第89話.悪魔のダンジョン15

魔王の卵が収穫できるようになると…。

選別して用途に合わせた加工が行われる。

悪魔の実験を行う為に設計して試験運用を行う。

ダンジョンの中に専用の部屋を作ったのだ。

クリーンルームに目出し三角頭巾。

その中の安全キャビネットに並ぶ50個の悪魔魔王の卵…。

一つ一つ丁寧に…。

手早くリューターで殻に穴を開け。

卵を透過しながらピペットを慎重に受精済みの悪魔卵子へと導く。

ピペットの中身は新鮮な俺の米青子だ。

「しかし、久しぶりに自分の手で出したな。」

温めたシャーレに自分でシコってどくどくした。

手際が重要なので仕方がない。

魔法の拡大鏡で元気に泳ぎ回る俺の子種。

運動パターンで拡大鏡に示されるオスの子種をピペットに攫うキャプチャー

針先は卵の中の悪魔受精済み卵子…で未だ第一細胞分裂は行われていない。

収納すれば時間は停止するので選別して集めたメスの卵50個を実験に使う。

「まあ、数個成功すれば良いだろう。」

卵の殻の穴は蜜蝋で塞ぐ。

作業済みのカートに卵を置いて、次の卵に掛かる。

集中力が必要だ…。

素早く、手早く、確実に…。

「この実験が上手く行ったら、半自動化しよう。」

殻の穴あけと穴を塞ぐの位は簡単に自動化できる。

だが、生死を掛けるのは男の仕事!

これだけは譲れない。

最後の卵の穴が塞がれる。

「完成だ…。いや、羽化するまでが実験だ。」

卵が収まったトレーを持って次の実験室に移動する。

「光よ。」

暗い部屋に魔法の光が明るくする。

何もない部屋の床には窪みが並ぶ。

卵を立てて置く。

すべての卵が同心円に並ぶ。

「さて…。初稼働だが、上手くいってくれ。」

足元に気を付けて空のトレーを持って外に出る。

部屋の扉は分厚く、ガラスブロックののぞき窓が付いている。

扉のロックを確認すると…。

壁のキャビネット扉が”アンロック”表示に変わる。

キャビネットを開くと…。

大きなナイフスイッチだ、”ON”側に倒す。

スイッチの上のランプ群に”稼働中”の位置が光る。

途端に低い音を立て扉のガラスブロックの向こう側の床が緑に光り…。

並ぶ卵が写し出される。

光る床は悪魔の融合紋章の改造品だ。

「成功しているのか…。今は祈るしかなさそうだ。」

あくまで本番しか使えない。

果たしてどんな悪魔が生まれてくるのか。

「出来上がれば対魔 (王)任 (務)の先兵だ。」

翔ちゃん、完成すれば悪魔を滅ぼす存在になるだろう。

そう、俺が設計したのだ…。




28日後…。


運転する”新種発見!悪魔融合紋章”は正常に稼働している。

状態表示ランプは”稼働中”のままだ。

ガラスブロックの先を見る…。

「卵が…。大きくなってないか?」

緑に照らされる並んだ卵…。

くっ付きそうな程大きく成っている。





さらに、28日後…。




ガラスブロックが水滴で中が見えない。

光っているのは解る。

部屋の中はすごい湿度に成っているのだろう

どちらにしても”稼働中”状態では中に入るのは危険だ。

次の実験までに改良しよう。



さらに、さらに、28日後…。



遂に状態表示ランプが”終了”に変わった。

紋章はアイドリング状態で…。

部屋の中で動く者は居ない。

相変わらず扉の覗き窓は水滴で中を伺うことができない。

”アンロック”に成った扉を開ける。

「うわぁ…。凄いことになってるぞ。」

湿気と異臭が三角頭巾を撫でる。

並ぶ悪魔の卵は1mほどの高さまで成長し。

卵は何処から分泌されたか不明な謎の粘液の固まった物で固定されている。

緑色に光る床から照らし出される卵の中…。

何かが鼓動し脈動している。ドクン、ドクン、ドクン

「未だ羽化していないのか…。」

部屋の中央に進む。

並ぶ卵の先が徐々に十字に切れ目が走る。

まるで花が咲くように…。クパァ

次々と卵が開いてゆく。クパァ、クパァ、クパァ-

脈動して伸縮する卵達…。ズックン、ズックン

「生まれるのか?」

開いた卵の中を覗く、薄暗いが…膜に覆われて…。

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