第84話番外編.黒(歴史の)騎士物語9
(´・ω・`)…。(ごめん。)期限までに完成しなかった。
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炭焼き小屋で一泊した後…。
我々は川を越えた。
川の氷の上に丸太が並べられ、その上をゆっくりと進む。
「うわー速いー、何時もは人が橇を引いて進むんです。」
水先案内人の少年がはしゃぐ。
風は在るが青空だ。
足場は悪いが犬達は力強く雪を蹴る。(おれはやるぜ。おれもやるぜ。)
林を出たら雪原の向こうに町が見えた。
凍結した川の上は平坦でない。
しかし、丸太を組んだ筏が半分、雪に沈んでいる。
クーゲルシュタインの領民が凍った川の上に施設したらしい。
遠くに見える町は煙突の煙に包まれ霞んでいる。
良かった、燃料は未だある様子だ。
「この道で泥炭を運んでいるのか?」
「はい、そうです。初めは木を伐り出していましたが、薪では乾燥が追い付かなくなり炭小屋で泥炭の乾燥をはじめました。」
正直、渡河点が確立していて助かった。
「そうか…。それは良かった。燃料は間に合っているのだな?」
「いえ…。パンは決まった日しか焼きません。薪と炭は配給制です。」
言葉が沈む少年。
「そうか…。」
嫌な事を思い起こさせた様子だ。
「泥炭は安いのですが…。シチューを煮ると味が最悪です。煙も酷い。
建物を壊す事無く壁を一面をレンガの暖炉で覆いつくす。
着火にコツが要るが、煮炊きが出来る。
朝晩の二回で家が温まる魔法の暖炉だ。
無論、燃料を選ばないのがよい。
構造に寄っては湯が得られる。
先頭の犬達が坂を登り始める。
この輸送任務一番の難所の大河が簡単に通過出来てしまった。
圧雪の丘を登りきると…。
クーゲルシュタインの城壁が見えてきた。
白い雪原の中に灰色に聳え立つ尖塔。
まだ遠いが、圧雪された道が真っすぐ…。
丘を縫って続いている。
我々に取っての障害物は何も無い。
全ての橇が渡りきり、隊列が整うと兵が声を張り上げる。
「合わせろー!」「ゴー!ゴー!ゴー!」「走れ!おら。遅れるな。ゴー!!」
疲労も見せない犬達が機敏に動く。
無論、無理をして居るのは理解できるので判断を迷う。
丘を抜けると平坦な道になる、周囲は真っ白だ…。
街道上にゴマのように疎らに人が見える。
何か作業をしているのだろう。
犬達の速度を落とす。
ここまで来て無理をする必要はない。
王国軍の旗をたなびかせ小さな橇を引く住人達を追い抜く。
人々は立ち止まり驚いた顔だ。
追い抜く人影は全て外套に帽子とマフラーを首に深く巻いて着ぶくれしている。
人型のシルエットを通り過ぎるたびに町の外周の城壁が大きくなって行く。
城門は開かれている。
門を潜ると…。
町は灰色一色だ。
城門内の広場は圧雪で…。
黒と解らない物で染まっている。
噴水は止まって汚れた黒い雪が積もっている。
全て灰色で草を燃やしたような香りだ。
皮鎧とコートを着た城兵が出てくる。
これも灰色に見える。
「我、王国軍所属。第2058輸送小隊。王都より物資を運んで来た。
「はっ!ただいまお待ちください。」
灰色の兵が走る。
犬達は立ったままだが…。(おれはやるぜ。やすむ?やすむ?)
兵がハーネスを点検し終わると座り始める。(おわり?おわり?)
