第45話 最終決戦2

「後ろからの攻撃が止んだぞ」


 タルミが振り返りターシアンに言う。


「ドラゴンの上にシュウ様とジョエル様が乗っていたようですが」

「ここで助けに来てくれたのか。ありがたい」


 上空を舞うドラゴンに、タルミは手を振る。


「一気に攻め落とすぞ! 俺に続け!」


 タルミは腕を上げ大声で叫んだ。




 アルテリオは魔物を蹴散らし、サザランドの城門前に着く。


「あなたの出番ね」


 モニカがアルテリオにウインクする。


「任せとけ」


 アルテリオの拳が真っ黒に変色する。

 そのまま城門に向かい突進する。


「超超怒級打撃(テラトンパンチ)」


 アルテリオの究極の一撃で城門は粉砕する。

 城下町に入ると、タルミ軍は住民には目もくれず城に向う。




 シュウとエリオンの戦いは続いている。

 洗脳が解けたエリオンだが、反応が戻ってもシュウに押され始めていた。


「ハッ!」


 エリオンが気合を込めて手の平から金色の気功弾を放つ。

 シュウは片手で打ち落とし、地を蹴り距離を一気に詰める。

 シュウの拳がエリオンの顔面を打つ。

 寸前で身を仰け反らしてかわし、そのままの勢いで蹴りを放つエリオン。

 その蹴りを、顎を掠めるくらいギリギリでかわし、シュウがすかさず気功弾を放つ。

 蹴りを放った勢いでバック転したエリオンを、シュウの放った気功弾が襲う。

 エリオンが気功弾を手で弾いた時には、すでにシュウが足元に潜り込んでいた。

 シュウが足を旋回させ、エリオンの足を払い転倒させる。

 倒れたエリオンに馬乗りになりシュウが顔面に拳を放つ。

 シュウが徳次郎に勝利した得意のパターンに持ち込んだ。もう勝利は確実だ。


「お願い止めて!」


 エリオンの顔面ギリギリでシュウの拳が止まった。

 声の主はレイラだった。


「お願いします。もう決着は着いたでしょ」


 レイラはエリオンの上に被さるように庇った。

 冷静なレイラには珍しく涙を流している。

 シュウは立ち上がりエリオンを開放した。


「前に見逃して貰った借りは返すぞ」


 シュウはエリオンを見下ろした。

 シュウとエリオンの戦いの最中にレイラがアーロルフに進言し、すでにチェスゴー正規軍は停戦していた。




 ダラム軍の中央にある光の壁の中で、隆弘とラスティンはまだ戦い続けている。

 隆弘の拳を交わすラスティン。

 ラスティンは後ろに飛び、気功弾を放つ。

 隆弘が腕で弾くと、その隙を付いてラスティンが拳を顔面に放つ。

 拳をかわし、その腕を掴み一本背負いで投げ飛ばす隆弘。

 空中で体勢を変え着地するラスティン。

 二人は後ろに飛び退き距離を取る。


「いい加減決着を着けようぜ」


 頭や顔に所々血が滲んでいる隆弘がにやりと笑う。


「お前が大人しく殺されれば良い」


 同じく所々血が滲む、ラスティンが言う。

 二人は同時に気を溜める。

 お互い暗黙の了解で最強の技で優劣を付けるつもりなのだ。

 隆弘は両拳を握り、目の前で腕をクロスさせる。

 ラスティンは両腕を腰に当て、拳を握り締める。


「|聖なる究極の光(アルティメットオーラ)」


 隆弘が両手を開き前に出すと体全体から目が開けないくらいの光が放たれる。


「|深淵潜む極限の闇(アルティメットダーク)」


 ラスティンが両手を開き前に出すと体全体がブラックホールのように光を吸い込む。

 隆弘は光を出し続け、ラスティンは光を吸い込み続けた。




「お父さん……」


 ハンナは心配そうに光の壁を見詰めている。

 突然光の壁が更に強い光を放ち、消え去った。

 ハンナは壁の消えた向こうに駆け出す。


「お父さん!」


 ハンナの駆け寄る先には隆弘が立っている。

 ハンナが隆弘の胸に飛び込む。


「お父さん、無事だったんだね」

「約束しただろ。お前をずっと可愛がるって」


 二人はしっかりと抱き合った。

 ハリスが二人に近付く。


「我が王はどうなりましたか?」

「跡形も無く消えて、星になったよ」

「ありがとうございます」


 ハリスは礼を言うと後ろを振り返り叫んだ。


「全軍武装解除! 我が軍は停戦する!」


 ハリスの号令が各司令官に伝わり、ダラム軍は武装解除した。 

 これにより、タルミ軍を追う軍は全てなくなった。




 タルミはアルテリオが率いる先頭部隊が切り開いた道を進み、城内に侵入して謁見の間を目指した。

 謁見の間に入り、城下町が見渡せる窓から姿を現した。


「城は占領した。ダラムは我が軍が攻略したぞ!」


 下で待ち構えていた、タルミ軍の兵士が雄叫びを上げる。

 これで、ダラムのラスティン王がターバラに侵攻して始まった戦争が終結した。

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