第138話 封印の確認
不死の魔女の封印場所はウルルスしか知らない。今まで誰にも話したことは無いし、封印を解除したことも無い。だから気になったのだ、一度封印を解除して本体の胴体が復活しているかどうかを。復活していればその四肢は本体の所に戻ろうとするはずだ。
「すまんな。封印が問題ないならすぐに戻るよ」
「ご主人様、お気を付けて……」
「ウルルス。早く帰って来てね」
「師匠。ご武運を」
「師父、私も一緒に……」
「ダメだ。俺の足に着いてこれないだろ?」
「ロイさん、旦那様を信じましょう」
メルティアが信じるとか言い出すのは凄い変化である。家人と生活する内に少しずつ変わって来ている。信頼関係を築いてきたのだろう。
「留守はお任せください!」
「お嬢様方には指一本触れさせません!」
「ティアさんと鍛錬しながら適当にあしらっておきますよ」
メルティアの護衛三人デニス、フィリス、ソフィアは家人を全員助けるつもりのようだ。それが嬉しくてとても頼もしい。
練習生達は素人に毛が生えたくらいの戦闘能力なので役に立たないだろう。血の気の多い奴が勝手に賞金稼ぎに喧嘩売らないか心配だ。ティアに良い所を見せようとして暴走するのも十分考えられる。そんな奴らが死んだところで心は全然痛まないのだが、教えた時間が無駄になるので出来ればやめて欲しい。
「一週間以内に帰って来るよ。約束する」
今回確認するのは左腕だ。魔法士は魔法を使う時に左手を前に突き出すことが多い。心臓に近いのが左腕だからだ。魔法士にとって一番重要な部分だと思う。
その場所は以前は幻のブランデーが作られていた場所で、今は誰一人として近づかない所だ。疫病が流行って以来、不毛の大地だ。馬車で行くにしても馬の飼料と飲料水で帰り道を考えてると半日居られるかどうかと言う場所なのだ。徒歩の一般人には封印場所を探し出す前にその廃村に辿り着くことも出来ずに食料と飲料水が尽きるのが早いと思う。
昼夜を問わず走る事の出来るウルルスしか辿り着けない。封印場所もまず思いつかないと思うし、封印も厳重にしてある。辿り着けたとしても封印を解く時間がネックになって泣く泣く帰るしかないのだ。
「封印が完璧なら放っておく、綻びが有れば中身を取り出してその場所を再封印して、別の場所に封印する」
「その場合は一度戻ってくるのですよね?」
「多分な、食料が尽きると思うし」
「狩りをすればいいじゃないですか?」
「動物がいればな、あそこはもう生き物が生きられる場所じゃないんだよ」
「なるほど」
「封印が面倒だから火山の火口に捨ててくるかもしれんがな」
「腕だけで火口から登ってきたらどうします?」
「嫌な想像させるなよ……」
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