兵の報告が伍長、軍曹に集まり。
最終的な報告を受ける。
「人犬共に異常なし!捜索、ロープに異常有りません。犬に疲労の所見あり、増加食休憩2日程度。」
軍曹の報告を受け確定する。
「よし!解った。」
現在、小隊の損耗はない。
雪に阻まれた時に十分な休憩を与えることが出来たのが功を奏している。
広場には多くの人達が集まっている…。
遠巻きに物陰に隠れ犬を見る住民達。
森で会えば
怖いもの見たさに集まってくる。
何時もの事だ。
特に子供は近づいてくる。(あそぶぜ!!)
静止するのは女で年配の方が慎重だ。
恐怖の割合であろう。
正直、僕も初めて
直ぐに戻って来た灰色兵が述べる。
”現在ご領主さまは歓迎の準備を整え中、王国軍将兵の皆様には、ご休憩の場を用意の上。明日にご検閲頂く所存。”
了承して、案内の兵の先導で移動する。
二等兵が先頭の犬を引いて続く。
…野次馬も遥か後方に続く。
付いた先は恐らく兵舎か練兵場だった。
雪原の中、厩舎と繋がった木造の兵舎だ…。
兵に不満が広がる。
「もう少し…。」「いや、マシなほうですぜ。」
不満を表す兵を下士官が諫める、こちらも要求を通す。
「犬と一緒に収容できるのは良いが…。少々。」
「はあ、申し訳ございません。空いている兵舎が此処しかなく…。あ、ここはサウナが併設されています。」
「サウナか!」
「おー。」「サウナ!」「いいね。」
途端に喜ぶ兵達。
橇を移動させて歩哨を立て。
犬達の点検が終わったらハーネスを外す。
解き放たれた犬は雪原の練兵場へ走って行く。(おれはあそぶぜ!!)
兵達総出でハーネスとロープの点検を行っている。
ぞろぞろと籠を持ったご婦人方が兵舎の中に入っていく。
その後、竈の煙突に煙が立ち始めた。
飯炊きのご婦人達なのだろう。
練兵場を思い思いに走り回る犬達、懐いている兵の隣に座り仕事を観察する犬もいる(あそぶ?あそばない?)
クーゲルシュタイン兵の案内で兵舎に入る。
中はご婦人達が掃除を行っている。
「ちょっと!お湯持ってきて。」「この部屋は終わったわよー。毛布持ってきて。」
活気がある。
皆、元気そうだ。
ベッドと書棚がある部屋に通された。
士官室と言うより当直室の様子だ。
クーゲルシュタイン兵に礼を言い。
コートを脱ぐ。
クーゲルシュタイン側の当番兵が付いた様子でコートを受け取った。
見える場所でブラシを掛けコートの整備を行う当番兵。
道中のメモ書きを整理して書類を纏める準備をする。
軍曹がやってきてハーネスの点検と補修が終わったと報告を受ける。
「よろしい歩哨を立て交代で休憩しろ。橇に誰も近づかせるな。」
「はっ!」
「犬に増加食を与えろ。終わったら犬の状態を報告しろ。」
多分、練兵場を走り回っているが、食事当番の兵がバケツを持てば集まってくるだろう。
「失礼します。お食事の準備未だですが…。サウナの準備が整いました。」
当番兵が入室せずにドアの外で報告する。
後ろにご婦人が居るので呼びに来たのだろう。
「そうか…。」
「隊長殿お先にどうぞ。歩哨に立たせて居る者を交代させます。」
「ああ、そうか。では行ってくる。」
こういう物は上がやらないと下が遠慮して進まない。
歩哨に出た兵を休息させる口実だ。
書きかけの書類を机の中に収納して…。
個人のカバンを持ってご婦人の先導でサウナに向かう。
何の匂いだ…。
サウナは兵舎の外に在った。
屋根が付いた洗濯場の横だ。
ご婦人が数人、干からびた黒い物をかまどに放り込んでいる。
脱衣所に入る。
「お洗濯物はこの籠にどうぞ。直ぐに乾きますので。冷たいお水はココです、水風呂はございませんが皆さん窓から飛び出していますよ。」
栓の付いた樽を指し示すご婦人、コップが並んでいる。
「窓…。」
ご婦人はそのまま脱衣所を出てしまった。
肌着を籠に入れて手ぬぐいを持ってサウナに入ると…。
むっと熱気が…。
確かに窓があり後付けの階段が付いている…。
木の窓を開けると雪の山だった。
「ああ、そう言う事か。」
しかし…。士官がフノレチンで走り回って良いのだろうか?
