VS MDCの少年少女 (対戦相手(作者さま):東美桜さま)

【神の代理戦争】 【VS:高天原唯】 【ダイス:④➏】 【戦名:『こうそう』】

(約1700文字) その一 響き渡る啓示

【神の代理戦争】

【VS:高天原唯】

【ダイス:④➏】

【戦名:『こうそう』】


 戦場はこの都市を中心とした半径10キロの円の内部。

 クリア条件は対戦相手の生命反応をこの戦場から消すこと。要は殺せば勝ち。

 戦場の円の外縁部にはオーロラ状の壁が張り巡らされている。対戦相手をこの壁の外部に追い出すことでも勝利となる。殺すのが嫌なら、この方法を取ればいい。

 準備期間は三か月。その間に対戦相手を殺す準備を整えて戦いに臨むこと。このテーブルに置かれている金塊の山は、その準備のために好きに使って構わない。

 なお戦場の円の中心を通って、都市を東西に二分するバリアが存在する。これにより東西間を行き来することはできないが、電話などによる通信は可能。

 このバリアは準備期間の終了とともに消滅する。そうしたら存分に殺し合えばいい。

「これで説明は終わり。わしの役目も終わりというわけじゃ……」

 お世辞にもきれいとはいえない部屋の中、戦いの説明を終えて、目の前の椅子に座っていた老人は血を吐いて倒れる。死んでいた。どうやら事前に致死量の猛毒を飲んでいたらしい。

 その死体をマリンブルーの瞳で冷ややかに見下ろして、金髪をツインテールにした少女がつぶやく。

「……三か月もこんなところで暮らせっていうの……⁉」

 頭脳明晰な名探偵がするように、あごに手を当てて少しの間考えてから、

「……バリアはあっても通信はできるんでしょ……それなら……」

 ふふ……と、その口元にほのかな笑みを浮かべさせた。


――


「クソが! 三か月も待ってやれるかってんだ!」

 眼下に倒れる老人を見くだすように見下ろして、ウェイター服を着た男は悪態をつく。

「そんなバリアなんかぶっ壊して、さっさとぶっ殺して終わりにしてやる!」

 目の前に積まれた金塊の山には目もくれず、男はドアへと向かう。ノブを握り、外へと出ようとしたとき、窓の向こうから大音量の声が聞こえてきた。

『『デストリエルの巫女』として命令するわ。私の対戦相手は自害しなさい』

「ア……?」

 都市の各部に設置されている、緊急時に使用されるアナウンススピーカーからの声のようだ。

 わずかなノイズを残して、その放送が終了する。

「何だア、いまのは……?」

 訳が分からない。

 対戦相手と言っていたことから、もしかしていまのが自分の今回の敵なのか。

 だとしたら間抜けなやつだ。そんなふうにただ『言った』だけで、この俺が自殺なんかするかよ。心の中で男は、まだ見ぬ対戦相手を嘲笑する。

 ウェイター服を着たこの男――ボーイは知る由もないが、相手は『デストリエルの巫女』と呼ばれる存在であり、対象が『人間』であれば自身の寿命と引き換えにして、どんな者でも屈服させることができるのだった。

 ……今回はラッキーみたいだ、こんな間抜けなやつが相手なら楽勝だぜ……ほくそ笑みながら、改めてドアノブを回して外に出ようとしたとき、スピーカーからまたもノイズが走り……。

 次なる『啓示』が辺りに響き渡った。


――


 四方を壁に囲まれた、窓のない部屋の中で、金髪ツインテの少女は疑問の声を発する。

「おかしいわね、もうそろそろ帰還してもいいはずなのに……」

 この部屋に備え付けられている放送設備により、都市全体に『デストリエルの巫女』として自害の命令を伝えた。それなのに、いまだに自分の身体は帰還の光に包まれていない。

(もしかして、聞こえない場所に隠れているのかしら……)

 そうだとすれば、少しだけ時間が掛かりそうだ。

 少女はマイクに形の良い口を近付けて、もう一度、

『『デストリエルの巫女』として次の命令をするわ。私の対戦相手を殺しなさい』

 さも当然のことのように、きれいな声で言った。


――


 『啓示』が終了すると同時に、ドアの外から何人、いや何十人もの駆ける音が近付いてくる。それらはウェイター服の男がいるドアの外で立ち止まると、思い切りそのドアを蹴り破ってきた。

「何だア……⁉」

 とっさに飛びのいて、ボーイはドアの下敷きになるのを回避する。……と、息つく間もなく視界に飛び込んできたのは、ドラム式のマシンガンを始めとした、多種多様な銃火器を手にした人間たちの姿だった。

「何だア、テメーラ……⁉」

「「「「死ねええええエエエエ!!!!」」」」

 火花や硝煙とともに、視界を埋め尽くす無数の弾丸が撃ち放たれた。



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