第11話3.入植者2

さて、俺の都…は未だ無いが。

俺はビゴーと言う町に住まいを移した。

俺の領民に成った町人達は何とか長い冬を乗り越えたが、周辺の村は無人に成った場所が多い。

その為に、元の領主が国王に領地ビゴーを返納してしまった…。

普段では考えられない様な話だが、長い冬の後半では珍しい話では無く成った。

国王は王国直轄地(飛び地が多い)を各貴族に割り当て押し付け様と頑張っている。

そして、この町は俺の領地に加えられた。

無い無い尽くしのコノ町だ。(青銅の剣しか売ってない。)

辺境の町で領主が住むような屋敷も無い。

宿屋を徴発しても良かったが、続々と入植者が到着している状況では難しい。

その内に、俺の都は何処かに作る心算だ…。

未だ場所すら決まって無い。

どうせ、仮の屋敷なので俺が空き地に適当に魔法で作った…。

野戦兵舎かまぼこ型に毛が生えた程度だ。

但し衛生環境には気を使っている…。

この屋敷はトイレ風呂、上下水道完備(浄化槽)の冷暖房完備だ。

スパスとクーリョはこの屋敷のことを全て取り仕切っている。

執務室で冒険者に依頼した、”森の中の放棄された村の状況報告書リスト”を確認する…。

概ね判った、再使用するのには問題は多そうだ。

主人公居ないな…。

まあ良いか。

この状況下で主人公遭遇イベントなんて只の作業だ。(悪役領主)

しかし、あの裸。字が綺麗だな…。

「スパス、この書類を地図に記入してくれ。」

王国軍の測量地図は大量に確保してある。

「はい。旦那様。」

後ろに控えているスパスに渡す。

スパスが自分の書机に地図を広げている。

「教授、来客です。」

ダァー☆が話す。

珍しく、クーリョの弾んだ声だ。

「ああ、解った。」

答えて思い出す、誰か来客の予定は在ったか…?

ダァー☆が開くとシスターが入って来た。

「助祭さま…。お久しぶりでございます。」

深々と頭を垂れる使途墳墓教会のシスター…。

緑の髪だ。

少女の面影は無く、大人の女に育っている。(ばいんばいん。)

流れる様な女の曲線、背中の腰に短剣を二本下げている。

「おう。久しぶりだ…。元気にしていたか?」

散々、キムさんとして教団墳墓教会顔を合わせた。

「はい、今回の北の町移民団の団長を私めが務めさせていただきます。」

「そうか…。俺は、ココでは領主なのだが…。」

そうだ、俺が領主だ。(極悪)

「あら、そうでしたか。司祭さまからのお手紙を預かっております。」

特に気にする事も無く…。

「座ってくれ。スパスお茶をだしてくれ。」

「しつれいします。」

重たそうな腰を椅子に降ろすキーファ。

食糧事情は良さそうだ。

「はい、かしこまりました。」

スパスが答えて、お茶の用意をする。

手紙を受け取る。

広げると…。

指輪が出てきた。

司祭の持ち物の”復活の指輪”だ…。

手紙を読んで頭が痛くなる…。

眉間を揉む。

復活の指輪は既にコピーが量産化されている…。

正直、もう。いらんぞこの指輪…。

「司祭様ご就任おめでとうございます。」

祝福に弾んだ29…、もといキーファの声…。

相変わらず目に輝きが無い。

「うーん。俺は教会とは関係が無いのだが…。」

今更、何だが…。

俺は”遊び人のキムさん”とは別の個体だ。

そういう設定だ。

「ええ、ですが北の町司祭様はビゴーニュにも教会が必要であり、私はシスター《女》の身です。他に司祭様男性を任命しないといけません。」

頬に手を当て首を傾げる29番が続ける。

皆忘れているようだが、宗教行事は役割だ、男がやる仕事、女がやる仕事、年寄りがやる仕事…。

子供や、処女が行う仕事。

全て、人生の節目で、区切られている。

「しかし…。皆が納得する司祭様を選ぶのは難しいので…。」

男女の境では無く仕事の分担なのだ。

「俺は、キムさんとは関係が無い…。」

「ええ、もちろん皆知っています。」

涼しい顔で答える29。

どっちの意味だ…。

「御面倒でしたら、場所と資材資金だけ頂ければこちらで全て準備いたします。」

「うーむ。」

困ったな、全部任せるとその内に領主の言う事を聞かなくなりそうだ…。

正直、邪教には若い職人集団石工も大工も居る。

今は未だ、一か所に固まって住居されると困る。

「その内、大きな教会を作ってやろう…。だが、未だ皆が住む家も出来て居ない。」

「あら…。」

ワザとらしく驚く29…。

どうやら目的はコレの様子だ。

「将来的には何処かに北の町に負けない規模の教会を作りたい…。」

正直、宗教は儲かる。

経験済みだ。

「ありがとうございます。冥府の王に感謝します。」

腹の探り合いは合意を見つけた。

「だが、未だ未来の話だ。開拓団は森を切り開いて、道を作り家を作って人の営みを揃えなければ成らない。」

宗教は人の生活の中で培われなければ活けない。

「はい、わかります。」

宗教の教えだけが先鋭化しては、只のブラック企業と変わらない。

「今は仮設の教会に留めてくれ。」

ブラック企業は宗教なのだ…。

科学でも理学でもない。

架空の精神論ゲーム理論だ。

「はい…では領内での巡教の許可をお願いします。」

「ソレは…、構わんだろう。但し、巡教者の名前と特徴を知らせろ。許可証を出す。」

コレは治安維持の為だ、但し、領主が許可証を出すと領民は巡教者の願いを聞き入れる必要がある。(理由を付けて断る事も可能。)

巡教者が望むのは大概は一宿一飯だ。

村長は、領主に請求する事も出来る。

報告書付きだ…、領主は邪教の動きを監視できるのだ…。

「まあ…、ありがとうございます。司祭様。冥府の王の祝福を…。」

キーファが続けて経典の一部を唱える。

何らかの魔力の動きが在った。

嫌な予感でGUIを確認する…。

”冥府ポイント 24542(職階:司祭)称号:光を放つ者”

在った…。司祭だ。

だが、その称号はヤメロ…。

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