「失礼します…。あ、隊長!」
4人程わが小隊の兵がサウナに入ってきた。
「ああ、歩哨は終わったか?」
「はい、異常ありません。」「犬は食事中です。」「そのまま厩舎に収容予定です。」
「よし、了解した。十分に楽しめ。」
「「「了解!」」」
男が数人、フノレチンで敬礼しあう。
「それから、現地の情報では水風呂が無いので皆、窓から飛び出しているそうだ。」
「「はい?」なんですって?」
「見れば解る。俺は水を飲む。」
「「はぁ」」
脱衣所に一旦戻る。
籠が無くなっているが…。
外でご婦人方が洗濯作業をしていた。
樽の栓を緩め陶器のコップで冷たい水を腹いっぱい飲む。
うん、うまい。
いい水だ。
「ヒャッハー!」「ウヒャー!」「ぎぃもち¨ぃいいいー!!」
小屋の裏から叫び声が聞こえる。
命令を実行している様子だ。
熱いサウナで疲労も飛ぶだろう。
翌日、一日だけだったが兵の士気は十分に回復した様子だ。
ご婦人達のお陰で今は清潔なシャツに
ほのかに草の香りがする。
兵達も髭を剃り小奇麗になり。
何時もより機敏に動いている。
慣れたとはいえテント暮らしは辛い。
「準備整いました。」
「よろしい、では出発だ。」
迎えの馬も来ている。
馬を先頭に犬と橇が町中をゆっくり進む。
通りは歓迎の人の列だ。
非常にいい気分だ。
空は曇天雲で小雪がちらつき始めた。
領主の家に到着すると…。
雪の中、出迎えがあった。
橇が止まり報告の為に進む。
コート姿で若い男…ヴァイス殿だ。
軍学校のトーナメントで見ただけだが間違いない。
思わず胸が高鳴る…。
前に立ち敬礼する。
「我、王国軍所属。第2058輸送小隊、グズタフ・フィンツェンツ少尉であります!王都より物資を運んで参りました。クーゲルシュタイン殿にお渡し致します。」
皮の袋に収まった物資明細書を渡す。
「確かにお預かりした。ありがとう、フィンツェンツ少尉。ツィトローネ現品の確認を。」
「はい、ヴァイス様。」
明細書を受け取り兵を引き連れメイドが橇に向かう。
雪が強くなり始めた。
「天気が悪い、屋敷に入ってくれ。」
「ハッ!」
屋敷の中に入ると先ほどのメイドが…。
いや、よく似ているだけだ。
領主のコート脱ぐのを手伝っている。
別の女中が脱いだコートを片付ける。
俺もコートを預けた。
「暖炉で温まろう。」
ついた部屋はご領主の私室らしくもう既に暖炉には火がくべられている。
「かけてくれ。オリーベお茶を。」
暖炉の前に向かい合う椅子を進められるので座る。
「はい、
メイドが下がる。
肩に掛けた収納カバンを渡す、軍の紋章が付いた封印付きの行政連絡用の重要な鞄だ。
封を切り鞄の中を確認するヴァイス殿。
封書を幾つか確認している。
「教授っ…。」
暖炉の光が呟くヴァイス殿の憂う顔を照らす。
か、可憐だ。(魅了)
「はい、確かに。受け取りました。フィンツェンツ少尉殿、」
「…。は「お茶の準備が整いました。」任務を達成でき、うれしく思います。」
静かに食器を鳴らしてお茶が小テーブルに出される。
お菓子もある。
「王都も雪でしょうか?」
「はい。一面の雪です。夏があった事を忘れるような寒さです。」
お茶を頂く。
「夏ですか…。私はあまり王都に長く居なかった。」
ならばお会いしたあの時は本当に偶然だったのだ。
「そうでしたか…。」
言うんだ、名乗れ!
