VS 出撃! 六花特殊作戦群 (対戦相手(作者さま):南木さま)

【神の代理戦争】 【VS:長曾祢 要】 【ダイス:②➏】 【戦名:とうはん】

(約1800文字) その一 タワー

【神の代理戦争】

【VS:長曾祢 要】

【ダイス:②➏】

【戦名:とうはん】


『ハ~イ! ルールは簡単! 最上階にある七色のゴール台座に一番最初に触ったら勝ち! ソレ以外は何でもアリ! ネ、簡単デショ。それではレッツスタートおお!』

 軽快で明るい音楽とともに声が言う。どこかにスピーカーでもあるのかと思ったが、見回しても見当たらない。もしかしたらテレパシー系の力なのかもしれない。

 まるでどこかの会社のOLみたいな格好をした茶髪の女性は、目の前にそびえ立つ塔を見上げて、嘆息をつく。高さはゆうに数百メートル、下手したら数千メートルはあろうか。何階建てなのかも分からない。

 タワーはガラスみたいな透明なものでできていて、それらを構成するブロックの一つ一つには動物が埋め込まれていた。動かないので、おそらくは死んでいるのだろう。

(なんか、寒いわね)

 そこで初めて気付いて、思わず腕や肘をさする。よく見ると自分が立っている地面は、タワーの外壁と同様に透明だった。その地面から冷気が上ってきている。

(ガラスかと思ったけど……氷? スケートみたいね)

 滑らないように気を付けないと、という取りとめもない心配は、しかし次の瞬間に吹き飛んでしまう。自分が立つ氷の下、はるか眼下に、回転する巨大なミキサーがあったからだ。

 よく目を凝らさないと分からないが、どうもそのミキサーは徐々に上に、つまりは女性の足元へと上ってきていた。

(なにこれ……⁉)

 女性と同様に、周囲にいた人々が足元のミキサーに気付いたようで、口々に何か言っている。

 人々と言っても、モチモチとした着ぐるみを着ていて、中の姿は分からないのだが。それが数十人ほど。

(今回の戦いは集団戦なのかしら……? あれ? あの人は着ぐるみを着てない)

 モチモチ着ぐるみの集団の中に、一人だけウェイター服に身を包んだ男がいた。目付きは悪く、人相も悪い。どうあっても仲良くはなれなさそうなタイプだと直感したし、仲良くなりたいとも思えなかったが。

「早く早く!」「急げ急げ!」「これに勝って借金をチャラにするんだ!」「死にたくねえよお嫌だよお怖えよお!」「俺が一番だ!」

 口々にわめきながら、モチモチ着ぐるみたちがタワーの入口へと殺到していく。

 いま入り口に急いでもモチモチたちに押しつぶされてしまってまともに動けなさそうだし、なによりもタワー内にどんなものがあるのかも分からない。罠などがあって、モチモチたちのせいで身動き取れず、何もできずに戦死する……なんて、笑い話にもならない。

 とりあえず女性は様子を見ることにする。状況の確認。少なくともモチモチ着ぐるみたちがいなくなって、入り口が通りやすくなるくらいまでは。

 はるか上のタワーの最上階があると思しき場所を見上げると、虹のような七色の光がほのかに見えた。あれがゴールの台座の光なのだろう。

 まあ、この程度のタイムロスくらいなら、退魔士としての能力を使えばいくらでも挽回できる。

 ……と、思っていたら。

 離れた場所に、女性と同じようにタワーの方を見ていた男が口を開いた。

「『ラッシュフィールド』」

 途端、それまで一面スケートリンクのようだった氷原が、単一の植物が生い茂る草原へと変貌する。

「⁉ なにこれ……⁉」

 思わず周囲に首を巡らす女性のことなど意に介さずに、

「これで邪魔なミキサーは消した。次は」

 厳密には、ミキサーは草原の地面の中に埋まっている。とはいえ大量の土と植物の根によって、一時停止状態になってはいるが。

 ウェイター服の男がタワーへと手をかざす。

「要は、てっぺんの台座とやらに触ればいいんだろ。ブッ壊せ、『グランドエッジ』」

 タワーが立つ地面からいくつもの巨大な岩の塊が飛び出して、タワーの一階部分を粉砕していく。一階のトラップを攻略中だったのだろう、内部にいたモチモチたちの悲鳴や絶叫が聞こえてきた。

「ちょっと、あなた、正気……⁉」

「アア?」

 思わず言う。男は初めて女性の存在に気付いたようだった。

「ナンダ、まだ残ってやがったのか。チッ、邪魔なヤツら全員一度に皆殺しにするつもりだったのにヨオ」

「……正気とは思えないわね……」

 男が女性へと手をかざす。さっきと同じ地面からの岩攻撃を使うつもりなのだろうか。そうアタリをつけて、『反重力跳躍』によって女性が空中へと跳び上がろうとしたとき。

 一階部分が破壊されて、バランスを失った巨大タワーが二人の方へと崩れてきた。

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