第3話番外編.黒(歴史の)騎士物語1

(´・ω・`)まさかの時のいきなり黒騎士!!(翔ちゃん命日投稿。)


-----------------------------------------------


「敵襲!!後方、オーガ!4以上!!接近しつつ在り!」

雪を掻き分け走る犬橇の後部に立つ兵が断片的に叫ぶ。

皆吐く息が白い。

兵の顔を隠す襟巻の口には吐く息が氷付いている。

「追い付かれたか…。軍曹!止めろ。迎撃用意!操者は犬に専念、落ち着かせろ!」

この先は登り坂だ、速度が出ないので追いつかれる。

「ター!」「ター!」「ター!」

操者の停止の指示で歩みを落す犬達。

「了解!俺に続け!!」

止まる前に飛び降りた降りた兵士が軍曹に集まる。

橇の操者はそのままだ。

犬の養育兵は別の方向に雪の中を走り、先頭の犬の首輪を抱きしめる。

軍曹が数人の兵を引き連れ雪を掻き分け、車列の最後尾に下がる。

犬の鼻で魔物の接近は判っていた。

他の小隊で追跡されたが振り切ったと言う情報もある。

襲われたと言う話も…。

「後方、敵集団の後ろに更にオーガ!!数が増えています!」

警戒している兵が叫ぶ。

クソっ!完全に追跡トレインされていた。

「攻撃のお札の使用を許可する!数を減らせ!」

対峙する兵の背中に向かって叫ぶ。

「聞いたな!俺が良いと言うまで発動するな!!」

声を聴いた軍曹が叫ぶ。

「「「了解!!」」」

もう既に車列を守る為の配置に付いた軍曹達。

白い息を吐く軍曹は教本通り、統制射撃を行う様子だ。

配置に付いた兵が汚れた外套を捲り白い裏地で雪景色に一部が消える、腰のお札の束を引き千切る。

識別用に配給された朱色の外套は皆、色落ちしてくすんでいる。

裏側の白い色は冬季隠蔽用の色なので、兵は、汚れに注意を払っている。

『ウガァーー!』

雄叫びを上げ突進するオーガの先頭集団、6匹程度だ。

「発射!」

軍曹の掛け声と共に、お札を両手で保持した兵の手元から火の玉が発生してオーガ集団に集まる。

『ウガアアアアアアアアァーー!』『ギアアアアアアァーー!』『グッガアアァーー!』

棍棒を振り上げたオーガが炎に呑まれる。

その場で転がるオーガ火達磨達。

「さっさと引けよ…。」

白い大きなリーダ犬の首を抱き抑える二等兵の小言が聞こえた。

大人しく主人二等兵の顔を見ているリーダー犬。(おれはやるぜ!)

しっぽを振っている。(おれはやるぜ!)

