第61話番外地.花嫁オークション(花嫁側)4
じめじめした小屋を旦那様が調べて修理している…。
小屋の中は半分しか床が無い…。
小さな暖炉は一応ある。
地面に有るけど暖炉なんだろうか?
見た事無い形だけど王国式の暖炉なのかも?。
暖炉の湿気を取るために旦那様が火を起こしている。
わたし達は掃除だ。
取り敢えず水場を探す。
人が作った用水路が離れた場所に在った。
飲めそうな水ではない。
たぶん、家畜か農業用水路だ…。
困っていると、旦那様が銅のポットを出してきた。
「飲み水が出るポットだ…。」
「あ、はい。」
時々見る
どうゆう理屈で出来ているのか解らないけど。
魔法でパンを焼いたり、飲み水を出すのは魔法王国の基本みたい。
帝国でも魔法を使う人を見た事はあるけど、もっと仰々しいものだった。
なので魔法王国は下らない事に魔法を使っている…。
王国の兵士は毎日、一人で数百人分のパンを魔法で捏ねて魔法で焼いている。
鍋でシチューを作っている。
朝、作って三食同じ物を食べている。
旦那様は毎日、天気が良いと幌馬車に乗って何処かにいってしまう。
日が落ちる頃に帰って来る。
泥だらけの時もあるし。
埃だらけの日もある。
わたし達はお湯を沸かして待っている。
旦那様の身体を拭くのが仕事…。
序にわたし達も。
わたしは、小屋に農具と蕪の種が有るので
土を起こして小さな畑を作った…。
小石に頭位の石も出てくる…。
数日掛けて、ほんの一握りの小さな畑。
ココは畑に向いてない。
目の前に広がるこの切り株すべてを起こし、畑にするのは沢山の農奴が必要。
奴隷はわたし達しかいない…。
絶望だ。
ある日、旦那様が。
「明日は晴れる、出かけない、人が大勢来るので。馬車に積んである材料と大鍋で
「あ、はい。大勢?」
「たくさん来る。働いてもらう。昼食を振舞う、馬車の食材は使い切って良い。」
「昼食は…。”がなに?”」
「”ナタリーさん、明日は大勢の来客が有って、昼食を作らないと行けないそうです。馬車に鍋と食材が乗ってるって。”」
「はい”なにするの?”」
「”さあ…。”」
翌日、早朝から馬車に乗った男達がやって来た。
「アントン、場所は何処だ?」
「チャーリー、あの丘に南向きで建てたい。」
「縄は何処に張る?」
「ベクター、未だ早い。土魔法使いが来ないと…。」
新たな車列の荷馬車には大量の木材が積んでいた。
「おはようさん。施主は誰かね?何処に降ろすね?」
「俺です。あの丘に建てます。でも魔法使いが未だ来ていないんです。」
「ああ、良い場所だ…。そうだな、整地しないと資材が降ろせないな。」
「困ったね。」
「仕事が始まらないな。」
「先に柵から掛かるか?」
「おい。アレだろ。魔法使い。」
誰かが指さす先に、キャビンの付いた馬車が木々の間から見える。
「やあ、すまない道を間違えてな。急いでやるよ。」
馬車から顔を出して、帽子を振る男の人。
「「「よろしくお願いシャッス!」」」
男の人達が丘に集まると…。
平らに成って、杭を打ち…。
降ろした材木を並べて釘を打ち始めた。
わたし達も仕事に掛からなくては…。
家の荷馬車には組み立て式テーブルに大鍋三個。
移動式の竈、沢山の食材、肉もある。
コッチの木箱は…りんご?梨だ。
「”これ…。全部使うの?”」
ナタリーさんが驚いている。
「”男の人たちだから、沢山食べると思うわ…。あ、お茶が有る。先にお湯を沸かしましょう。”」
たぶん、休憩の時にお茶を出す心算だ。
「”シェリー。何人分作れば良いのかしら。”」
「”ナタリーさん…。”」
「おーい、瓦だー何処に置く!」
新たな荷馬車が森の中から出てきた。
「こっちだ、コッチ。」
男達が手を振っている。
その後も続々と荷馬車が増える。
みるみるうちに家が形に成って来た…。
大きな家、わたしが生まれた家に負けない大きさ。
そう言えばお祭りの日はお母さまも率先して包丁を握って料理を作っていた。
お父様は来客をもてなすのが仕事で女達は総出で料理やお菓子を作って…。
子供達は久しぶりに会う、いとこ達とはしゃいでいた。
「休憩だー。」「「「ヒャッハー!」」オブツは消毒だー!」
続々と男の人達が小屋に集まる。
お茶と梨を受け取る為に男が並ぶ。
「奥さんありがとよ。」「アントンの嫁さんべっびんだね。」「家の嫁さん達も負けてねえぞ!」
「「「何処の家も一緒だよ!」」」
笑う男の人達。
なんだろう…。
「よーし!休憩終わり。掛かるぞ!」
「「「ヒャッハー!」」」
ああ、わたし達を攫った兵隊さん達なんだ…。
食材を切って肉を炒めて出た油で小麦を焦す…。
