下 2人だけのクリスマス
栗葉の知り合いの波瀬大博さん、そして七水穂高さんの二人と共に俺達は.....地元の商店街のおもちゃ屋に来た。
創業70年の老舗だ。
そしておもちゃ屋に入って店内を見る。
かなり色々ある。
でも全部古い品物だな。
しかし趣がある。
昭和のおもちゃばかりで.....だ。
大博さんと穂高さんも喜んでいる。
「.....栗葉。大博さんと穂高さんとは何処で知り合ったんだ」
「あ、えっとね。私と大博さんと穂高さん?.....大博さんと穂高さんが住んでいる街に行った時に私を助けてくれたの。ローファーが壊れてね」
「そうだったんだな。.....やっぱり優しい人達だな」
「そうだね。だから知り合いになったんだぁ」
栗葉は嬉しそうに笑顔になる。
俺はその姿に、そうか、と返事しながら目の前の大博さんと穂高さんを見つめる。
大博さんと穂高さんは俺達に気が付いて手を振ってくれた。
俺と栗葉はその姿に.....笑みを浮かべて手を少しだけ振り返す。
「どうしたの?お二人さん。こっち来たらどうかな」
「.....いや、邪魔しちゃ悪いかと思いました」
「.....邪魔じゃ無いよ。一緒に見ようぜ。山本」
「分かりました。じゃあ一緒に見ます」
そして俺達も大博さんと穂高さんが見ているおもちゃを見始めた。
それから、格好良いし可愛いな、と会話しながら。
俺達は見て回った。
その際に.....栗葉が目を離さない代物があり。
俺はその姿を見逃さなかった。
クリスマスプレゼントにしようと思った商品だった。
丁度、みんなが出て行ってから。
俺は見忘れたものがあると戻って購入して通学鞄に入れた。
よし、と思いながら顔が綻んだ。
「どうしたんだ?山本」
「.....ちょっと見忘れたものがありまして。アハハ」
「え?お兄ちゃんそんなのあったの?」
「ああ。すまないが待っていてくれるか栗葉」
それから俺達はおもちゃ屋を後にしてから。
そのままカフェやら服屋やら魚屋やらを見て回る。
やはり俺達の街の商店街だな。
改めて見ても色々ある感じで綺麗である。
「大博さん。良い商店街ですね。ここ」
「.....俺達の街にもあるけどな。ここも良い場所だ。綺麗だしな」
「えへへ。自慢の商店街です」
「お前の商店街じゃないぞ。栗葉」
「アハハ。ですね」
そんな会話をしながら居ると。
遠くから、おーい!!!!!、と呼び声がして息を切らした男性が現れた。
先程の智明さんとやら、だ。
サンタ姿だ。
俺達は顔を見合わせる。
大博さんは苦笑いを浮かべていた。
何してんだよお前、と言いながら、だ。
「ハッハッハ!!!!!ホーッホッホ!メリクリ!!!!!」
「いや、煩い。何をやってんだ」
「おいおい兄弟。そりゃないぜ。何かツッコミをくれ。冷静過ぎて気味悪い」
「いやいやどう突っ込めばいいんだよ。お前よ」
クスクスと穂高さんが笑顔を見せた。
俺はその姿を見ながらつられて栗葉と一緒に笑う。
此処まで愉快な人なんだな、って思う。
俺は思いながら大博さんを見る。
「全くお前という奴は。.....サンタ姿でキツイだろお前。走るの」
「クリスマスプレゼントを持って来たぞ。穂高ちゃんと栗葉ちゃんに」
「話を聞け。っていうか俺達の分は」
「ある訳無い」
「無いってなんだよ!?」
大博さんは驚愕する。
智明さんは本当に愉快な人だな。
俺もこんな人みたいになれたら面白いだろうな。
少しだけでも愉快になりたいもんだ。
思いながら俺は少しだけ笑みを浮かべる。
「お兄ちゃん」
「どうした」
「楽しいね。アハハ」
「そうだな。こんなに楽しいのは久々かもな」
「.....だね」
俺達は幸せそうな顔で.....3人を見守る。
そうしているとサンタ姿で白いひげの姿の智明さんが、はい栗葉ちゃんと山本君に、と渡してくる。
俺はビックリしながら箱型のそれを受け取る。
白と赤の基調のプレゼントボックスだ。
「開けてみな」
「え?良いんですか?」
「開けても?」
「おうとも!」
満面の笑顔を見せる智明さん。
俺達はまた顔を見合わせてからプレゼントを開ける。
そこには.....同じ形だが色が違うそれぞれの時計があった。
