第22話番外編.夜の印無8

(´・ω・`)…。(いきなり印無)


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オレの名前はアントン。王都の靴屋の長男で冒険者だった。

何の因果か、今ではお貴族ビゴーニュさまの兵隊だ。

オレの周りには仲間ダチが居る。

八百屋で剣士ベクター。

桶屋で弓使いチャーリー。

肉屋でナイフ使いデック。

俺達は兄弟の誓いを立て、冒険者チーム。光の家族マズ夕゛ファミリアを名乗った。

冒険者ではショボい仕事ばかりだった。

とても栄光なんて姿じゃねぇ!

だせぇ仕事だが下手は打たなかった。

お客さん依頼主に失望はさせない!

そうやって少しずつ名を挙げた!

クラスAの冒険者マルダーさまの目にも止まった。

マルダーさまの紹介でご領主さまにも会えた。

ご領主様は本物の大魔法使いで万の兵隊も踏みつぶす。

マジだ、眼光が違う…。

お陰で今は何の因果かお貴族の兵隊だ。

しかも、俺達の仕事場は森の中。

樵仕事で、魔物とも戦う。

キツイ仕事で危険な事ばかりだ。

だが俺達は腐っちゃいない、チームは絆で結ばれている

ご領主様は気前が良い。

飯も豪勢だ!暖かいシチューに肉がゴロゴロ入ってやがる!

腹いっぱい喰わせてくれる。

俺達には触れる事も出来ないような高価な道具をじゃんじゃん出してくれる。

御代わりはできないが大盛は自由だ。

しかも、ご領主様の命令は簡単だ。

”森を征服しろ!働いた分だけ土地をやる。”だ。

良いぜ、俺たちゃ一旗上げる男達だ!!

俺達の仕事振りを見せてやる!

誰にも邪魔されやしないぜ!!

