第33話23.オットー兵団10

「への4番より通信、敵駐屯地を制圧を完了、抵抗は軽微。状況が説明できないのでご領主さまに来て判断してほしい。との事です。」

状況が説明できないとはおかしな話だが…。

への4番はダンが指揮しての敵駐屯地への威力偵察中だ。

我々はその支援攻撃為に移動中で未だ後方にいる。

早々、への4番だけで簡単に占領できたのは不思議だが…。

まあ、良いだろう。

「わかった向かおう。」(コーホー・コーホー)

馬車に入り一旦、我が故郷に戻る…。

と言っても、城壁の村だ。

馬車から出ると…。

城壁の門を続々と馬車が潜り、略奪したお宝が並べられて兵舎に収容されていく。

捕まった女も牢屋に押し込められている。

アヘモン用途の女も随分と増えた。

空に成った馬車は又、城を出てゆく…。

輸送は順調だ…。

通信所へ向かう。

「ご領主さま…、」

無線手のモヒカンに尋ねる。

「特に異常はないか?」(コーホー・コーホー)

「はっ!異常ありません、スパス様からの知らせもありません。」

「そうか…。」(コーホー・コーホー)

そろそろ第一報が王都に届くころだ。

「解った俺はへの4番へ向かう。」(コーホー・コーホー)

俺の現在地が表示板に書き加えられる。

「はっ!こちらへどうぞ!」

4番の馬車に乗り込む。

馬車を降りた先は山脈の麓、はげ山の中の谷合の村…。

にしては随分と貧相な村だ。

軍事拠点にしては少々おかしい。

破壊されたばかりの二重柵に監視櫓、占領した駐屯地の中に入るとモヒカン達が死んだ新鮮な帝国兵を集めて穴を掘っている所だった。

埋葬する前に勧請してやろう…。

「ご領主さまこちらへどうぞ。」

出迎えのモヒカンダンだ。

「おう、わかった。」(コーホー・コーホー)

向かった先は木造の長屋前に腰を下ろす男達…。

随分と小柄で小汚い髭面だ。

全員、男で子供と言ってよい背丈で年齢はバラバラだ。

顔色が悪い、しっかり飯食ってない顔だ。

マスクを取って叫ぶ。

「”お前らは何者だ!ココで何をしていた。”」

「”わしらは、昔。故郷を追われて集められた者だ。”」「”移動しながら土いじりじゃ”」「”ココに来てから木を伐り出す仕事を命じられた。”」

「”全員小人族の男ばかりか?家族は?”」

「”全員ドワーフじゃぃ”」「”離れ離れに成った。”」「”死んだ者も多い。”」「”妻も娘とも、もう何年も会って居ない。”」

なるほど…。帝国軍の職業訓練所強制収容所か。

「ここの資料はあるか?」

ダンに尋ねる。

「は!指揮官は死にました、指揮所は占領済みですが…。手付かずです。」

「後で調べよう。食糧庫は?」

「はっ!確保済みですが数が少ないです。」

「そうか…。」

町の資料には各収容所への補給量が書いて在った。

そこから兵力を導き出したが…。

こいつ等の飯も含まれているなら過剰兵力だったか…。

「”なあ。わしらを助けてくれるんじゃろ?”」「”ワシ等を故郷に返してくれ。”」「”ここで皇帝の為に死にたくは無い…。”」

いや…。この人数であの食料は足りない。

「”我々はこのまま移動する。帝国の駐屯地を撃破する為だ。”」

「”助けてくれんのか!”」

ざわ・・。ざわ・・。

ドワーフ達が騒めく。

「”では先ず名乗ろう、我が名はビゴーニュ辺境伯だ。この東の森の果てのロジーナ王国の貴族だ。”」

「ロジーナ王国”そんな国が在るのか?”」「”蛮族の地だと聞いたぞぃ?”」「”しっ静かにせぃ”」

更にざわ・・。ざわ・・。ざわ・・。し始めるドワーフ達。

「”我々の目的は帝国軍の撃破であり、土地の占領ではない。我々は略奪と敵兵の撃破を達成したら、わが領土に帰還する。”」

「”撃破…。帝国軍を?”」「”しかし…。”」

死んだ新鮮な帝国兵を引きずるモヒカン。

絶賛、剥ぎ取りタイムだ。

「”ワシ等はどうなるんじゃ!!”」

「”俺も困惑している。我々が入手した資料ではこの様な駐屯地が未だ幾つかあるらしい。”」

「”なんじゃと!!”」「”そこに妻が…。”」「”妹が…。”」

「”故郷を取り戻すことは出来ないが…。どうだ、俺の配下に成らないか?俺の為に働く事を誓えば我が領地に村を作る事を許可しよう。”」

「”なんじゃと…。”」「”故郷を捨てろと言うのか?”」

「”無論、我が兵の進撃の結果、お前等の家族を取り戻した後の話だ…。お前らが開墾した土地は村の物としよう。税は10年間免除してやる。”」

土地を持つなら税金を取る…。

領主が所有者を保護する義務が発生する。

「”…。”」

黙るドワーフの男達、目は思案ではない視線の先は積み上げられた帝国兵の山…。

もう一押しだ。

「”どうした!ドワーフ共!帝国軍を倒し、家族を奪い返せ!!”」

「”…。”」

怒りだ、理不尽に奪われた者の怒りの目だ。

「”妻や子、母、姉妹を助け出すのだ!!敵は帝国だ!武器を取れ!”」

無言で立ち上がり、樵道具を手に取る奪われた男達。

「”俺の為に働け、そうすればお前達の故郷を作ってやろう。我が麗しのビゴーニュは、もっと豊かな場所だ。”」

豊かにしている最中だが、言葉のあやだ。

大ハンマーを掲げ叫ぶ!

「ヒャッハー!」

斧を両手に叫ぶドワーフ達。

「「「ヒャッハー!」」」

新たな兵隊ゲットだぜ!!


だがその前に飯だ、取り合えず飯にしよう

腹が減っては戦ができん。

ソレが翔ちゃんの知識だ。

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