第56話番外地.アルカンターラ軍帝都守備隊2

(´・ω・`)年忘れ企画!!


街道を北東へと急いで進む…。

アルカンターラへは馬で8日の距離だ。

途中の町では北部工廠から逃げ出した工員や工兵を率いた工兵大佐が居たので情報を収集できた。

「納品に来た町の職人が町に帰ったら途中、盗賊と思われる兵士に商人の馬車が捕まっているの見て戻って来た。」

「こちらの守備隊兵を向かわせたら、敵は何処かの軍隊で農民の反乱には見えなかった。旗は無く鎧は帝国軍の物だった。」

「守備隊は丘に移動して偵察した所、見ただけでも1個師団以上で、城塞を完全に包囲する構えであった。今から10日前の時点では町は籠城していた。」

「対抗できる数では無いので、帝都と近くの駐屯地に伝令を出した、一番近くの駐屯地が攻撃されて居るのを見て伝令を諦め兵が帰って来た。」

「敵の進路上になるので工廠を放棄して人員だけココまで避難させた。」

元々戦闘部隊では無い工廠の人員だ。

工兵大佐は十分な仕事だ。

かなりの部隊が城塞アルカンターラを包囲している事に成る。

何処の貴族の兵だ?

簡単には城塞は落ちないのが常識だ。

情報を正確にする為に更に前進する必要がある。

敵が何者かを知るのだ、そして何処に居るのかを察知するのだ。

1個騎兵小隊をアルカンターラの都へ偵察に向かわせ。

我々は、街道を離れ、進む。

敵が帝都を通らずに移動したなら、街道の近くの学校関係者が目撃しているハズだ。

貴族の子女が通う学校なら旗を見て何処の者か解るだろう。

3日掛けて移動した学校は”神聖レイシェル女学院”と言う名だ。

丘を登り到着した校門は破壊されていた。

騎乗したまま校庭に進む…。

授業中にしてもおかしい、学校は無人の様子だ。

「誰か居ないか!俺は北方辺境アルカンターラ伯軍第二騎兵連隊のジョゼ・シャルヴィエール大尉だ。」

窓から顔を出す生徒も居ない…。

休みか?馬鹿な全員寮生活のハズだ。

「誰か!誰か居ないか!!」

「無人の様子ですね…。」

副長が呟く。

「いや、ソレは無いハズだ、警備の騎兵も居ると聞いていた。」

「もうし…。アルカンターラ軍の方ですか…。」

初老のシスターが校舎から出てきた。

随分と警戒している。

「ああ、そうだ、近くを軍隊が通らなかったか?10日いや、20日程度前だ。」

「私は学院長です、生徒が…。生徒が連れ去られました。」

「なに!」

バカな、いくら目撃者でも各貴族の娘を攫ってまで情報を隠蔽するなぞ…。

紳士帝国貴族のやる事ではない。

「生徒は…。若いシスターも全員、ロジーナ王国の…。ビゴーニュ辺境伯の兵士に連れ去られました。」

「ロジーナ王国!ソレは本当か!」

くそ!魔法王国の侵攻だ。

「そう本人が名乗りました、ビゴーニュ辺境伯は真っ黒な騎士の大男で…。オットー・フォン・ハイデッカーと言えば解ると。」

「オットー・フォン・ハイデッカー!!」

あのデブの大男だ!