俺はヴァイス様に…。
ドアがノックされる。
少し雪に濡れたメイドが入ってくる。
「現品の確認が終わりました。問題ありません。」
「ありがとう、ツィトローネ温まりなさい。オリーベ、王国軍に引き渡す物資、種類はコレに。」
王国軍の肩掛けカバンをメイドに渡す。
「はい、ヴァイス様。」
メイドに向け身体を捻ったヴァイス殿の…。身体の線。
む、胸があるだと…。
そんな…。(魅了魅了魅了魅了魅了魅了魅了魅了魅了魅了)
混乱する。
お茶を飲み干す。
「どうぞ、」
「あああ、すまない。」
濡れたメイドがカップに注ぐ。
大丈夫だ!言おう!!
「おとうさま。」
ドアをいきなり開いて小さな男の子と女の子がドアから顔を出している。
「お客様がお見えだ、マナーを守りなさい。」
「はーい」「はーい。」ドアを閉め笑いながら走り去った。
「すまない。」
ヴァイス殿の表情は親のそれだ。
「いえ、お子さんでしょうか?」(賢者モード)
「ああ。そうだ。元気でね。悪戯好きで困っている。」
「そうでしたか。」
ふう、例えヴァイス殿が女を隠して領主に成っていたとしても…。
女でも男でも…。もう関係は無い。
誰かの人の物なのだ。
俺は義務を果たした、あのトーナメントの救護所での誓い。
”彼女の為に命を掛けよう”という誓いは達成された。
ドアが鳴る。
「搭載が終わりました。必要な書類です。」
メイドが雪に…。濡れてない。
「ああ、ありがとう。」
鞄のクーゲルシュタインの封印を確認するヴァイス殿。
そのまま手渡さられる。
「はっ!必ず王都にお届けします!」
固く握手をする。
顔が赤くなるのが解る…。(魅了)
男同士だ!何が悪い!!
「キマシタワー」
メイドが呟く。
そうだ、やっと此処まで来れたのだ。
玄関でコートを受け取り装備を整える。
軍曹の報告だ。
「搭載完了!何時でも行けます。」
「そうか!王都に帰還する。」
ヴァイス殿の出迎えに敬礼で答える。
「では、王国軍所属。第2058輸送小隊、グズタフ・フィンツェンツ少尉これより王都へ向かいます!」
「ありがとう、フィンツェンツ少尉殿、道中気を付けて。」
敬礼を解き別れ。
背中を向ける。
「王都に帰還するぞ!乗り込め。」
兵に命令する。
「あれ…。少尉殿。色っぽい話は?」
「良いんだ。済んだ。王都に向かう。帰還するぞ!」
ヴァイス殿に手を振る。
彼女のズボンに二人の子供が寄り添っている。
「しゅっぱーつ!」
「いくぞ!」「ゴー!ゴー!ゴー!、走れ!おら。ゴー!!」
兵の掛け声と共に先頭の犬を引っ張り走り出す。
掛け声で犬が動き出す。(おれはやるぜ!)
次々に走る兵が橇に飛び乗る…。
「全員の乗車を確認!!」
軍曹の声だ。
小さくなってゆくヴァイス殿を見る。
屋敷の門を出たもう姿は見えない。
全ての車列は揃っている。
「ヴァイス殿…。もう会う事もないだろう。」
俺は少尉だ、仕事をしなければ。
進路を向く。
「騎士の恋は実らない…。か。」
軍曹が呟く
すべての言葉は風の中に消えてゆく。
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(´・ω・`)ふう…。黒レ騎士完了。(ヴァイス・クーゲルシュタイン…。)Bカップで子沢山。
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