VS 突貫同盟の番外勤務 (対戦相手(作者さま):ソルトさま)
【神の代理戦争】 【VS:大精分霊・楓迦】 【ダイス:⑤➏】 【戦名:『びーちふらっぐ』】
(約1800文字) その一 吹き荒れる暴風
【神の代理戦争】
【VS:大精分霊・
【ダイス:⑤❻】
【戦名:『びーちふらっぐ』】
暴風が吹き荒れる。
そのなかを、ウェイター服を着た男――ボーイは、顔を腕で覆いながら、心の中で舌打ちを漏らしていた。
(クソが……ッ! いきなりなんだってんだ……ッ!)
不思議なことに、まるで台風が訪れたときのような暴風が吹き荒れているのはボーイがいる地表のみで、彼の頭上、空高くでは雲一つない青さがきらめき、さんさんとした太陽光が降り注いでいた。
ボーイが召喚されたこの戦場、元々は、手のひらの隙間から水のように零れ落ちる極小粒の砂がひしめいている、広大な砂漠だった。
それがいまや、全ての砂を吹き払ってしまいそうなほどの、凄まじいハリケーンに飲まれている。
ときはおよそ一分前にさかのぼる。
砂、砂、砂。砂以外の何も見えない砂漠の中に、ウェイター服に身を包んだ男、ボーイは召喚されていた。
いや、砂以外に見えるものは、あった。視界のはるか先、ボーイがいまいる場所から一段高い地点――砂丘と呼べる場所に、細長い棒のようなものが突き立てられていた。
ボーイがいる場所からは遠く、いま一つ判断しかねるが、おそらくはポールだろう。その細長い棒は目測一メートルほどで、その頂点にはこれ見よがしに目立つ真っ赤な旗が飾られていた。
そこまで確認したとき、不意に軽快な音楽が周囲に鳴り渡るとともに、何者かの声が大音量で響いた。
『ハーイ! それでは今回の対戦ルールを説明しまあーす!』
響く軽快な音楽に合わせるかのような、ノリノリの声だ。
聞き覚えはなく、以前ボーイが聞いたシャドーとかいう天使の声とも違う。そもそも、シャドーとかいうやつは、こんな軽い感じでしゃべりはしないだろう、性格的に。
おそらくは、シャドー以外の、この戦場を司っている天使の声なのだろう。知らないが。
『ルールは簡単。いまあなたたちのずっと先に見えている砂に埋まっている赤い旗付きポールを引き抜いて、その下の方の青く塗られている部分に一番最初に触れた人が勝ちデース。ネ、簡単デショ』
聞いているだけでイライラしてくる声だ。周囲に自分以外の生物の姿は見当たらない。声は『あなたたち』と言っていたことから、ボーイ以外にも他にいることは予想できるが、少なくともいまは見えない。
チッ! 舌打ちを漏らす。殺すことは好きだが、だからといって、どこにいるかも分からないやつを探すのは面倒くせえ。こんな茶番はさっさと終わらせるに限る。
ボーイが砂を踏んで一歩出ようとしたとき、ノリノリなまま声が注意する。
『ノンノン! 焦っちゃヤあよ。あなたたちの周りは円柱状のバリアで囲まれているから、いま出ようとしても出られないんだから。バリアが消滅するのはいまから一分後。それまで我慢してネ』
その言葉を最後に、声は聞こえなくなり、軽快な音楽も途絶えた。
不愉快な声と音楽が聞こえなくなったのはいいことだが、バリアだと……? 正体不明のやつの言うことなど信じるつもりなどないが……ぶざまな醜態をさらすのは屈辱的なので、ボーイは手のひらを前に突き出してみる。
すると、声の言った通り、目には見えない透明な何かが、手に触れた。これがおそらくバリアなのだろう。
試しに懐から取り出した果物ナイフを突き立ててみるが……ガキンという音を出したものの、不可視のバリアには亀裂一つ入らなかった。
ボーイは頭上を見上げる。足元に魔法陣を展開し、空中を飛ぶことができる魔法のじゅうたんを呼び出そうとして……やめた。
あの声は円柱状のバリアと言っていた。ならば、青天井に見えるこの頭上の先も、やはり行き止まりになっていて、じゅうたんで飛んでも頭をぶつけて笑いものになるのがオチだろう。
そうこうしているうちに、再びあの不愉快な声が聞こえてくる。
『それではカウントダウンを始めまーす。10……9……8……』
知らないうちに一分が経とうとしていたらしい。
『7』
視界に映るのは無数の砂と、赤旗のついたポールのみで、人や他の生き物の姿は見えない。
『6』
ならば、こんな面倒くさい茶番はさっさと終わらせるに限る。
『5』
ボーイは再び足元に魔法陣を展開させる。バリアが消滅すると同時に最高速で飛び出し、速攻で勝利するためだ。
『4』
カウントダウンが進んでいく。
『3』
『2』
『1』
『0! それでは、対戦すたーとお!』
その直後、無数の砂がひしめく広大な砂漠に、あらゆるものを吹き飛ばすような暴風が吹き荒れた。
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