ニタニタ笑いが直ぐに出てきた。

「何時だ!何日前だ!!」

「来たのは5日前です。最後に兵を引いたのは2日前…。の昼に出ました。」

「くそ!!急いで帝都に伝令を出せ!敵はロジーナ王国軍による軍団規模での越境侵攻!指揮官は魔人オットー・フォン・ハイデッカーだ!」

「バカな…。」

「魔人…。」

「アイツか。」

古参の士官に動揺が走る。

「皆さん、ご存知なのですか…。」

「ああ、知っている…。10年前の東方遠征軍を一人で崩壊させたロジーナ王国の大魔法使いだ。」

当初の戦況研究では敵の城塞ストラポルタ兵の精強さに目を奪われたが。

後々、資料を編纂した結果。

あの戦いの中心は魔法使いで、全てのロジーナ王国魔法兵の頂点があの大魔法使いだったのだ。

「そんな…。あの方が…。」

デブの大男の魔法使いが、我々の敗因の根源だ…。

「申し訳ない学院長殿、我々はその軍を追う。」

あのデブが全ての戦場を描いたのだ…。

「生徒を…。生徒をお願い致します。エルヴィーラ様が…。エルビーラ・アンネリーゼ第5皇女様も連れ去られました。」

泣きはらす学院長…。

「くっ!」

恐らくもう既に…。

いや、止めよう、まだ決まった訳ではない。

実際に10年前に民兵として捕虜になったシスター達は無事に帰ってきたのだ。

「学院長殿、我々は敵を追跡します、おい!追撃戦だ!行くぞ。」

「「「了解!」」」

アルカンターラ方面に偵察に向った小隊と合流する為、目標の丘に到着した所…。

既に偵察を終え到着しているハズの小隊は未だ到着していなかった。

「合流地点を間違えたのか?」

そんな筈はない、平時での演習で散々利用した丘で目標物の大木が有る。

木々の影で解らないが都まで、馬で半日も掛からない。

「まあ良い。馬を休憩させろ、俺はアルカンターラを直接この目で見てくる。」

もう既に草を食んでいる馬も居る。

「はい!ドレほど兵を付けますか?」

「1個小隊だ。」

「はっ!準備させます。」

移動した先、アルカンターラの都が見える丘を徒歩で登る。

木陰から覗くと…。

「何も居ないぞ…。」

「そうですね…。」

「住人らしき者が…。城の外で農作業を行っています。」

何か騙された様な話だ。

魔法なのか?

