第127話 恋愛感情
護衛が負傷したので入るのに時間が掛かったがメルティアは家に入って来た。
「狭い部屋ですね……。こんなところに住んで居るのですか?」
「お前の家はどうかは知らんが、広い部屋は暖めるのも一苦労だろうに、人間は雨風凌げれば、そこそこ快適なんだよ」
「貧乏人の考え方そのものですね」
「なんとでも言え。金に不自由な人間の方がこの世には多いんだよ」
「だから、一攫千金を望む。カジノが儲かるはずです」
「お前の家が儲かるのはそれだけの理由じゃないんだがな……」
「どういうことです?」
「それが分からない様ではカジノ王の地位は他の奴が継ぐ事になるな」
「貴方が継げば問題なしです」
結婚話を蒸し返された。
「貴方は分かっているのでしょう? 私はまだ若輩者ですから目上の者の意見には従いますよ」
「飯食ったら帰れ」
「つれないですね。そんなに私が嫌いですか?」
「俺はこれでも忙しい。医院の専属回復術士、副町長の仕事に暗殺。最近は世代交代で新入りの面倒も見る事になった。これ以上俺の仕事を増やすな」
「手広いと言うか無節操ですね」
「才有るモノの務めだ。仕方ない」
「師匠、叔父上からランドルフ古流剣術の師範にならないかとの打診が……」
「この町限定ならやるって送っておいてくれ」
「はい!」
また仕事が増えたがこの町も自衛が出来る者がいた方が安心だ。ただでさえ賞金稼ぎが来たりするのだから物騒と言えば物騒なのだ、この町は……。
「ランドルフ古流剣術? 聞かない流派ですね」
「超実践的は流派だからな、戦争や魔獣の討伐で活躍したんだが、師範級はガンガン死んでくから知ってる人間の方が少ないんだよな……」
「そうです。今師範は十人を切っています。このままだとランドルフ古流剣術はこの世から無くなるかも知れません」
「俺が生きてるうちは無くならんさ」
「何故です?」
「俺が希望する町民に伝えるし、ローテシアが産む子もランドルフ古流剣術を覚えさせるし、俺の子供は全員ランドルフ古流剣術を覚えようさせようと思ってる」
「それは知りませんでした……」
「私はそのつもりだったわよ? 自衛手段は有った方がいいもの」
「私も剣術の基礎を徹底的に反復してます」
「むう、拳術家として剣を覚えるのは抵抗ありますね」
「ロイは子供に拳術を教えればいいだろ。剣を持ち込めない状況もあるだろうし」
「なるほど、そうします」
完全にメルティアを無視したが、とりあえず今はこれで良いだろう。
「子供は多い方が良いと思いません?」
メルティアが何故か食い付いてきた。えぇ、お前はいらないんだけど……。
「資金面でもサポート出来ますし、お得ですよ?」
「ホント、お前は情には訴え掛けないな」
「そういう性分なもので……。好奇心は有りますが、恋愛感情を覚えた事無いですね」
「この人、結構ポンコツなのでは?」
「聞こえてますよ?」
「何歳ですか?」
「十八ですけど何か?」
「六年逃げ回ってた? アナタは十二才からご主人様を追っていたんですか!」
「追っていたのはお父様で私はオマケですよ?」
「そうだとしても、けしからんです! もしかしたら私がご主人様と結ばれなかったかもしれないポジションじゃないですか!」
「おい、ティアさんや俺を何だと思っているのかな?」
「少女愛好家?」
「ちょっとはオブラートに包めや、コラ」
「まだ守備範囲内ですね」
「俺は守備範囲が人より広いだけだ!」
「でも、ご主人様四十手前でしょう?」
「超年下好きです。すいません」
「責めてないですよ。年上好きなら私はアウトでしたし」
「うぅ、優しさが逆に辛い」
「変態ね」
「変態だな」
護衛の人間からは軽蔑の目で見られた。これが普通の反応なのだろう。
「私達はホントに気にしてませんから!」
「恋愛感情とはそんなに重要ですかね?」
「いいんじゃないか? 理解出来なくて、情に流されずに利が取れるからな」
「そうですね……。それはとても良い事です」
そういうメルティアは少し淋しいそうなのは気のせいだろうか?
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