第62話番外地.花嫁オークション(花嫁側)5

それから、大きな家で生活して…。

子供が生まれた。

シェリーさんは男の子でわたしは女の子を産んだ。

出産は昔、何度も立ち会った事が有るので安心して産んだ。

家では女達の仕事だ。

シェリーさんは見た事が無いそうで不安そうだった。

わたしは馬や奴隷女で散々見て来た。

牛の出産と同じだわ…。

そう思ってた、けどシェリーさんの出産の痛がる姿…。

今まで見た事無い。

不思議に思ってたが、わたしで産んで解った。

しゅごい…。

気持ちいぃ。

あひっ。早く次も産まないと…。

凹んだわたしのお腹を見て心がざわざわする。

シェリーさんもきっと同じ気持ちのはずだ。

生まれた子供達は二人で交代で世話をしている。

わたしは胸が張って痛い…。

幸い、子供達の食も良くどんどん飲んでくれる。

困った事に、シェリーさんのお乳の出が悪い。

わたし達は交代で子供達にお乳をあげている。

今は捨てるような事に成ってない。

わたしは気にしていないけど、シェリーさんはお乳の出が悪いのは気にしている様子だ。

授乳中に子供が泣くから…。

お乳の出が悪い時にはマッサージすると学院で学んだ。

”将来の旦那様にやってもらいなさい…。”

真面目にシスターが話すので教室の生徒は半分が笑いをこらえて、半分は顔を赤くしてた。

懐かしい、もう今は夢の中の世界でしかない。

シェリーさんは自分でマッサージしている。

呪いの効果で…。

声を押し殺して…。

気絶して終わっている。

旦那様にやってもらいなさい。



屋敷の周りの切り株だらけの農地はそのままだ。

草に埋もれつつある。

時々、男の人たちがやって来て作業をしている。

主に農地を策で囲ったりしている。

馬でも飼うのだろうか?

ある日、大勢の男の人たちが来て…。

厩舎をつくっていた。

わたし達は子供を背負い、お腹を抱えて昼食を作っている。

相変わらず直ぐ一日で完成すると…。

沢山の羊がやって来た。

こんなに大量の羊だと世話も大変だ…。

そう思ったが、わたし達も旦那様も特に何もしない。

大きな白い犬達が羊たちを守ってる。

旦那様が時々厩舎の水桶の量を気にしている程度だ。

その水桶も自動で給水する仕組みらしい。

シェリーさんは犬を怖がっている。

わたしは昔、家で飼っていた犬を思い出した。

お父様の言う事しか聞かない犬で…。

罪を犯した奴隷を良く噛み殺していた。

この犬は頭が良い犬の様子で、食事を与えなくても策を飛び越えて。

森で魔物を嚙み殺し引き摺って勝手に食べている。

でも、クッキーが大好きで。

小さな子供達があげると犬も喜ぶ。

農地に草が無くなると羊たちと何処かに行ってしまう。

子供達が悲しむが…。

スグに機嫌が良くなった。

切り株から茸が生え始めたのだ。

旦那様が言うには食べられる茸で収穫して干して町で売れる。

冬の保存食にしても良いという。

そう、もう冬…。

二人目がお腹に居るのに…。

祖国のお父様やお母さまはどうしているのだろうか?

わたしの行方を探さないのだろうか?

わたしが攫われ結婚して子供が居るのを知っているのだろうか?

もうわたしは家に帰る気が無い。

このお腹の子が産まれるのをわくわくして待ってる。

冬の間は雪で何もできなかった。

これでも去年より雪が少ない。

春になると子供が生まれて、又、賑やかに成った。

切り株が朽ちてしまった。

もう、茸は生えないだろう。

農地に草が生え。

草原に羊達がやって来た。

直ぐに草がなくなり、丸裸にして帰っていく。

そして、大勢の男達がやって来て…。

今度は動く大きな小屋の様な物に乗って来た。

何台も、馬も、ロバも要らない。

自走する大きな…。

鋼鉄の…。

「おい、ディック大丈夫か?」

「おう、安心しろ。散々教習所でぶつけて来たぜ!!」

「後で俺にも乗せてくれ。」

「良いぜチャーリー。練習だ。」

「おい、チャーリー自分の畑でやれ。」

「任せろアントン。コッチの準備は万全だ。」

「じゃあ行くぜ!ベクター!」

「良し来い!石灰窒素は満タンだ!」「よっしゃ!」「行くぜ!」

「「「ヒャッハー!」」」


大きな小屋の様な鋼鉄の…。

人が乗った機械が連なり大きな音をたてて動き出した。

地面を広く深く掘り進めながら、ゆっくり前進。

その後に続く機械がゴロゴロと音をたてながら、吐き出された石や木の根を拾っている。

木の根は粉砕して畑に戻している…。

最後の機械は更に細かく土を耕し、時々混じる煙から、何か灰の様な物を土に混ぜ込んでいる。

人が歩くより少し早い速度でどんどん進み、切り株と草だらけの農地を吞み込んで、耕された状態に変わってゆく…。

遥か向こうの柵まで行くと止まり、折り返しで帰ってきた…。

「端から順番に畑に開墾する機械なんだ…。」

旋回中に止まり、目の前の柵の外に地響きをたてて岩や石が吐き出された…。

色々な大きさの石、頭より大きな岩が小山に成っている。

排出がおわると進み始め。

妹がパンを齧る様に徐々に切り株の荒れ地が耕された畑へ…。

この速度だと、今日一日で目の前の切り株の草原は耕作可能な畑に変わってしまう…。

農奴を何十人も使って数年かける仕事が一日で…。

「こんな物有ったら農奴、要らないじゃない…。」

帝国は勝てないかもしれない…。



(´・ω・`)番外地終わり。次回、悪魔との戦いが始まります。

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