第128話 勝負
とりあえず長旅をねぎらう為、食事をする事にした。護衛の二人は立っている。
「なかなかいいワインですね……」
「俺はワイン派じゃないんで良さが分からんので任せた」
「蒸留酒は料理に合いませんよ?」
「だから、単なる水だ」
「なるほど。お酒かと思いました」
メルティアはローガンが作った料理を黙々と食べている。文句が出ないところをみると満足している様だ。
「ただで帰る気はないんだろ?」
「ええ、勝負して頂けると助かります」
「条件は?」
「三回勝負で、負けたら素直に帰ります。勝ったら私を嫁に加えて下さい」
「てっきり、全員と別れて結婚しろと言われるかと思ったよ」
「そう思っていたのですが。この料理は美味しいし、身重の女性を放り出すほど非情じゃないです」
「それは助かるな。俺もその時は実力行使しなければならないし、墓守の仕事を増やしたくもない」
「お嬢様を殺す気だったのか!」
「許せん!」
落ち着けとナイフを二入の立っていた壁に投げつける。力加減を間違えてナイフは根元まで壁に突き刺さってしまった。
「食事の途中だが、勝負しよう。こちらから三人。そちらから三人でいいか?」
「対戦相手は選ばせてもらいますよ?」
「それぐらいのハンデは認めよう」
「では、アナタとアナタとアナタ」
順に指差されたのはティア、ロイ、ローガンだった。この家では弱い部類の人間ばかりだ。さすがに対戦相手の技量は見抜いているか……。
「舐められたものですね……」
「あわわ、選ばれました……」
「返り討ちにしてやります!」
ローガン、ロイ、ティアはそれぞれ席を立つ。護衛もカジノ王の側近という事でかなりの運を持っていそうだ。イカサマは俺が見抜くので流れと勝負勘次第でどうとでも転ぶだろう。
「で、勝負の方法は?」
「ポーカーの一回勝負でどうでしょう?」
「それなら早く済むな。レイズされたらこちらに勝ち目が無いからな」
「私のポケットマネーなんて微々たるものですよ?」
「どうだか……」
このお嬢様は金銭感覚が一般人とだいぶ違う。湯水の様に金を使う事に躊躇がない。
「先鋒は任せて貰いましょう」
ローガンがリビングルームのテーブルに着く。
「フェリア、行きなさい」
女の護衛はフィリアと言うらしい。ローガンの対面に座る。トランプはウチにあるイカサマ出来ないカードを使う。一回勝負なのでディーラーは置かない。交換枚数を申告して山札から引く。これなら純粋な運勝負だ。
「先に引きます?」
「では、お言葉に甘えて」
フェリアが山札から五枚カードを引く。ローガンが五枚引いて少し笑う。
「三枚交換します」
フェリアが三枚交換してローガンの番だ。
「このままで」
ローガンは笑みを深くする。勝ちを確信した笑みだ。
「「勝負」」
フェリアがツーペア。ローガンがストレートフラッシュ。ローガンの圧勝だ。
「ここまで運が強化されているとはな……」
誰にも聞かれない様に呟く。母体を守るためローガンの運がだいぶ強くなっている。
「口ほどにもありませんね」
「くっ!」
先鋒の役割は果たしたとローガンは席を立ち、後ろの二人のとハイタッチする。
「中堅は私が出ましょう」
メルティアが出るか……。これは負け確定だな。
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