俺と栗葉は目をパチクリして、貰って良いんですか?、と聞く。
智明さんは、おう。俺からのクリプだぜ!、と答えた。
「有難う御座います!」
「嬉しいな。栗葉」
「うん!」
そんな感じで居ると。
智明さんは、おうおう。そんなに喜んでくれると爺も嬉しいぞ、と口角を上げて笑顔を見せた。
そして大博さんが智明さんの首を絞める。
何故俺には無いんだ偽サンタ、と、だ。
「きょ、兄弟は何時も俺から何か貰ってるだろ.....」
「は?まあ確かにそうだけど。俺だけ別かお前」
「く、苦しいぞ平凡な民よ.....サンタの首を絞めるとは.....」
穂高さんにも渡して栗葉にも渡して。
俺にもくれたが何故か大博さんの分は無かった。
その光景に俺達は苦笑いでそして止める。
智明さんと大博さんを、だ。
☆
「お兄ちゃん」
「.....どうした?栗葉」
「とても楽しかったよね」
「.....だな」
夕暮れ時。
俺達は遊んでから帰宅していた。
大博さんと穂高さんと智明さんと別れて、だ。
それから栗葉と、楽しかった、と会話していた。
栗葉はニコニコしている。
そんな栗葉と一緒に歩いている際に俺は立ち止まった。
それから俺は栗葉に向く。
「栗葉」
「.....何?お兄ちゃん」
「お前に渡したいものがある」
「.....え?」
俺は静かに通学鞄からそれを取り出す。
それは.....赤と白に梱包された袋。
目を丸くする栗葉。
だが少しだけ察した様に顔を赤くした。
それから、え?、と声を発する。
そしてそれを渡した。
「.....開けてみな」
「.....こ、これって.....」
中身はスノードームだった。
サンタクロースがデザインされた、だ。
栗葉が、え?、と驚愕して俺を見てスノードームを見て俺を見てスノードームを見たりを繰り返した。
そして涙を浮かべる。
「.....あ、有難う。お兄ちゃん。とっても嬉しい.....嬉しい!!!!!」
「.....そうか。良かった」
「お兄ちゃんが買ってくれているとは思わなかった!とっても嬉しい!!!!!」
「よ、良かった。そんなに喜んでくれて」
すっごくすっごく嬉しいから。
お兄ちゃんからのクリスマスプレゼント.....大切にするね。
と胸に手を添えて笑顔を見せる栗葉。
俺はその姿を見つつ、ああ、と笑顔を見せた。
すると.....栗葉は何かを通学鞄から取り出して見せる。
これもやはり白と赤の基調のビニール袋。
「実は私もなんだけど」
「.....え?マジか」
「.....うん。お兄ちゃんの為に、だよ」
「.....開けても良いか?」
うん、と少しだけ恥じらいながら俺を見てくる栗葉。
それから俺は直ぐにプレゼントを開く。
そこには白のマフラーがあった。
俺は見開きながら.....栗葉を見る。
そして.....笑みを浮かべた。
「.....栗葉」
「.....な、何?お兄ちゃん.....?」
「すっげぇ.....嬉しすぎる。本当に有難うな」
「.....お、お兄ちゃん.....」
赤くなる栗葉。
俺、お前と一緒で良かったよ。
こんな暖かいもの.....貰った事無い。
俺は涙を拭いながら.....その様に告げて苦笑する。
栗葉は、そ。そうなんだ、と頬を掻く。
それから口角を上げた。
「.....でもその、本当にお互いに.....良いクリスマスだね」
「.....そうだな。確かに」
「とっても幸せ。.....お兄ちゃんと付き合えたらもっと幸せだけどね」
「.....今は無理だけどな。ごめん」
アハハ、だね。
と少しだけ苦笑いを見せる栗葉。
だけどそれとは裏腹に嬉しそうにスノードームを天にかざしてニコニコする栗葉。
俺はその姿を見て、本当に良かった、と思う。
心から幸せだ。
これは俺達のクリスマスイブの.....秘密の出来事になる。
誰にも言わない俺達だけの秘密だ。
fin
クリスマスイブ。.....因みに道春と栗葉の場合は.....? アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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