第18話 休日の三上♡

 日曜日。空は突き抜けるような青で、爽やかな日差しが降り注ぐお出掛け日和。

 

 いや、暑すぎる。

 

 俺はTシャツに海パン、大きなリュック、ビーチサンダルという格好で、駅構内を歩いていた。外から生温い風が入ってくるとはいえ、屋内なので暑さはマシだ。しかし、家から駅までの道のりで、すでにこめかみから汗が滴り落ちてくる。まだ、昼前だぞ……こりゃ、テニスの試合会場は地獄かもしれない。

 

 待ち合わせ場所である金色時計の前に到着。三上のことだから、一体どれくらい待たされるだろうか、なんてことを思っていたら、傍のベンチに意外な人待ち顔を見つけた。


「遅い」


「すまん。って、一応、待ち合わせ5分前なんだけど」


 三上はすでに集合場所に来ていた。ベンチに座っていたということは、今来たってわけでもなさそうだ。


「なに見とれてんのよ」


「見とれてねぇよ」


 はじめて見る休日の三上。


 正直なところ、俺は見とれていた。


 青いギンガムチェックのスカートに、細かいドット柄の白いブラウスを合わせたコーデは、少女趣味ながら普段より大人っぽい印象を受ける。それもそのはず。三上の少し上気した頬はほんのりピンクで、唇だって微かに濡れている。若干の化粧をしているようだ。栗色の髪によく合うベージュのキャスケット帽も実にかわいらしい。それから、スカートの下からのぞく膝はつるつるで、足元には人形が履いていそうな黒くて小さな革靴が……って、やべぇ。どんだけ細く見てんだよ。


「まぁ、お前の私服を見る貴重な機会だし、きっちりまぶたに焼き付けとくよ」


「きっしょ」


 三上が嫌そうな顔で、すくっと立ち上がる。甘酸っぱいシトラスの香りに、思わずドキっとしてしまう。


「っていうか、なによ、あんたの格好は? 海にでも行く気?」


「バレてたか」


 そんなに海パンだとわかりやすかっただろうか。


「女子とカフェに行くっていうのに、アロハ柄はないでしょ」


「悪かったな」


 確かに、普段部屋着にしている縁結び装束はまずかったか。せっかく、三上がオシャレしてきたんだし、俺もちょっとはマシな格好をしてくれば良かったと今更後悔。


 でも、それってなんだかデートみたいじゃない?


 待てよ。もしかして、三上もデート気分だったりして? だって、あの格好はかなり気合い入ってるし。化粧までしちゃって。いやいや、三上に限ってそれはないか。第一、俺は三上に対して数々の変態行為をしてきたんだ。恋愛対象としては、見られていないはず。


「さて、とりあえず、店に行くか」


 なんて思いながらも、なんだか意識してしまう。


「昼飯時で混む前に入ろうぜ」


 俺は三上の姿が視界に入らないよう、先行して歩き出した。駅の喧噪に紛れて、背後にぴったりとくっついた三上の「うん」という返事が妙に大きく耳に入ってきた。

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