そして、ついに幸運を掴んだ。

来年の春には家と農地が貰える。

一家の主だ!俺達の栄光の日々だ。


「で?俺たち集められて何をするんだ?」


どっかの兵隊の襲撃を受けた性で仕事が全て中断になった。

だが俺達は、マルダーさまに付いて森の巡回や監視の仕事で忙しい。

今日は暇だ。

最近は寒くなってきたのでオーバーオールにコートを羽織っている。

続々と他の開拓地から男達が集まっている。

近々、鎧を配布されるとの噂もある。

兵舎が追い付かないので、切り開いた切り株の上にまでテントを張っている。

今日は特に仕事を言いつけられなかった…。

だから、何時通り何時もの切り株の淵に腰を下ろし駄弁っている。

ひなたぼっこだ。

「あ?どうしたアントン。」

ベクターが話を聞いていなかった様子だ。

「いや、ベクター俺達の仕事の話だ。」

間が悪かった、仕方がないベクターはお茶を入れる為、魔法の鍋でお湯を沸かすコトに集中していた。

代わりにデックが答える。

「アントン。今日は休みだ、マルダーさまから”早めに昼飯喰って全員集まれ”と言われている。ご領主様がみえるそうだ。」

「本当か?デック。ご領主さまが?」

寝転がっていたチャーリーが起き上がる。

「アントン俺も聞いた。で、昼まで休みだ。」

暇そうだ。

「チャーリー昼までなんかやるか?」

言ってみたが特に何も思い浮かばない。

仕事は全て片付いてる。

「いいぃんや、面倒だ。昼寝だな。」

チャーリーがまた寝転がる。

「あちちち、お茶が出来たぜ。カップだせ。」

「「おう!」」

歪な銅のカップが集まる。

湯気と香り立つカップを受け取る。

見覚えのある凹みだ。

「チャーリー、お前のお茶だカップ受け取れ。」

皆のカップの見分けは付く。

「あり!アントン」

デックがオーバーオールの中から干物をだした。

「干し木の実があるぜ。」

「「「あり!デック」」」

受け取ったが、見覚えのある果物だ。

前に森の中で俺が見つけたヤツだ。

木を切り倒したら、木の実が成っていた。

俺は直ぐに収穫して食べて種を取った。

デックは保存食にした様子だ。

お茶を飲み齧る。

甘い。

俺は家を貰ったら庭に種を植えてやる…。

皆無言でカップをゆっくり空にする。

「なあ、マルダーさまの所に早めに行くか?」

空に成ったカップの底を見て切り出す。

何もしないことに飽きてきた。

「だな。」

「ああ、悪くない。腹が減ってきた。」

「慌てるな、未だ飯の時間じゃない。」

「デック、調理馬車に行けば何か食えるだろ。一応早く来いと言われている。」

朝一番に焼いたパンは歩哨や作業場用の食事弁当を作る。

「昼は携帯食か?」

窯の温度が上がっていないので細長いパンを焼いて。

パンに切り目を入れ塩肉を炙ってキャベツ漬けを挟んだ物を真っ先に作っている。

出来た先から早番のヤツが受け取り、持ち場に向かう。

俺は気に入っているが、粥の方が好きなヤツも居る。

「スープ位もらえるだろ?」

「悪くないな。」

「「行くぜ!」」

各地から集まった男たちの食事を作る調理馬車は大混雑していたが。

顔見知りの調理番を見つけて、何とか食事を終えてマルダーさまの所に集合した。

「早いじゃない。飯はくったの?」

「「「食べてきました!」」何か手伝うコトはありませんか?」

「うーん、力仕事では無い雑用だ…。コレを皆に配布するから、準備してくれ。」

「「「はい」」何ですか?こりゃ。」

大きな袋が山隅だ…何かが入っている様子だ。

ダムを作るときに散々見た、魔法の収納袋特大だ。

「おう、コレから皆に配る鎧と武器だ…。キミらの分もあるよ。」

「「「おお、」」やった!鎧!」

マジもんの兵隊見たいだ!

