第177話 謁見(大失態)
王都に着いて早々に王城に向かう。アポは無いが多分大丈夫だろう。
「何者だ、そこで止まれ!」
門番の衛兵に止められた、当たり前である。
「徒歩で失礼する。私の名はウルルス・コル。王様に火急の用があって参りました」
「貴様平民であろう、本来なら衛兵に話しかけることさえ、不敬だと分からんらしいな」
確かに今の自分は平民扱いされても文句は言えないが、ファミリーネームが有る時点でそれなりの立場があると分からんのだろうか?
「城の誰でもいいので上の人にコル家の者が来たとお伝え願えないでしょうか?」
「コル家? 知らんな」
「問題になる前に上の人に確認したほうが身のためですよ?」
そう言うと少し怖くなったのか二人の衛兵のうち一人が門を離れて王城に向かう。ウルルスが侵入者なら今の隙をついて一人を倒して侵入するところだ。
「今確認中だが、余計な素振りはしないことだ」
「分かってますよ」
さすがに長年門番をやっているのか、釘を刺すことを忘れていない。丸腰の相手に警戒しすぎではないかとも思うのだが。
もう少し格調の高い服を着て来るべきだったかもしれないと思い始めているころに隊長らしき人物がやって来た。
「隊長、お疲れ様です!」
「で、こいつが例のコル家を名乗る人物か?」
「はい」
「捕縛しろ」
「は?」
「大罪人だ、捕縛しろ!」
そういえば王家は懸賞金を掛けてたなと今更ながらに思う。
「捕縛は困るな。何の罪を犯しったて言うんだ」
「口にできるか!」
確かにウルルスには懸賞金が掛けられているが、何の罪かは明言されていない。前国王は病死とされているからだ。
「また来るよ」
「逃がすか!」
掴みかかる衛兵に当て身を食らわせ逃走を図る。三十八計逃げるにしかずだ。正面からは無理みたいだ。身分を偽るか、他のツテを使えば良かった。
「待て、逃がすな!」
ぞろぞろと湧いて出てくる兵隊。どいつもこいつも目が血走っている。捕まえれば栄転間違いなしの獲物が自らノコノコと現れたのだ。鴨葱に見えているかも知れない。ウルルスの実力を知っていたら追いかけようとはしないはずだが、下っ端の兵士が伝説の暗殺者の顔を知っているはずが無いので追われるのは必然だった。
内心全員ぶちのめしたい気持ちをグッと抑え、逃走を開始する。路地を曲がり、建物の屋上に飛び上がる。
「逃がすな! 捕まえれば近衛兵に昇格出来るかもしれんぞ!」
「「おぉ!」」
全く見当違いな場所に散る兵士たちを眼下に見ながら、兵士の練度からこの国の将来を憂うウルルスだった。
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