僕の理想を裏切る君へ

NOTTI

第1話:二人の出会いと交際開始

僕たち二人の出会いもまた、天使が紡いだ糸が二人を引き寄せたのではないかという出会いだった。凉真は明莉に出会うまでは女性恐怖症に近い状態だった。なぜ彼がそんな状態になったのかというと、彼はイケメンだと有名だったため、さまざまな女子生徒から告白されることやプレゼントをもらう機会が多かった。時にはなんと学校にプレゼントが届くこともあった。


しかし、彼はことごとく玉砕という名の罰ゲームを受けることが増えていった。そのことが影響したのか、彼は恋愛に対して消極的になり、どんどん奥手になってしまった。


 一方、明莉も彼と似た境遇を経験していた。実は彼女の校内での人気が高く、ある界隈ではファンクラブが出来ていたという話も聞いたことがある。しかし、彼女の恋愛も短期間で終了してしまうことが多かった。というのは、明莉と付き合えたとしても、彼女をめぐって毎日ファンの男子から彼氏が狙われることが増えていき、彼氏が精神的にきつくなり、友人関係に戻らざるを得ない状況になってしまうのだ。


 この二人は本当の恋愛を知らないまま高校入学から一年が経ってしまった。そんなときに、凉真が不登校気味になってしまったという情報を聞いて、友人達が知り合いの情報網を駆使して似合う相手を見つけようと奔走した。そして、明莉に白羽の矢が立った。そして、凉真をみんなで遊びに行こうと誘い出した。最初、彼はなかなか明快な返事をしてこなかった。しかし、時間をかけて説得して、なんとか一緒に行くことになった。


 みんなで遊びに行く当日、凉真以外の男子はみんな彼女と一緒に参加し、なんとか凉真が異性から認められていないのではないということを分かって欲しかったのだ。凉真以外の参加する予定のメンバーは集まったが、凉真だけが来ない。おかしいと思ったメンバーは凉真に連絡をしたが、メッセージアプリの返信もなく、電話をしても反応が無い。ヤバイと思った友人の拓斗が彼の家に走っていった。家に着いてインターフォンを押すと凉真の母親がかなり焦った形相で出てきて、「凉真が起きてこない」と言った。そこで、彼の部屋に行くと「女子が一緒なのをなんで言ってくれなかったの?男子だけなら行きたいけど」というので、半日男子だけで行動して、彼が少しでも前向きになれるような環境を作りながら女子と合流することにした。


 女子と別れて、男子だけで行動を始めてから三時間が経った時に「みんなと会っても良いかも」と話してくれて、彼が2ヶ月ぶりに同級生と会った。しかし、明莉は他の友人と話していて、凉真とは目を合わせてもらえないのだった。みんなでわいわいしていて、少し経った時に有希乃が「明莉ちゃんお似合いの人がいるよ」と言って、凉真を指さした。最初は、少し緊張と動揺が隠せない感じがあったが、龍馬と近くで話していくうちに少しずつ緊張と動揺が和らいでいったように感じた。というのも、明莉の友人も久しぶりに見る彼女の笑顔を見て安心したのか、胸を撫で下ろした。そして、他の友人も二人が話している姿を見て安心したのか、また遊ぶ機会を設けようと話をしていた。


 みんなで遊びに行ってから数日後に明莉から凉真へ初めて連絡が入った。それは、今度二人でカフェやショッピングに行きたいという内容だった。しかし、彼女に返信をする前にどう答えたらいいかを躊躇してしまった。なぜなら、以前に付き合っていた奈緒に同じように誘われて、当日に土壇場キャンセル(ドタキャン)をされたことが頭によぎってしまったのだ。ただ、これは一歩踏み出す事が大事だと思い、彼女の提案を承認した。そして、バイトと勉強を頑張って、初デート当日を迎えた。僕自身かなり久しぶりのことで体が震えていた。そして、彼女が最寄り駅に着いてから改めて彼女の顔を見て安心したのか、体の震えが止まった。これは自分でもびっくりしてしまった。なぜなら、今まで付き合った相手ですぐに震えが止まったことは過去には記憶が無かったからだ。


 彼女と歩きながらいろいろ話しながら、目的のお店に向かっていた。その道中で将来の夢のことや今まで付き合ってきたことなどをなんの罪悪感もなく話せていた。そして、彼女も今までの彼氏が自分のせいで苦しんで離れていってしまった過去を打ち明けた。すると、彼自身も彼女を自分のせいで苦しんでしまい、離れていった過去を打ち明けた。そう。お互いに同じ境遇を経験していたことが分かったからなのか、この話の後はお互いに誰にも話していない話をチャットで話せるようになっていった。


 少しずつお互いの距離が近くなっていく感覚が二人には久しぶりで新鮮だった。そんな彼等がまだ知らない事がある。そう、明莉のお父さんが恋愛に対して、かなり厳しいというのもあり、最初はいっしょに遊んだ友人にも話していなかった。そう、周囲に知られないように秘密の恋のまま関係を育んでいったのだ。というのも、お互いに校内では人気が高く、凉真も明莉もお互いにまた同じように嫌がらせや迷惑行為をされることで関係を壊されたくないと思ったからだ。


そして、二人は高校三年生になって受験生となり、一時期メッセージアプリだけでやりとりをして、受験に集中ために会わない期間はあったがお互いの愛の熱量は変わらなかった。そして、お互いの志望校に合格し、二人は実家を離れて上京した。しかも、電車で行き来できる物件をお互いに探し、交際をしていないことを両親や大学の同級生にカモフラージュするしかなかった。大学に入ると高校生の時よりも会える回数が増え、日帰り旅行や泊まりの旅行などお互いに親密な関係を築いていった。この頃から凉真の気持ちに変化が現れていった。というのは、こんなに長く付き合ったことが今まで無かったため、付き合い始めた当初はすぐに別れるのではないかという不安があったが、その気持ちを今はほとんど感じる事はなくなった。そして、お互いの大学の同級生と外出し、食事にも行くことが増えていった。


 そして、二人は大学三年生の時に将来的に結婚を前提に交際をすることに決めた。そして、結婚を決めた時に地元の仲間達に初めて報告した。すると、「えっ?二人いつの間にそんな関係になっていたの?」と驚いた様子だった。それもそのはずで、最後に会ったのは昨年の年末に帰省をした時にみんなで忘年会をした時だが、二人は離れた席で飲食していたので、何も起きていないと思ったのだという。


 僕はこの出会いのために生きていたと思うと今までの経験が無駄にならなかったと改めて感じた。恋愛のミスはいつか何倍、何百倍に膨れていき、それまでの恋愛を超えてしまうことも少なくない。だからだろうか、今までの恋愛の傷が少しずつ癒えてきたように感じた。これからは幸せな時間に変わると信じてこれからも大切にしたいと思う。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る