第49話 協力者三上
「あんなやつに彼氏? 無理じゃないの……」
「いや、そう言わずにお前も考えてくれ」
昼休みの校庭。
俺は芝生にあぐらをかき、ぼやくように頬杖をつく。
向かいには脚を崩した三上。今日もいつものいちごミルクをチューチューしている。
そして、その頭には、橋本が玉城にプレゼントした白い花の髪飾り。切られてしまってバランスの悪い前髪を整えるために、玉城から借りているのだ。
「玉城も、見た目だけなら最強の美少女なんだけどなぁ」
「なに? あんたあいつのこと好きなの?」
「んなこと、ひと言も言ってねぇだろ」
「言ったようなもんでしょ」
「あっそ。まぁ、俺はお前の方がかわいいと思ってるけどな」
「……うん」
三上は実に不機嫌そうに顔をしかめ、俺の手をぺたぺたさわってくる。
顔と行動が合ってないんだよ。
最近、こんなやり取りばかりしている気がする。
ただのノロけだって?
そうかもしれない。
だって、いきなり素直になる三上がかわいすぎてクセになるんだもの。
「でも、あいつって、男子に興味あるのかしら」
「あるんじゃねぇの? 今は遠ざけてるってだけで」
「中学時代はモテてたって言ってたし」
三上は玉城の縁結びに興味津々。
まぁ、こいつも結構な乙女だからな。玉城とのお泊まり会でいきなり恋バナを仕掛けるくらいだし。
それにしても、これで共有する秘密がまたひとつ増えたわけだ。変身の秘密に縁結び活動に……って、もう半分関係者みたいになってるじゃねぇか。
実際、三上の協力は俺にとっては頼もしかったりする。なにしろ、玉城の縁結びは結奈が手を引くほど。縁結びの難易度としては最高レベルだ。正直、俺ひとりでやっていくのは、少々力不足のような気もする。
「前提として、玉城についていける男がいるかどうかだなぁ……」
「それを見つけるのがあんたの仕事でしょうが」
「そ、そうだな……」
「しっかりしてよね」
「ああ、俺が導くカップル第1号は玉城で決まりだ」
「そうよ。わ、私としても、あいつには、その、幸せになってほしいから」
「任せろ。俺は伴神社の縁結びウサギだからな」
俺は胸の前で拳を握りしめる。
秘密を守る代わりに絶対服従なんて、ふざけたきっかけだったかもしれない。それでも、こうして俺が再び縁結び活動に対して自信を抱けるようになったのは、他ならぬ三上のおかげなのだ。その三上と、今後も縁結び活動に取り組んでいける。
なんだか、うまくいきそうな気がすると思わない?
「あっ、ヤバ! あいつら来る!」
「ふーん」
血相を変えた三上が身を乗り出し、両手で俺の肩を掴む。
「あんた、ウサギになりなさいよ」
「なんで?」
「恥ずかしいの!」
はいはい、わかりましたよ。
少しだけ嫌そうな顔をしてやった。俺だって、たまには伴修治として玉城や橋本とも話したい。しかしながら、必死な三上のかわいさに免じて変身してやる。
ぽわん!
残された制服がバサバサと靴の上に丸まった。三上はそれを植え込みの中へと乱暴に投げ入れる。もうちょっと丁寧に扱えよと、内心で文句を垂れつつも、俺はふわりと三上の膝の上に飛び乗った。
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