第39話29.オットー兵団16

取り合えず先に温泉の町に向かった。

ビゴーニュ商会からの品は受け取った。

もう既に夕暮れ近い。

クーリョとキーファと共にまともな夕食を食べよう…。

転送馬車は行政庁舎のモータープールにあるので。

軽い腰つきで仮の教団本部に向かう…。

元は作業員宿舎飯場なので同じ構造で大食堂も風呂(沸かす方)もある…。

木造、2×4構造で同じ建物がそこ等にある。

中は教団でいろいろ改装している様子だ。

教会堂として使われている元大食堂へ足を進める。

「ご領主様。」

中に入るとクーリョが教団の娘達シスター達と掃除をしていた。

「ああ、すまんな。作業中に、キーファは居るか?」

「はい…。奥で書類仕事です、案内します。申し訳ありませんがココをおねがいします。」

「「「はい。」」」

元気に答える娘達。

クーリョの先導で元宿舎の方に向かう。

同じようなダァーの並ぶ廊下を歩き一つに足を止める。

ノックの後…。

「クーリョです。ご領主がお見えになりました。」

「はい。どうぞ。」

ダァーが答える。

クーリョが開けたので入る。

「あら、司祭様。」

「いきなりの訪問、申し訳ない。急に休憩を取ったので屋敷等を廻っている…。何か変わりないか?」

「いえいえ。何時でもお越し下さい。」

「そうか…。少々、垢を落としたい。夕食も一緒にどうだ?」

お風呂に入るのだ…。

「それは構いませんが…。」

返答に迷うシスター…。

なにか都合が悪いのか?

目で視線を交わすナンバーズ。

「キーファさんは悪阻が終わった頃です…。」

「うん!」

聞いてないぞ?

「申し訳ございません…。この子に父親は秘密にしようと…。教会の子として育てたいのです…。」

両手を臍の下に触れるキーファ。

「俺に秘密にして居たのか?」

そんなの…。秘密にできないだろ?

風呂でヤリまくったのは一度や二度ではない…。

全員知っている。

「この子は特別でも何でもないのです…。」

それは…。

キーファは完全に自分の子として育てる心算だ。

いや、教会宗教の子だ。

「俺は…。子が望めば何でも与えてやる心算だ。本人の意思の問題だ。」

キーファが子を貴族にしたく無いのは理解した…。

だが、宗教で囲うのも大概だぞ?

「では…。この子が自分で決めるまでは、私の我儘を聞いてください。」

「それぐらいは…。いやいや、教育を与えないと。」

教会ココにも教師はおります。」

その教師が思想的に偏っているから警戒しているのだが…。

キーファの目は意志の固さを物語っている…。

宗教洗脳色だ。

説得できそうにない。

「将来、王都の魔法学園に進むことが条件だ。」

留学して多くの物を見て見分を広げるのだ。

無論、観た物を客観的に観察、考察、推理できる基礎が本人に無いと洗脳被れるだけで終わる。

”〇〇出羽守~♪”の完成だ。

ソレは個人の資質だから仕方がない。

ソレも本人の選択だ。

ソレから決めさせても悪くない。

俺の子だから魔法特性は有るだろう。

Dタイプか、司書ちゃんタイプかもしれんが…。

「解りました…。」

譲歩に乗るキーファ。

「俺は…。然るべき時期に本人から聞かれたら答える…。良いか?」

「はい。それは仕方がないと思います。それまでは秘密ですよ。」

シスターの秘密だ…。

「解った。では風呂に入ろう。」

お風呂で流し合いをするのだ…。

「はい…。お背中を流します。」

「ああ、流してもらうだけだぞ?子が大事だ。」

クーリョが代わりに答える。

「ご安心ください。教授、私が相手をする。」

うむ、流石未亡人メイド…。

「ああ、それでは行こう…。露天風呂へ。」




パコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコヘコヘコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコウッ!パコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコマンボッパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコタコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコパコ



