第184話 冒険者ギルド長
冒険者ギルドの奥の部屋に恰幅の良い人物が書類に向かっている。年の頃は五十代前後。頬に古傷がある事を除けば特に特徴の無い顔をしてる。顔面偏差値は低め。
「君が暗殺者ギルドの使いかね」
書類から顔を上げてウルルスを睨む。前暗殺者ギルド長と顔見知り、恨まれる理由は無いはずだが、冒険者を返り討ちにし過ぎたかもしれない。
「ウルルス・コルだ」
「伝説級の暗殺者が何の用かね?」
「サングィス家が滅んだ理由が知りたい」
「サングィス家が滅んだ? それが冒険者ギルドに何の関係がある?」
「冒険者ギルドの情報網にも引っかかっていないか……。特に期待してなかったが」
「本当に貴様は何しに来たのだ……」
「いやなに、いい加減ウチに冒険者を送るのを止めてもらいたいんだ」
ギリっと歯を食いしばる音がする。拳も心なしか震えている。大きく息を着くとギルド長は口を開く。
「あれは喰い詰めた冒険者達が勝手に暴走しただけだ……」
「それだとおかしいんだよ」
「ナニ?」
「それだと乗り合い馬車に乗れないし、娼館で女も買えない。酒場で酒を飲むことも出来ないハズだ。誰かが金を撒いてるとしか思えない」
「そ、それは……」
「お前だろギルド長」
「っ……」
「もう止めろ、俺には魔法士の護衛が二人居る。これ以上死体を増やすな」
「トーマスの願いでもあるのだ」
トーマスは前暗殺者ギルド長の名前だ。なぜここでその名前が出てくるのか。
「は、はぁ……、カリア達が俺の毒牙にかかる事を懸念したのか……」
「そうだ」
「それならもう手遅れだ」
「そうか、トーマスの懸念通りになったな……」
「なぜ、そこまで嫌われたのか、本人に聞きたかった」
「あれは、親バカだったからな。昔からのミリアたちの親しくしていたお前が目障りだったんだろう」
「それで嫁に行きそびれていたら、どうするつもりだったんだ」
「何時の世も父親とはそお云うものなのだろう」
「アンタにも娘が居るのか?」
「いや、男ばかりだ。息子たちが父親にネチネチと嫌がらせを受けているとは聞いている」
ティアは両親が居なかった、フェイは育ての親が爺バカになってしまった。ローガンは叔父バカだし、ロイは故郷が遠い。メルティアの父親は運至上主義だからウルルスが息子になった事を喜んでいる。
自分はかなり幸運なのではと改めて思う。娘婿の嫌みの一つもない。
「冒険者をけしかける事はしないが、腕自慢の冒険者が一定数居るのも確かだ。それらを止める事は私にも出来ん」
「分かった。取り合えずそれでいい。出来ればサングィス家が滅んだ理由が分かれば教えて欲しい。どんな些細なことでも構わない」
「分かった。冒険者達にも聞いてみよう」
「頼んだ」
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