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その後、ウロマたちはその場で警察に通報し、隆一はひき逃げの容疑者として身柄を確保されることになった。彼らが発見した死体は、やはり西田ハツという老婆のものだった。
灯美は最寄の警察署で、ウロマとは別々に事情聴取を受けた。それが終わって、釈放されたころには、すっかり夕方だった。警察署の前でウロマが待っていた。この男のほうが先に事情聴取が終わったらしかった。
「先生は、安芸山さんがひき逃げの人殺しだって、だいぶ前から気づいてたんですか?」
一緒に並んで歩きながら、灯美は尋ねずにはいられなかった。
「そうじゃないかという疑惑があっただけです。確信はありませんでした。今日、彼に語ったことは、しょせん、僕の憶測の域を出ないものですし」
「そうですか、疑惑はあったんですか。それなのに、私をそんな人と二人きりにしたんですか」
ウロマの答えに、灯美はむかむかしてきた。そう、彼女は事情聴取されている間、ずっと思っていたのだ。あんな危ない人と二人きりにするなんて、ウロマという男は何を考えているのだろう、と。
「何を怒っているのですか。ちゃんと助けに入ったじゃないですか?」
「そんなの、最初から先生が一緒についてきてくれればよかっただけの話でしょう! 私、あの人に首を絞められて、死ぬかと思ったんですよ! 本当に怖かったんだから!」
「いや、だから、こうして無事に――」
「助かったからよかったって話じゃないです! 一歩間違えてたら、私、殺されてたんです! それも、先生が体力がなくて、私たちについてこれないからっていう、すごくバカバカしい理由で! ふざけないでくださいよ!」
「ああ、あれは別に、僕が途中でバテたというわけではなく、あえてそういう演技をしていただけですよ? ああやって、少し離れて、安芸山さんを泳がせてみようという作戦で――」
「嘘。先生、どう見ても本気でバテてました! 汗かいて、顔真っ青でした! だいたい、安芸山さんを泳がせる理由がないじゃないですか! もう死体はすぐそこにあったんですよ! 先生はそれを知ってたわけでしょう!」
「いや、僕だって、死体の詳しい場所までは知らなかったんですよ? だから、今日こうして、適当な夢分析をでっちあげて、安芸山さん自身に案内してもらったわけで」
「夢分析をでっちあげ? なんですか、それ? そんなのカウンセラーとして最低じゃないですか!」
灯美はもう怒り心頭で、ウロマの答えの内容などどうでもいい状態だった。
「だいたい、助けに入ったって言い訳しますけど、やり方がひどすぎるじゃないですか! 私もろともスタンガンでしびれさせるって、そんなの助けたうちにカウントされないですよ! 男として恥ずかしくないんですか、そんなやり方!」
「だから、スタンガンはちょっとしびれる程度で、安全なものだと――」
「ほら、そうやって何でもかんでもすぐ言い訳して! 先生は、絶対に自分が間違ってるって認めないですよね! いつだって、自分が責められると色々屁理屈こね回してごまかしますよね! 普段は偉そうな、頭よさそうなこと言ってますけど、本当は子供みたいに幼稚な性格してるんだから! 部屋は汚いし、シャクソンスタイル療法とか勝手に言葉作っちゃってバカみたいだし、女子高生の裏アカ特定して晒すとかゲスすぎるし、寒暖差アレルギーで鼻ズルズルなのに花粉症や風邪相手に意味不明にマウント取るし、ほんっと、みっともない! 人として、ありえない! 先生なんて、だいっきらい!」
灯美はマシンガンのように怒りをぶちまけた。そして、ウロマが何か言う前に、「私、もうアシスタントのバイトやめます!」と宣言して、彼の前から早足で去った。
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