「接近するか…。」

「危険です。」

軍曹はあの大魔法使いを知っているので慎重だ。

「解った。連隊をココまで前進させろ、俺は接近してみる。集合場所には小隊との連絡の為に連絡員を残せ。」

普段は笛で連絡が取れる距離だが、敵が何処に居るか不明な状況では使えない。

不便だ。

「了解!」

騎兵分隊を率いて丘から姿を現す…。

真っ直ぐ城塞へと近づくと…。

遠くの住民達が一斉に逃げ始めた。

「おーい!!」

叫び声を掛ける。

最早、姿を現したので遠慮しない。

馬の脚で直ぐに逃げる住人に追いついた。

初老の男を分隊が馬で包囲すると男は青い顔で命乞いしてきた。

「命だけはご勘弁を…。」

「おい、お前は名は何という。何が起きた。」

軍曹が誰何するが…。

老人は錯乱している様子だ。

仕方がないので名乗る。

「我々はアルカンターラ伯軍のジョゼ・シャルヴィエール大尉だ、何が起きた。教えろ!」

「あ、アルカンター…。やった!味方だ!!やった!やった!!」

「何が起きた。我々は都を包囲する敵が居ると聞いてやって来た!!」

「17日前にいきなり何処かから敵の軍隊がやってきて、あっという間に城の中に攻め込んできた。若い女と食料、家財道具を全部持って行ってしまった。」

「何だと!!」

「城兵は!!」

驚く兵達。

「皆、殺された。」

吐き捨てる老人。

「バカな!!」

留守を預かる城兵は防衛するのに十分な兵力だった。

「くそ!!」

強力な城壁もある、そう簡単に突破できない。

「敵の兵隊は死んでも生き返る…。傷も直ぐに治ってしまう。数も多かった。戦争に参加した男達の死体は今でも通りに山と積まれている。」

くそ!あの大魔法使いが何かを行なったのだ…。

まともに戦う事が出来ない様な…。

「一昨日に最後の軍隊が離れて、今、町では食い物が無いので皆、町の外へと食い物を探している…。」

「解った、ご領主の館はどうなった?」

「真っ先に落ちた…。旗が降ろされ焼かれるのをこの目で見た。」

「我々の騎兵小隊を見なかったか?」

「いや…。だが、最後の軍隊が味方の軍隊と戦ったと言う噂は町で聞いた」

「よし!!全隊集合の笛を吹け!ココに集めろ!」

小隊は撤退する敵を追っているのだ。

笛が吹かれると、逃げ去った住人が戻って来た。

帝国軍の笛は聞くことが多いからだろう。

町からも走って来る者が居る。

騎兵連隊が揃うのには時間が掛かるが…。

馬上で軍用手紙をしたためる。

司令部への報告書だ。

2枚書かないと。

読み返していると息を切らして出てきたのは細身の初老の男だ。

「アルカンターラ商業ギルドの副長です…。ギルド長は食糧倉庫のカギの提出を拒否したので敵兵に殺されました。」

「っ!そうか。」

「現在、アルカンターラの町は食料が有りません。このままでは餓死者が出ます。」

「解った、帝都に伝令を出す。」

絶句するギルド副長

「ソレでは…。」

馬での8日の距離が有るのだ…。

「だが、街道上に被害の無い町は有る。ソコのギルド長への手紙なら伝令に持たせても良い。」

民間同士の話なら何でも無い。

「ありがとうございます、急いで手紙をしたためます。」

「ああ、急げ、直ぐにでも敵の追跡を行いたい。できれば帝都へ被害状況が解る手紙も欲しい。」

「はい!」

走るギルド副長。

連隊が集合すると…。

「伝令を二名だせ。一人は来た街道を進め途中、民間の手紙を各ギルドに渡せ。もう一人は、別の街道を迂回して帝都に届けろ、双方街道上の状況を司令部に報告せよ。」

複数伝令を出す、確実な方法だ。

「「了解!!」」

ギルド副長が門から走って来る。ゼーゼー

「こ、これを…。各町の商業ギルドへ…。中のあて先は町の名前に成っおります。」

肩掛けカバンを差し出すギルド副長。

街道を進む予定の騎兵が受け取った。

「では、我々は敵を追撃する!!」

「「了解!!」」


街道は未だ新しい、夥しい量の轍が刻まれていた。

追撃の肥爪の音も軽やかに進んでいく。

途中に未だ新しい野営の痕跡も残されている…。

追いつける。

追いついて見せる。

「大尉殿、馬が…。」

俺の馬は大丈夫だが、体力の低い馬は泡吹き始めている。

「くそっ!この先に水場がある!小休止だ!」

付いた水場では困った事が起きていた。

「草が無い!」

敵も利用したのだろう、草原の殆どの草が無くなっていた…。

大軍で移動した後ではよくある事だ。

馬は草でも喰える。

「泉の水質は問題ありません。」

軍曹が報告する。

「水を飲ませて、移動する…。草のある所を探せ。」

「了解!」

すきっ腹の馬を操り、村が見え始めた。

敵兵の姿は無い…。


時間が掛かるが…。

村に一個小隊を偵察を出す。

我々は村を半包囲して知らせを待つ…。

偵察小隊からの知らせで、村に入り。

村長から報告を受ける。

現状は略奪を受け。

食料、家財道具全て奪われた。

家族…。村の若い娘は全て持ち去った後だった。

奴らは多くの娘と家畜を連れて行った。

村長の話では”食事は敵軍から受け取っていたが昨日の朝を最後に居なくなった。”

その為、”食料を分けて欲しい。”だそうだ…。

徹底した略奪だ。

「少尉、我々の食料はどれほど有るか?」

「切り詰めればあと10日でしょうか…。飼葉を与えないと馬は走れません。」

牧草を集める事を条件に一部の食料を村に渡す。

飼葉の収集で半日掛かる。

その日は村で過ごす事に成った。

日の出前に村を出発した我が中隊は、街道上の移動を避けて町村を遠くからの偵察に切り替える。

時々交差する街道は多くの馬車の轍や家畜、人の足跡が一杯だ。

全て新しい物で東に向かっている。

追いつけない。

「大尉殿、この先は荒野で飼葉も水も有りません。」

あと一日…。

中隊が走り続ける事ができれば…。

草は残っているが、急速に隊の馬の体力が下がっている。

連日の移動でやせ細っているのが目で解る。

「くそっ!馬であと一日の距離なのに!!」

あと一日、馬で追いかければ追いつくのだ…。

くそ!馬では魔法使いに追いつけない!!


奴らはどんな魔法を使っているのだ!!





(#◎皿◎´)只の水が出る瓶と魔法の収納袋だ…。

(´・ω・`)後…。キャベツ(積載量無視できる時点でチート)

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