第124話 出迎え

「ただいま~」

「……。遅かったですね、ご主人様」

「ごめんなさい。酒場で絡まれて酒飲み勝負してました」

「馬鹿ですか」

「すみません」

「いえ。その人が、勝ち目無いでしょうに……。どこの阿保ですか?」

「貴族の三男坊のゲニッツとお供達」

「どんな繋がりですか?」

「同じ暗殺者だよ。自慢話を止めるように勧めたら、酒場だから酒の強さで勝負することになった」

「勝ったは良いけど、それで飲み過ぎて帰れなくなったっと?」

「はい。その通りです」

「どこで寝たんです?」

「その酒場の仮眠室」

「なぜ、酒場に仮眠室があるのですか?」

「野暮な事聞くなよ……」

「野暮って……。まさかいい雰囲気になった時に!」

「まあ、そういう部屋を借りたんだよ、金出してな」

「一人で?」

「立てないほど飲んで何をしろと?」

「その割にはなんか匂いますよ?」

「前の客の匂いが移ったかな?」

「ま、そんなこともあるでしょう……。すぐに上書きすればいいことですし」

「いつの間にそんなエッチな子になった⁉」

「色々と町の奥様方に聞いたりしてるのですよ? 勉強熱心とよく言われます。あと私も頑張らないと、とも言ってました」

 この町が少子化で困る事は無さそうだ。それどころか出産ラッシュが起きそうだ。

「あ~、俺が稼いだせいで出産祝いとか色々町から出せるようになったしな」

「私は来年以降でもいいです。産むころには成人にもなりますし、赤ちゃんの世話とかしてみたいです」

「あ~、ティアは一人っ子だもんな赤ちゃんの扱いは知らんか」

「そりゃそうです。ご主人様は有るんですか?」

「異母兄妹が居たからな、三歳までなら十分面倒みれるぞ?」

「凄いです。私が妊娠してもバッチリですね」

「いや、人数には限界が……」

「雇えばいいんです人手なんて、ウチは裕福ですよ」

「そのそんな考え方だから賭けが弱いんだよ。前進しない者に運は来ないぞ?」

「うぐ、なんか真理を言われた気がします」

 運ではなくチャンスなのだが。あながち間違いでは無いだろう。

「そうだ、珍しくご主人様にお手紙です」

「本当に珍しいな……」

 ティアから手紙を受け取ると既に封が切られている。俺のプライバシーはないようだ。

「カジノ王の娘さんが来るそうです」

「うん、今確認した」

「歓待の準備をしておけてって何様ですか!」

「大富豪のお嬢様だろうなぁ」

「だとしても態度が有ります!」

「ティアも元お嬢様だったな」

「そうですよ。歓待されっぱなしです!」

「しかたは分からないと?」

「その通りです!」

 マジで使えない、と言いそうにそうになるのをぐっとこらえる。人間には得手不得手があるモノだ。得意な者がやればいいんだし。

「買い出しに行ったのか他のみんなは?」

「そうです。ご主人様に一番先に会うのは私と決まってます!」

「あ~。遅くなってすまん」

「ご無事でなによりです。おかえりなさい」

「ただいま」

 

 




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