第121話 ギルド本格再始動
暗殺者ギルドにスカウトされる人間は冒険者ギルドを辞めた人間が多い。ギルド員にスカウトされる者もいるが、大抵は古臭いままの入会試練で入って来る者が多い。
ウルルスは至上最高点で入会したが、それを他人に公言したことは無い。実力差が分からないほどの人間はこの業界に存在しないのだが、偶に存在する。ギルド長が何度も警告しても態度を改めないそうだ。今日はその相談で呼び出された。
「今後に影響するし、一度締めとくか?」
「できれば、穏便に済ましてください」
「最大限手加減はするけど、死んだらごめんな。で、相手の名前なんだっけ?」
「ゲニッツ・シバルですす」
「ああ、貴族様の三男坊だったけ? お付きまで暗殺者になるとか珍しいから、なんとなく覚えてたよ」
「確実に仕事はこなしますが、いちいち酒場で自慢するのが玉に傷ですね……」
「仕事に張り合いがあるのは良い事なんだけどな」
「主様。何とかなりませんか?」
「それは俺の管轄なのか? イジメるぞコノヤロー」
「その言葉だけで濡れてしまうので止めて下さい……。今の優先すべきはゲニッツです」
面倒なら達成不可能な任務与えればいいだけだと思うのだが。ギルド長のカリアなりの優しさなんだろう。
「一回話してみるか、話を聞かないなら脅しもアリだよな?」
「やり方は主様に一任します」
ゲニッツは取り巻きが二人いたのですぐに分かった。普段からゲニッツ様と呼ばせているのか……。正直苦手なタイプだ。
「君がゲニッツか。お近付きのしるしに一杯奢らせてくれないか?」
「無礼だぞ! まずは名を名乗れ!」
暗殺者ギルドの酒場で貴族も庶民も関係ないと思うのだが、取り巻き連中とやり合う気はないので素直に名乗ろう。
「ウルルスだ。ここでは古参になる」
「お前の様な若造が古参? 今まで随分と簡単な任務ばかりこなしてきたのであろうな!」
カウンターに入っているメリアが殺気は出していないが、凄い目で取り巻きの男を睨んでいる。
「俺はゲニッツに用があるだけで、お前と会話する気はないんだけど?」
「貴様~!」
「まあ、待てグロッグ。奢ってくれると言うんだ素直に奢って貰おう」
「ですが、ゲニッツ様」
「高い酒を頼めばいいのですよグロッグ。少しは溜飲が下がるってモノです」
「そうだな、メリッサの言うとおりだ。この店で一番高い酒を三杯頼む!」
「俺はエールで」
三人が小馬鹿にしたような顔をしている。いや、金が無い訳じゃないので小馬鹿にされても困るのだが……。酒が運ばれてくる、ウエイトレスはアリアだ。
「美味い……。相当高い酒だな」
「……。おい、バーテンダーこれは幾ら位するんだ?」
「グラス一杯で金貨一枚くらいですかね」
予想外の値段に三人は酒を吹き出しそうになっている。勿体ないから止めてほしい。
「おいおい、大丈夫か?」
「貴様こそ財布は大丈夫なんだろうな!」
「問題ないよ。カジノで勝ったばかりだし」
「なんだ、所詮はあぶく銭か……」
「ああ、気にせず飲んでくれ」
アリアがゲニッツを睨んでいる。なんか酒場中で嫌われて無いか?
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