第4話番外編.黒(歴史の)騎士物語2

(´・ω・`)…。(参考資料:南極物語)ハリウッド版では無いぞ?


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頬を切る冷たい風と白い世界を進み。

遮光眼鏡越しに、白い世界の中に黒い染み。

凍結した川にかかる橋を見ると兵が喜びの歓声を上げた。

皆、笑顔だ。

人の手による物だ、現在地は間違っていない。

王都に近づいている、橋から先は平野人の地だ。

森を抜ける事に成功したのだ。

街道は人の往来も無く除雪されていないが…。

汎人の支配地域だ。

望郷の想いを胸に凍てついた橋を渡ると除雪されていない道筋を示す赤い標識の旗が途端に多くなる。

コレで見落とす事は無い。

森の中、雪に埋もれた標識を一つでも見落とすと、小隊の運命に係る。

犬達の鼻と操者の技量だ。

魔物との戦闘で発生した負傷者は治癒のお札で軽症まで回復している。

噂の大魔法使いは死んで直ぐなら生き返らせる事ができるらしい。

ソコまででは無いが、学園の魔法使いは重傷者の兵を一瞬で戦線復帰できる…。

正直、羨ましい。

サイクロプスとの闘いで負傷者を出したのだ。

貴重高額なお札を大量に使ってしまった…。

恐らく主計にはかなり詳しい戦闘経緯を聞かれるだろう。

だが、現在、兵は一人も欠ける事無く仕事をしている。

負傷して、未だ包帯の取れていない者も居る。

回復のお札で任務に影響はない程度に成っている。

我が小隊に魔法使いが配置された暁には、大型魔物の襲撃で物資を危険に晒す様な事は無いだろう。(サイクロプス隊に荷物を狙われるフラグ。)

「小隊長殿、どうしますか?この先の村に逗留しますか?」

軍曹が大声で尋ねる。

走行中の会話は風に流れてしまうので、全て大声だ。

犬は痩せてない…。

オオカミは腹いっぱい食わせれば何処まででも走れる。

まだ日が落ちるまでに時間は有る。

後ろに向かって叫ぶ。

「他の橇の犬の様子は如何か!?」

命令を聞いた橇後部に立つ監視の兵が旗を振って

後続の橇は旗信号で通信を行っている。

連隊規模なら無線機という魔道具が配備されるが、未だ見たことは無い。

何方にしても無線機は扱いが難しいらしい。

「各、車!異常ありません」

後続は問題ないらしい…。

「解った、軍曹、簡易気圧計の指針は?」

「変化はあまりありません。落ち着いています。」

空は曇って白いが、雲は高い。

天候の悪化の兆しも無い様子だ。

「よし、先を急ごう、この先の村では小休止に留める。」

森に近い村は、犬を怖がる者が多い。

ココからは村が多くなって行くので速度も上がる。

兵を屋根と壁の在る場所で眠らせる事も出来る。

可笑しな話だが、コチラは物資を満載しているので各村で歓迎される事が多い。

無論、兵が飲み食い分は請求される。

正直、放棄された廃村に逗留したほうが楽な場合もある。

「了解!天気が良ければ、今日中に三つは村を越えられますぜ!」

笑う軍曹。

ソコまで走ると明日は犬に疲労が出るだろう。

「無理はする必要はない。が…。日没までに屋根温かいベッドを見つけるぞ。」

「了解!!」


白い大地の中に人家が見え始めた…。

と言っても見えるのは集落を取り囲む魔物除け札が貼られた木の柵だ。

外見上に異常は無い。

白い煙を立てる家の屋根も見える。

人の営みが有る、あの村は生きている。

集落に鍋を叩く音が起きる。

どうやら未だ健在らしい。

王国軍の旗を見て村人が門を開けた。

そのまま滑り込む車列。

村人たちは歓迎の態度だ。

小休止で水の補給と書類を村長と交換した。

情報としては冒険者達の大規模討伐が有ってからは大型の魔物を見る事は少ないそうだ。

他の放棄された村からの移住者が数家族分、有ったとの話だ。

また、村が一つ無くなった雪にのまれた…。

近くの街道外れの村だと言う話だ、地図に記録しておく。

食料の応援要請が有ったので。

一部、小隊の食料を引き渡した。

日程は順調にこなしている。

天候悪化で動けない事も考慮に入れて食料は多めに配給されている。

この先に荷物になるなら処分して荷物を軽くしたが良い。

速度も出る。

森に一番近い村なので無くなると我々王国軍が困るのだ。

今回は幸運なことに犬の腹が膨れている。

犬の為に、この村から食料を要求家畜を強制挑発する事態が起きるかもしれない。

余裕が有る時は住人に恩と名声を売って置く。

騎士の基本だ。

村長との打ち合わせも終わり、村の中の様子を見る。

森を出た輸送小隊は大概、この村を通る。

犬に馴れている住人も多いが、女子供は特に遠巻きに見ている。

住人の顔色は良い、この村の食糧事情はマシな方だ。

「軍曹どうだ?出せるか?」

「はい、何時でも。問題なく水の補給は終わりました。」

雪が多い上に、水の心配をするのもおかしな話だが、犬と兵の飲料水は魔道具ダケでは心もとない。

特に寒いと水が出る魔法瓶マジックジャーの効率が途端に落ちるのだ。

雪は食うな、と教育されている。

雪から水を取るには魔法の調理鍋で一旦沸騰させろとも…。

時間と手間が掛かるのでなるべく避けたい。

軍曹が問題ないと言うなら水質も良いのだろう。

村の門も開いている。

「了解だ、出るぞ!!」

村人が遠巻きに見送る。

「しゅっぱーつ!!」「いくぞ!」「ゴー!ゴー!ゴー!、走れ!おら。ゴー!!」

養育兵が掛け声と共に先頭の犬を引っ張り走り出す。

掛け声で犬が動き出す。

先導を行う兵は、犬が本気を出す前に橇の御者席の隣に飛び乗る。

次々に走る兵が橇に飛び乗る…。

あっという間に車列は村の門を出てしまう。

「全員の乗車を確認!!」

軍曹の声だ。

準備完了だ。

「よし、先を急ぐぞ。走れ!」

犬達は足を速めた。


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(´・ω・`)ボツンヌーテンを目指す…。(多分仕事始めだわ…。)

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