第185話 出産
臨月のフェイとローガンから出産が近いとの連絡が来た。いつも使っている鷹の使い魔と言うことは緊急事態なのかもしれない。
出産は命懸けだ。助産婦さんが居るとは言え、回復魔法と活性魔法の使える人間が居た方が良いに決まっている。
「ただいま!」
「お帰りなさいご主人様。今お湯を沸かしている所です」
「産まれる寸前じゃないか……。全力疾走してきて良かった」
「師父、間に合って良かったです」
「旦那様、二人が産気づいてもう三十分が……」
みんなフェイとローガンの初産と言うこともあり、浮足立つっている。
「大丈夫。安産でもそれ位の時間は掛かる。陣痛は始まっているんだろ?」
「はい」
陣痛を早める薬は使っているはずだから、後は出産を待つしかない。時間が掛かるようなら体力を回復する活性魔法の出番だ。
「ふうううううぅぅぅ!」
「うぎぎぎぃぃぃぃぃ!」
二人の踏ん張る声が聞こえる。女の戦場に立ち入るのは野暮だが、これでも医学を学んだ者だ。フェイの部屋に入る。
「うううううぅぅぅぅ!」
助産婦さんが気を利かせてベットの横を空けてくれる。フェイの手を取り強く握りしめる。
「フェイ、何かしてほしい事はあるか?」
「はぁはぁ、私は良いからローガンの様子を見て来て」
「分かった活性魔法いらないか?」
「大丈夫よ」
部屋から出てローガンの元に向かう。同じ時期に産気づく何て強い絆を感じる。
「ローガン入るぞ?」
「入らないで下さい! 入ったら嫌いになりますよ!」
「分かった……」
こういう時、男は無力だと痛感する。女性が出産を見られたくないと言うのは知っていたが言葉にされると辛い。
それから、一時間が過ぎてローガンが出産した。性別は元気な男の子だ。産声でみんなの表情が弛緩する。
「頑張ったな、ローテシア」
「師匠、怒鳴ってすいませんでした……」
「いや、俺が無神経過ぎた。活性魔法かけてもいいか?」
「はい。お願いします」
ローガンに活性魔法をかけていると一際大きいフェイの声が聞こえた。
「はい。お父さん、元気な女の子だよ」
「頑張ったな、フェイ。母子ともに健康で安心したよ」
「私にも後で活性魔法をお願いするわ」
こういう時は自分が欠陥でも魔法士で良かったと思う。
「おめでとうございます! フェイさん! ローガンさん!」
「うう、感動で前が見えません!」
「おめでとう、二人とも!」
みんなが祝福の声を上げる。
これはベスに名付け親になってもらわないといけないな、爺バカだし。
ローガンは叔父さんかな、ウルルスが付けてもいいんだが、いまいち自分のネーミングセンスに自信が無い。名づける機会がほとんど無かったのが原因だ。
「ベスに手紙書かないとな、俺が直接迎えに行っても良いんだけど」
「それなら私の馬車を貸すわよ?」
「ウチの馬車な」
「世話は私がしてるんだから別にイイでしょ!」
「護衛の二人がやってるもんだと思った」
「私だって何時までも世間知らずで居たくはないもの」
「腐ってるけどな。頭が」
「今は関係ないでしょ!」
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