思わず苦笑する…。

先導犬を抑えている限りオオカミ達は暴れない。

先頭を走って来たオーガ達は随分と痩せて居た。

命がけで獲物我々を狩る心算だろう。

魔物の燃える嫌な臭いを振りまき燃えるオーガ。

攻撃のお札の統制射撃は強力だ。

炎の壁を左右に避けて後続のオーガ集団が姿を現した。

もう既に、棍棒を振り上げ白目が見える距離だ。

数が多い!叫ぶ。

「第二射撃、右手集団へ集中!続いて第三射撃は左手集団へ。統制射撃!発射命令は軍曹に任せる!」

「「「了解!」」」

兵がお札を引き千切る。

「聞いたか!行くぞ!撃て!!」

新たな炎の壁がオーガを包む。

『グガアァーー!』『ギアアアアアアァーー!』

完全に足が止まる右手集団。

「第三射撃!撃て!」

軍曹の叫びに左手集団も炎に呑まれる。

魔物の断末魔が静かな雪の大地に消えてゆく…。

「目標の撃滅を確認!」

軍曹が叫ぶ。

その報告で兵達が安堵の溜息を付く。

「周囲を警戒!軍曹は止めを刺せ。」

オーガがゾンビ化すると目も当てられない。

今は頸椎と顎を破壊する余裕が有る。

「小隊長殿、肉を採取してもよろしいでしょうか?」

小隊内で一番に犬の扱いに馴れた二等兵が進言する。

「軍曹と相談しろ。時間は余りない。」

橇を引く犬は大飯喰らいで肉を食べさせないと力が出ない。

魔物の肉でも王都への長距離輸送では貴重な燃料飼料だ。

軍曹が判断して許可するだろう。

「はっ!」

大きなリーダー犬を連れて軍曹の所に向かう二等兵。

あの大きなオオカミは人の言う事を聞く様に魔法学園で訓練された特別な狼らしい。

どんな、魔法を使っているのか解らないが、元はシルバーウルフの上位種だと言う話だ。

シルバーウルフなら一匹で練兵5人以上の働きをする…。

森の中の死神だ。

群れに襲われ村が消えた話は多い。

その為、怖がる兵が多かった…。

通過する村の住人達も怖がっている。

あの二等兵も始め怖がっていた。

「周囲の警戒を続けろ!手隙の者は橇と犬の首輪の状態を確認しろ!!」

流石に成れた手付きで犬の状態を確認する兵達。

兵が次々に”異常なし”の報告を持ってくる。

我々の小隊は、5日前、犬橇6基に物資を満載し”北の炭鉱の町”を出た。

指揮下の小隊は幾つか有る輸送小隊の一つだ。

小隊の中に魔法使いは居ない。

昨今の魔法使いは剣も体力も抜群だ。

数が少ないので輸送小隊程度では配置されていない。

我々の運ぶ橇には魔法使いが作った魔法の収納カバン屯パック(特大)が大量に積まれている。

物資の多くは只の石炭の加工品コークスだ、現在雪に覆われた王都では命に係わる物資だ。

必ず王都に届ける。

炭鉱の町への往路は食料等の物資を満載して遠回りのハイデッカー領を経由した。

理由は安全だからだ。

雪深い今は主要道に成っている。

ハイデッカー兵が街道の保全を行っているので比較的に安全だ。

その為、途中ハイデッカー領経由で王都に向かう商家の隊列と何度もすれ違った。

炭鉱の町の人々の腹を満たさないと石炭の加工品コークスの生産が出来ない。

到着した時の町の人々が笑顔で歓迎された。

現在、王都の燃料が逼迫している…。

時間が無い、危険だが南の街道を選択して山越えの道を選んだ。

大型の魔物の目撃情報が多い道だ。

20日で王都に辿り着ける。(雪中行軍)

炭鉱の町を出てから一路、南に向かい平地の雪原を進んできた。

雲が多いが天候も良く、吹雪にも合わなかった。

今は、白と黒が支配する大地森の中、街道の先は山へと続いている。

越えるべき、街道先の山の上に灰色の雲が掛かっている。

コレからは魔物と天候との闘いだ。

騎士の胸中装甲は無くなり、鎖帷子を包む革鎧とフード付き外套になる防水布の個人用テント。

朱と白で状況に合わせて裏返して使う。

背中に付けた鎧用の大型ラケットシューズかんじき

過酷な冬を乗り越え、任務を達成する為の装備だ。

報告を終え、雑談を行う兵も居る。

「やったなぁ。」

「オーガと接近戦は骨ですからね…。おい、どうした?」

犬達が一斉に森の方を向いた。(なにかいるぜ!)

「なんだ?報告…。」

森の木々が揺れている…。

しまった!風下で発見が遅れた。

『ガアアアアアアアアァーー!』『ゴファァーー!』

前方右手の森の中から新たな雄叫び…。

木々の中から覗く顔に大きな目。

オーガでは無く一つ目の巨人が出てきた。

「サイクロプス!!」

「敵襲!敵襲!!」

車列に残った兵達に恐怖が伝播する。

「前方、魔物三。巨人型!」

軍曹以下の兵はオーガの始末で車列、後方の位置にいる。

離れている。

間に合わない。

「クソっ!匂いに釣られて集まって来やがった!!」

積雪を物ともせず雪を掻き分け巨人が突進してくる。

「小隊長殿!犬を放ちましょう。」

犬の戦闘参加は最後の手段だ。

「ダメだ!犬は使うな!総員お札を使え!射撃自由!足を止めろ!」

リーダー犬は訓練されている。

しかし、その他の犬は混血や野良オオカミだ。

リーダーが居なくなると、野生に帰ってしまうかもしれないとの魔法学園側の話だ。

学園のオオカミは少尉や兵より貴重なのだ。

最悪、リーダーが無事なら…。

無人でもオオカミと橇だけ、無事に人の住居に辿り着く。

目的地には付かない。

散漫に火の玉が巨人に飛ぶ。

『グッファァーー!』

幾つか命中する、ダメージを受けているが倒れない!!

「伍長以下、腕に覚えの在る者は俺に付いて来い!!」

剣を抜いて新雪の中を走り出した。


僕は騎士なんだ!

魔法使いに負けて堪るか!!



-----------------------------------------------

(´・ω・`)来年は本気出す…。

(^゜Д゜^)俺もやるぜ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る