すっかり賢者モードになり

身も心も清々しい気分で食事を取る。

つやつや、クーリョとキーファでテーブルを囲んで豪華な…。

いや、普通のパンと肉入りシチューとサラダだ。

テーブルに乗っている…。

ソレだけでも戦闘食糧の毎日からでは随分と輝かしく見える。

一応、教会関係者に合わせる。

「では、冥府の王に感謝を。」

「はい、「冥府の王さまに今日の魂を送り糧に感謝します。」」

俺が司祭だと言うことだ。

早速、シチューの征服に掛かる。

うん、旨い。

何時もの、ぼそぼその…。

ソレでいて硬い干し肉を戻した薄いシチューではない。

生の肉を煮込んだ…ひと手間のある具材。

味が付いているのが嬉しい。

「司祭さま…。」

キーファがパンを千切りながら話す。

「なんだ?キーファ。」

「国境は大変なのでしょうか…?」

玉虫色な質問だ。

女は普通、戦の事男の仕事は聞かないルールだ。

「いや、特に問題はない。」

玉虫色で答える。

重要なのは心配させないことだ。

「噂では…。女性を多く捕らえて居ると。」

屋敷と城壁の村の間で連絡を行っている。

人の口に戸は立てられぬ…。

略奪も人攫いも悪いことだが…。

この世界では普通の戦争仕事だ。

「…。」

答えに困り、パンを口に入れる。

同じ女。

人の道を外れた酷い事には非難したいのは解る。

宗教の本質は慈悲の心だ。

咀嚼しながら答えを考える。

「確かに…。しかし、奴等は異教徒だ。」

「はい。そうですが…。」

「そして、我が領民達の妻として子を産む事になるだろう…。」

「は…。あ?」

「その子供達を正しい道に導いて欲しいのだ…。」

「ええ、そうですね。お任せ下さい。」

元気に答えるキーファ…。

上機嫌だ…。

宗教…。怖いな。

無言の食事が進み…。

「ご主人、失礼します。」

食事中のダァーがノックされて空気が変わる。

この声は…。

「ブランどうした?」

犬耳メイドが遣ってきた(狼です。)

復活したならもう一度風呂に入るか…。(激しいシシオドシ。)

「お屋敷の方にカール騎士団を名乗る馬に乗った鎧のニンゲンが…。」

「カール…。何人だ?」

カール騎士団は…。

久しぶりに聞く名だ。

ストラポルタ周辺戦いの後、測量と開拓開墾で便宜を計って貰った地元の騎兵集団グンマーだ。

スクロールを持っていないのに”ウェーイw””ウェーイwww”と五月蠅い長男爆走族だ。(次男三男も居る。)

最後に会ったのはカールとジョンの結婚式だ。

お互い酔っ払って模擬戦殴り合いを制した思い出だ。

「三十と…。もう少し。群の先頭はベリエスと名乗った。」

知らん名だが…。

カールが領地から寄越したならかなりの速さだ…。

どうやって来たのだ?

「…。」

「こう言っている。ご領主さまにお会いしたい。陣中見舞いの品を持ってきた。」

ブランが紙を二枚、出した。

受け取る。

一枚は真新しい紙でスパスの字だ。

”ベリエス・バーゴップ隊長が率いる騎兵39人の来客で対応を如何すれば良いのか?”と尋ねる文だ。

もう一方は細かい折り目の付いた汚れた紙だ。

元は電信らしく。

軍用省略符号が使われ、文字数が圧縮されている。

内容は”カールよりオットーへ一個小隊を送る、増援(中隊)を王都に向かわせている。必要ならば返答を願う。”だ。

「カール…。」

あいつ本気で援軍を送って来た…。

状況を考えるに、カールは電信で兵に命令を出している。

王都からの電信情報を受けての行動だ。

カールとジョンは無線の…。即時情報伝達の重要性をよく理解している。

領主バージェル公に成ったカールから、無線機の購入を強く打診された…。

安い物では無いので断ったが。

結局、根負けして無線機ユニットを数セット売ってしまった…。(その代わりに”ウェイ”のスクロールは売らなかった。)

恐らく王都の屋敷の兵を掻き集めて偵察に差し向けたのだ…。(半分当たり)

正直、カールが一個騎兵小隊も王都に配備させていたとは驚きだ。

しかし困ったな…。

援軍のルールは面倒な事が多い。(接待戦争。)

しかも、今のモヒカン達は騎兵は全て敵だと認識している…。

バージェルの新領主カールへの配慮も必要だ…。

「戦地に来てもらおう、屋敷の倉庫にある(モヒカン)ヘルムを渡せ。」

電信風の文面を書く取り繕う…。

内容は”現在、前線なのでお会い出来ない。しかし、貴殿らとは是非とも戦地で轡を並べたい。申し訳ないが最前線に来て頂く事になる。”だ、

スパス向けの手紙には”今日は屋敷で疲れを癒してもらい、道案内の兵を用意、敵味方識別のヘルムを装備して取り合えず西の城壁の村に向かってもらうこと…。”

コレで何とかなるハズだ…。

城壁の村からは空の馬車の車列の護衛を行ってもらおう…。

上手く行けば、敵城塞アルカンターラ攻略に間に合うハズだ…。

「この紙をスパスに渡せ。」

「はいご主人。」

盛大に尻尾を振る、犬耳メイド(狼です。)

動かない。

「明日、騎士団を送り出したらスパスとココに来い…。報告を聞く、その後ゆっくり温泉に漬かろう。」

「はい。解りましたご主人。」

大人しく引き下がる犬耳メイド…。(狼です。)


ふう、明日も激戦だ…。(戦友…。)


|皿●´)…。

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