圧を伴う貧血」だったことがあった。
約一時間後に彼が病院に着いた。そして、夜間救急の出入り口で彼女の友人である優美が待っていた。さっきは佳菜が連絡をくれたが、彼女は明日一限目から授業があったため、先に帰宅し、明日の授業がすべて終わった時点でまた来るという。
そして、彼女とベッドで対面すると思わず「体調悪かったのを気付いてあげられなくてごめん」とささやくような声でつぶやいた。それもそのはずだ。彼女は彼と早く結婚したいと思って、休みが合うようにシフトやスケジュールを調整しながらバイトに励み、大学の授業も頑張っていた。そのため、普段も五時間寝られれば十分に寝られたと感じるほどに頑張ってしまった。その頑張り過ぎた結果が今回のこの事態に発展してしまったのだと思った。それ以上に彼女の様子を友人達から聞いておけば良かったと後悔もしている。
それから少しして、地方に住んでいる両親が病院に着いた。そして、凉真と両親で今回担当した医師から病状と今後の治療方針などを聞いた。医師の診断は「過労」で、現在は倒れた際に床に頭と顔を強く打ち付けていたため、一時的に意識を失った状態になのだという。そして、彼女の顔色がうっすら白くなっているのはいわゆる血流があまり安定していないからなのだという。そこで、医師が凉真に対して直近の状態などを聞いてきたので、そのまま説明すると、彼女の状態と対比して次に医師がこう言った「彼女は平均的な数値に一部数値が足りておらず、無理をすると今回のように倒れてしまう可能性があります。そうなる前に彼女に少しでも楽をさせてあげて欲しい」と伝えられた・
僕は彼女がだいぶ無理をしているのではないかと感じてしまった。そんな彼女を見ていて、僕は何も出来ていなかったと後悔をしていた。少し前まではなんでもなかった彼女がいきなり倒れるとは思わなかった。そういう所をきちんとしないと彼女を守ることは出来ないのだろう。
それから一週間経った時に彼女は奇跡的に意識が回復したもののまだ、本調子ではなかったようで、凉真のことをうっすらとしか覚えていない状態だった。
そして、彼女の体調が安定したため、医師が退院を許可し、約二週間ぶりに彼女の自宅に戻った。やっと安心して過ごせるようになると思っていた矢先、彼女がいきなりパニック状態になったのだ。その時になぜ彼女がパニック状態になったのか彼には理由が分からなかった。そして、彼女がいきなり裸足のまま家を飛び出してしまった。彼も追いかけたが、彼女は高校まで全国大会にも出場するくらい足が速かった。だから、普通の脚力を持っている彼であっても追いつくのは至難の業だった。
しばらくして、彼女がある場所に止まった。それは、彼女が通っている大学の正門の前だった。そして、数十秒止まるとまた走り出した。そして、彼女がバイトをしているお店の前を通り過ぎて彼女のアパートに戻った。僕は彼女に何が起きたのか分からなかった。
そして、彼女の家のことをすべてやり終えて、自分の自宅に帰ろうとした時だった。「なんで帰るの?誰かに追われているから助けて」と凉真の右腕を離さなかった。そして、翌朝早く出れば間に合うと思い、その夜は彼女の家に泊まった。すると、彼女からこんな話をされた。「ねぇ、私って性格悪い?二週間前に店長からそういう理由でバイトをクビになったの。」と初めて聞いた衝撃的なカミングアウトに凉真はただ驚くしかなかった。なぜなら、彼はそのことを一度も聞いたことがなかったからだ。そして、詳しく聞いていくと今まで誰にも話したことがないという話がいくつも出てきて、中には衝撃的な話もいくつもあった。そんな彼女が心配になり、授業が終わって、冬休みに入ったときに彼が彼女をカウンセリングが受けられる総合病院に連れて行き、有名な先生の診察を受けた。すると、彼女がパワーハラスメントやセクシャルハラスメント、陰湿ないじめなどにより、心身喪失の状態になっていたため、頻繁に彼女がパニックを起こしていたことが分かった。そして、彼は彼女の家と自分の家を行き来するようにして、彼女と出来るだけ一緒にいられる時間を作った。
彼女が苦しんでいる事を知らなかった自分にとって後悔しかない。でも、これからは全力で支え、病と戦っていきたいと思った。彼女が今まで我慢してしまったのは心が痛いし、彼女にも申し訳なかった。
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