「袋を並べてくれ、飯食ったヤツから受け渡す手筈で…。”ココで装備させて広場に整列させろ”と言われてるのよ。欠ける事無く配布しろとのご領主様からの命よ。」

おお、大仕事だ。

栄光の俺達にご領主さまからの命令だ。

「「はい!」」

マルダー様から書類の束を受け取る。

「任せるよ。俺は飯食ってくる。配り始める頃には戻る。」

「了解!!」

大袋には”ヘルム(一人一個)”や”サンダル&脛あて(一人二セット)”、”収納鞄(二種類一人一セット)”と書かれた布札がある…。

書類と照らし合わせる…。

数が多い。

「どう並べるよ?」

大袋の山に呆然とする。

「どれ…。種類が多いな…。コート?大中小?サイズが在るのか?」

「まあ…。普通考えれば足からじゃね?」

「なら…。サンダル受け渡し所は広めに取ったほうが良いだろうな。」

「毛布も有るみたいだ。」

「武器は二種類持たせろとさ…。」

「長物は最後にしたほうが良いな…。サイズが合わないヤツは交換所を別に作ろう。」

大所帯が多いのでここら辺は皆、慣れている。

地面に線を引いて丸太のテーブルを並べる。

その後ろに大袋の中身を出せば良い。

俺たちチームに掛かればこんな仕事は手早く終わる。

「おう、進んでるね」

最後に各備品を並べチェックを行っているとマルダーさまが来た。

「「はい!」バッチリです!。」

「よーし。最後に、魔法のスクロールを渡すことに成ってるから。机を一つ借りるよ。ご領主さまから確実に一人一枚渡すように厳命されてる。」

「え…。デック!机余ってるか?」

数が足りなくて別からも借りた。

すべて並べてしまったハズだ。

「無いな…。天幕なら在る。」

「天幕で良いよ。椅子はあるかい?」

「「「丸太なら。」」」

「上出来だ。兵隊がだらしないと俺が困る。一人一人検査するョ。」

「そりゃ大変だ。」

俺達の不手際でご領主様の機嫌を損ねるのは恥ずかしい。

「はい、早速天幕を立てます。いくぞ。アントン。」

「おう、デック。旗立てるか?臨検所って。」

「ハハハ、悪くない考えだな。一人ずつ臨検終わってから渡すか。」

笑うマルダー様、きんにくが光っている。

「では用意します。」

チャーリーが旗の調達に掛かる。

全ての準備が終わると、飯を食い終わった男達がやってきた。

「俺たちも手伝えって言われてる。」

確か枝払いの一家チームだ。

「そりゃ助かる。」

リーダーは年配で凄みのある古傷男だ。

「掛かるぞおめぇら!」

「「へい!!」親分。」

続いて飯が終わった男達が三々五々にやってくる。

「並べ!」「おい!ここで装備していけ!」「立ち止まるな、サンダルは決められた場所で履け。」

多くの男達が装備を身に着け兵士に成ってゆく。

「お前は行け。スクロールだご領主さまの命が在るまで広げるな。」「サンダルがダメだ。やり直し。」「よし、スクロールだ持っていけ。手から離すな。」

マルダー様の天幕の前が大行列に成っている。

見かねた合格を貰った兵が後に並んだ兵士達のダメな所を指摘し、直し始めた。

途端にテントから戻される兵が減る。

列が減って備品の山も少なくなる…。

男達の(むせる)大混雑も無くなると…。

「もういねえのかな。」

「どうだろうな?」

「お、来たぜ。お客さんだ。」

一団は見覚えの在る男たちだった。

「おう、調理場の…。」

「ああ、俺達で最後だ。」

「そうかい、好きなの選びな、全部同じだぜ?」

「そうさせてもらうさ。」

最後の集団が居なくなった。

「終わったな。」

「だな。片づけるか。」

マルダー様が天幕から顔を出して叫んだ。

「おいおい、お前たちが最後だぞ?」

「「はい!?」」

お互い顔を見合わせる。

「おう、急いで装備しろ!」

同鎧を渡す。

立派な同鎧で中古だ…。

読めない文字なので帝国製かもしれない。

「選んでる暇がねえな!」

「同じなんだろ!」

鉄の鋲が付いた肩当を装備する。

「カッコイイの選ぶにきまってるだろ!」

収納のカバンは二種類だ。

コートを丸めて背嚢カバンに縛る。

武器獲物は何使う!?」

縦一列、多分馬毛の飾りの付いたヘルムを受け取る、バイザー付きだ。

「剣」

ヘルムの顎紐を締めながら答える。

「弓」「槍」「俺は自前の斧とナイフだ!」

「剣ぐらい装備しておけ。」

「わかったよ!」

全てを装備すると天幕に並ぶ。

「おう、りっぱになっちゃって。」

「「はい!!」」

「これは魔法のスクロールだ。ご領主様が合図するまで使うなとの命令だ。先に覗くなよ。」

「「「はい!」」」

全員に巻かれた布がマルダー様から渡された。

「じゃあ、俺はご領主様を呼んでくる。兵を整列させておいて。」

「「「はっ!」」了解しました!」

天幕を出ると…。

腰を下ろしたり、大地に寝そべって兵達がだべっている。

「おーし!整列!!」「全員整列!」

「ご領主様が見えるぞーー!各団、整列しろー。」

声を張り上げると飛び起きる男達…。

一応、各開拓団の旗が立っているので自分の旗の後ろに立つ兵。

整列が終わり、目の前には燃え落ちた宿舎の残骸だ。

しばらくすると…。

マルダー様とマルダー様に負けない大男…。

ご領主さまだ。

相変わらず、真っ黒の騎士鎧に骸骨ヘルムを手に持ってた凄みのある大男。

黒いマントの裏は緑のまだら模様で伝説の大魔法使いの様な姿だ。(頭髪が)

整列した兵士達の前に立つと、何も無い場所に大きな木の台を出した。

残骸を背にその台の上に立ち、大声を出した。

「全員揃った様子だ、我々はこの森の向こう…。帝国からの一撃をもらった…。」

ご領主様の話は続く…。

最近、ご領主さまは髭を伸ばし始めたので更に大魔法使いに見える。

実際、大魔法使いなので誰も文句言わないだろう。

「…なので、我々は一回殴られた程度だが、黙って居る訳にはいかない。相手になめられたままは気分が悪い。こちらから打って出る心算だ。」

戦争する気だ…。

何となく、”やるだろうな…。”とは思ってたので驚かなかった。

ご領主さまは軍人の時、侵攻してきた帝国相手に戦争して屈服させたと言う話だ…。

だが、勝つ目算はあるのだろうか?

「だが、君達の相手をするのは強力な帝国兵だ。技量、力量、統率力は折り紙付きである…。しかし、対抗策はある、諸君らの手の中だ。スクロールを読み上げろ!!」

渡されたスクロールを広げ読む…。

読んだ途端に燃えて消えた…。

頭の中でスクロール魔法の効果が解る。

「今!将に諸君立は帝国兵に負けない強靭な身体と精神を身に着けた。」

短時間精神高揚と短時間身体強化、身体強化治癒に小治療…。

第二の合図で身体強化治癒を優先させる方法もある!

「我々の目的は森の向こう、敵の拠点を潰し、敵の物資を強奪する!」

第一の発動の言葉が浮かぶ…。

「非戦闘員が居住する、町や村、生産設備も対象である!その過程で!!我々の主目標であるマブイちゃんねーをおっぴく事である!!」

いま!叫ぶ時だ!


「「「「「ヒャッハーーーーー!!」」」」


そうだ、オブツは消毒だ。



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(´・ω・`)…。(なお、”マブイ…。おっぴく事である!”のセリフは空想科学肉欲大作戦:速水螺旋人氏の漫画より勝手に頂きました。)

(´・ω・;)少しセリフ変えたから多分大丈夫…。

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