第178話 王の私室
余計なことをして王城の警備が強化されてしまった。自分が賞金首なのを失念していた。
これは昔使った王族の秘密の脱出路を使うしかない。
罠が無いといいのだが、十中八九、罠が追加されているとみて間違いない。
「と、思っていた頃が俺にもありました」
罠どころか松明まで付いてた。誰か定期的にこの道を使っていると見える。
王宮のトイレに繋がる隠し通路から王の私室に向かうが、前の仕事ではトイレで仕事した為、王宮の中はさっぱり分からない。
どうしたものかと廊下を歩く。近衛兵は気配を消せば問題では無いので、悠々と王宮内を動き回れる。
こういう時は使用人の動きで判断するのが賢明。大商人の屋敷で警護の仕事をしていた時に使用人の仕事ぶりで護衛対象が今どこにいるか分かったものだ。
しかし、今回は暗殺ではない。今後、暗殺依頼が来るかもしれないので色々と見ていくのも一興かと次々に扉を開ける。
ベットメイキング中のメイドが居たり、サボっているメイドを見かけたり、王宮のメイドとは言え色んなメイドが居た。ちょっとイタズラしてもいいかなぁ、とか思い始めていた時に王の私室らしき部屋を見つけた。
「タイミング悪いな……」
悶々とした気持ちのまま部屋に入る。壁一面が本棚、入っている本は様々、歴史書だったり兵法書だったり、娯楽書籍は見かけられない。
座り心地の良い椅子に座り、テーブルに置いてある読みかけの本を手に取る。
「真面目かと思いきや、こんな本を読んでいるとは……」
それは家のメイドにアーレーな事をしている官能小説だった。王であれば命令一つでメイドも股を開くだろうに、とか思いながら本を読み進める。
なるほど、借金の返済のために商人に仕えるメイドを快楽堕ちさせる内容。これは王では出来ない展開だ。下手したら自分の子が次代の王になるかもしれない王宮のメイドと商人の家のメイドではメイドの心持ちも違うだろう。
なんとなく、気持ちは分かる。
本の続きが気になって王が来るかもしれない。しばらくこの部屋で待とう。他に面白そうな本は無いだろうか?
本棚を物色していると奇妙な事に気付く、床の絨毯に擦れたような跡がある。これは隠し部屋が有るのかもしれない。ワクワクした気持ちで仕掛けのスイッチを探す。こういう時、本がスイッチになっているのが形式美だ。
「ここかな?」
持ち前の運で適当に本を手前に倒すと、ガゴっという音と共に本棚の一部がスライドし始める。
「ビンゴ」
隠し部屋の扉には鍵が掛っていた。しかし、開錠技術を持っているウルルスの敵ではない。
扉の向こうにはベットがあり、どうやら人が寝ている。誰だろうと思っているとそれが女性だと分かった。
隠し部屋に女性。エロい匂いがする!
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