味付けはどうするんだろ…。
「”シェリー。コレ、ブイヨン見たい。”」
油紙に包まれたブロックをナタリーさんが見つけた。
エールの香りが強い。
「エンリケ…。”なんだろ?”」
「”苦っ!エールの味がする。”」
手に付いた粉を舐めるナタリーさん。
少し削ってお湯に溶かす。
薄い、でも。
「”エールだわ。”」
「”シェリー。そうね、エールっぽい。大鍋に入れる?”」
「”たぶん、それ用に用意されたもの。”」
王国がエール作っているとは思わなかった…。
元々は、帝国南部の家庭料理だ。
鍋にお湯を入れて炒った小麦を十分に熔かす。
「”時間が無いわ、野菜を入れましょう。”」
「”そうね、このエールの元は何時入れる?”」
「”野菜に火が通ったらが良いと思う…。”」
「”溶けるかしら?”」
「”うっ、削って入れましょう…。”」
わたしは包丁で削って鍋に入れる。
シェリーさんは焦げない様に大きな木のターナーで鍋をかき混ぜている。
だんだんとエールの色に成ってゆく大鍋の中…。
遠くに箱型の馬車が森の中から出てきた。
引いているのはロバ。
看板に”毎日焼きたて正直者のパン屋”と書いてある…。
「パン屋が来たぞー!」
「昼だー!」「「おう、飯だ!!」」
馬車がこっちに来る。
「奥さん方、ご注文のパンだ。ダンナさんは何処だい?」
「あの…。あっちで家を建てます。」
旦那様が屋根の上で手を振っている。
「おお、そうかい。ご注文のパンですー!」
パン屋さんが叫ぶ。
手が空いた男の人達らが続々と小屋に向ってくる。
旦那様が走っている。
「すまない、待たせて。」
「いえいえ、お忙しいところ恐縮です。ご注文の品です。ご確認を、新築のご家庭にはご領主さまの命により。我が商会が成り代わりお菓子をお送りいたします。」
「ありがたい、ご領主さまに感謝の言葉をお伝え下さい。」
お金を出す旦那様。
「はい、確かに承りました。」
お金を受け取り確認するパン屋。
「ご領主さまからお菓子を頂いたぞーー!!」
「「「ヒャッハー!」」」
パン屋の馬車から、机が出て鉄トレーに並んだ焼きたてのパンが並ぶ。
袋に入ったクッキーも。
一つづつ受け取る男達。
出来上がった大鍋のエールに皿を持った男達が並ぶ。
「やったな。アントン。」「今日中に完成は見えたな。」「あの狭い小屋とはおさらばだ。」「明日は俺の家を頼むぜ。」
「ああ、ありがとう。」「もうひと頑張りだ。」「そうだな。」「ああ、明日もきっと晴れる。頑張るぜ。」
旦那様が大鍋から出された皿に盛る。
一人ずつ声を掛けてくるので答える旦那様。
男の人の仕事。
王国も帝国も変わらないのね。
最後に残ったエールを夫婦で分け合う。
「美味いよ、シェリー、ナタリー。」
「はい、ありがとう。」
「ありがとうございます。」
うん、この味だ。
旧帝都風のエールだ…。
なんで、王国にあるんだろう?
「うめぇな。」「うん、エンリケたっぷりだ。」「家のは薄目だからな。」
昼食が終わると仕事に掛かる男の人達。
大鍋を洗い終えて干している。
鍋やテーブルは借りた物で次、借りる人が決まっているそうだ。
あっと言う間に家が出来てしまった…。
今、細かい所を直している。
家の周りに柵が出来てる…。
日没近くに成ると続々と男の人が馬車に乗って帰って行った。
誰も居なくなると。
わたし達と旦那様は未だ小屋にいる。
「家は出来たが明後日しか入れない。未だ、暖炉が固まってない。」
そんな…。
「”え?なんって?”」
「”シェリーさん、未だ暖炉が固まってないから家に入れないって。”」
「”そう…。良かった。家が一日で出来る訳ないもの…。”」
そう言われるとそうだ…。
「”明日は朝から出かける。他の人の家を建てる。”」
たぶん、大鍋を受け取った人の家を建てるんだ。
「はい、わかりました。」
「次の休みの日には…。出かける。ついて来い。家具を買いに行く。」
「はい!”シェリーさん次の休みに家具を買うんだそうです!”」
「”え?何処に行くの?服も欲しいわ。”」
確かに…。
誰かの古着とか布と針を渡されたけど、わたし達では服までは作れない。
「”そうですね…。”旦那様、服が欲しいです!!」
思わず叫んでしまった。
「服…。解った。必要な物を書き出しておいて。高く無ければ買おう。」
やった!
服だ!
やっぱりわたし達は奴隷じゃない。
夫婦で一家なんだ…。
(´・ω・`)ストックホルム症候群…。
(#◎皿◎´)流石、異世界。
(´・ω・`)…。(違うぞ。)
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