第20話12.入植者10
冬も近づき。
平野も秋の色が深くなった。
最初のきのこフィーバーは細やかだったが、殆どの切り株できのこが取れた。
来年はきっときのこの大フィーバーだ。
王都周辺での食料買入計画も順調で、領内各地の食糧庫への入荷は遅れ気味だ。
輸送の問題だ、雪が積もるまでに解決できれば良い。
今は、冬に向けて丸太の大量生産に忙しい。
樵仕事は年中無休の雨が降ったらお休みで、雪が積もったら休業だ。
製材工場は雨の日も雪の日も、回転鋸が唸りを上げて材木を作っている。
来年から新築ラッシュだ。
大量の木っ端が出来るので燃料確保もできる。。
雪が降るまでに製材場のストックヤードを丸太で埋める…。
計画目標は未だ未達成だ。
理由はダム建築に人員を割き過ぎた。
樵衆に発破を掛けている。
計算では冬の終わりには燃料が足りなくなる…。
石炭を買うにしても、作った木材を薪にするのも大赤字だ。
指揮所の窓から曇天の空を見上げる…。
「今年は雪が遅いと良いが…。」
年々、雪は遅くなっているが、振れが在る。
「北の山が白くなっているので時期に降るかと。」
スパスが答える…。
二人目は男の子が生まれてラカスと名付けた。
スパスが言い出した事だが名前の使い回しはこの世界では良くある事だ。
裸の報告書で最後の樵場は。
今年の計画の最西端になる。
その区画全てが終われば今年のノルマは完了だ。
強い魔物も出るが、裸が鍛えた
ダァー☆が激しくノックされた。
「緊急事態です!」
随分と切羽詰まった声だ。
「入れ。」
入った通信兵の息が上がっている走ってきた様子だ。
「マルダー様より電信、緊急事態発生、樵場が所属不明部隊から襲撃を受け施設の一部が延焼。けが人多数。」
「なんだと…。」
地図を確認して樵場を探す。
まだ、帝国の人里からは距離が在る…。
夜盗の類か?
その程度で裸が遅れるとも思えん。
解らない時は現場へ行く。
番号の確認ヨシ!
「腕の立つ兵を数名集めろ、急げ、俺と現地へ飛ぶ。通信兵は続報を待て。」
「「はっ!」」
「スパス、この場を任せる。」
「はい、かしこまりました。」
指令所を出るとフル武装の兵が5名整列していた。
「よし、揃ったな付いてこい。」
「「「はっ!!」」」
モータープールに並ぶ馬車の番号を確認して乗り込む。
馬車の中は狭いが紋章が光って消えた。
途端にキナ臭い燃えた空気が漂う。
「何が起きた!」
外に出ると焼け落ちた小屋が見える。
未だ延焼中の兵舎に樵達が集まり、火を消そうとしているが…。
あの勢いではもう鎮火は不可能だろう。
「ご領主さま!」
包帯を巻いた若い樵達が多数と、無傷に見える男達、数人が毛布を下に大地に寝そべっている。
「死人が出たのか!?」
「はい…。ですが、ほぼ全員復活しました。けが人の治療は未だ終わっていません。そこで伸びて居るのは、復活魔法の使い過ぎの者です。」
「よし、状況は?」
「私は樵場の方で調理馬車で飯の準備をしていました。西側の樵場が騒がしくなり、馬に乗った騎兵集団が兵舎に向かい、火を掛けました。」
「すんません、覚えていません。死んでいた様子です…。」
「俺は、東側の樵場で兵舎が燃える煙を見て急いで駆けつけました。騎兵は見ていませんが怪我人と死人の救助を行いました、馬の樋爪が地面に大量にありました。」
次々に手を挙げ自分の見たものを答える樵達。
状況は分かってきた。
襲撃者は騎兵の運用法に則っている。
訓練された兵だ。
そんなのを持っているのはこの森の向こうの帝国しかいない。
「マルダーは?」
「少数の手勢を集めて襲撃者を追跡しています。」
騎兵相手では追跡は不可能だろう。
「そうか…。治癒のお札とポーションだ、使え。」
収納から数を出して、手当を行う男に渡す。
「ありがとうございます!」
緊急時だ、出し惜しみはしない。
コレで伸びてる奴は復活するだろう。
ケガ人に向かって叫ぶ。
「始めて襲撃を受けた場所に居た者は居るか!!」
泥に塗れた男が手を挙げた、血が滲んだ包帯を巻いている
「へい!あっしらが、西の樵場で枝打ちをしていましたら、森の中から騎兵と歩兵が出てきて囲まれました、何か叫んでいましたが、何を言っているか言葉が判りませんでしたが、親方が対応したら急に切り掛かって来ました。」
顔が怖い集団に居た若い男だ。
「そうか、どんな装備だった、旗は何だ?」
「すいません、旗は在ったのですが…。見た事ない物なので…。兵の鎧は見た事がない物で歩兵は全員同じ物でした。騎兵はちょっと判りません。」
「うーむ。」
軍務経験が無ければ、旗の見分けも付かないか…。
それより、襲撃者は騎兵と歩兵の混成部隊だ。
「チンピラや野盗の類ではなく…。命令で動いていました…。皆まっとうな兵隊に見えました…。」
しどろもどろに答える泥だらけの男。
「見分けが付かないほど、ヘルムも胴鎧も同じ鎧だった…。親方が逃げろって叫んで。皆、走って逃げたが馬が追いかけてきた。俺は丸太の陰に隠れて兄貴や親方が殺されるのを震えながら見てた…。」
男泣きの泥だらけ。
「そうかい、俺はそんな感じで死んだのか?」
怖い顔集団がやってきた。
「親方!兄貴!」
「おう、男がメソメソすんな!しかし、辛い思いをさせたな、俺はピンピンしてるぜ?」
「親方とあっしらで、おめえを生きのこせたんだ。おかげでどんな荒仕事だったか分かったぜ。」
「兄貴!!俺は!」
泣きはらす男を慰める親方。
「おめぇは立派に仕事を果たせたんだ。喜べ!」
「気が付いたら仕事道具全部壊されてやがった。」
「しかし、なんにも覚えてねぇ。」
「ああ、まったくだ。」
「いっぺん死んだなんて思えねな?」
「「「ハハハハハハ」」」
笑う男達に泣き顔の男も笑顔になる。
兵舎が崩れた。
燃え尽きるのも時間の問題だ。
「あーあー。今夜の寝床が燃えちまった。」
「又、テント暮らしだ。」
「いや…。物置小屋も燃えてる。」
「いまさら野宿かよ…。」
ぼやく樵達、諦めの声色だ。
被害の心理的衝撃で放心しているのだ。
活を入れるのは指揮官の仕事だ。
大きな声で叫ぶ。
「死人が出なかったのは幸いだ。重傷者を選別しておけ、俺が見てやる。手の空いた者は残骸を集め使える物と分けろ、日没までに簡易兵舎を立てるぞ!」
「「「へい!わかりやした!」」」
男達が命令を受け散らばる。
おそらく帝国の仕業だが…。
誰でもいい、必ず見つけ出して仕返ししてやる!!
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