第119話 隠し部屋
「ただいま~!」
「今戻りました!」
外の騒がしさのせいで少し大きな声で帰宅の挨拶をする。
「お帰りなさい、ご主人様。それと師匠も」
「ウルルスお帰りなさい。外が騒がしのは一体何なの?」
「師匠、胎教に悪いです。解散させて下さいよ」
やはり家で待ってくれている人がいるのはやっぱり嬉しいものだと思う。外のお祭り気質の町人が全部悪い。
「あ~。俺がカジノに勝ったのを祝ってるらしい。すまんな」
「それはご主人様が謝る事では無いです!」
「これを見てもか?」
稼いだ金貨をテーブルにぶちまけてみる。
「何ですか! この金貨の山は!」
「これ金貨じゃなくて翠金貨な」
「は? コレ全部翠金貨なの⁉」
「うん。勝ちすぎた」
「限度があるでしょ全く! 国家予算軽く超えてるでしょ!」
「そうなのですか! 流石はご主人様です!」
「戦犯はロイも一緒だぞ?」
「そこで私に振りますか!」
静観を決め込んでいたソフィアも何か言いたげだが、まさかここまで稼いで来るとは思って無かったようだ……。
「ウルルス殿。私を専属護衛にしませんか?」
「がるぅぅ‼ ソフィアさんもご主人様の魅力に気付いたんですね!」
「いえ、こんなに稼いだとなるとメル様がやってきそうなんですよ、十中八九」
「それは来るだろな。めんどくさいけど」
「メルってカジノ王の娘さんの事ですか?」
「ええ、お金が大好きで物事を全て損得勘定でしか判断できないちょっと困った人なんですよ」
「ん~。ロイも俺たちの部屋に移れば部屋の問題は解決するけど……」
「それで構いません。ウルルス殿と男女の関係にならない事を確約しますよ」
「メイが来るまでで良いんだよな?」
「はい。メル様の首に鎖を付けてでも連れて帰ります」
「とりあえずこの金貨の山、どこに隠しましょうか?」
「酒蔵で良くないか? 鍵もしっかりしてるし、隠し部屋もあるし」
「それは知りませんでした!」
「言ったら隠し部屋じゃあないだろ」
「それもそうね。一理あるわね」
「じゃあ、そこに隠す。着いてくるなよ?」
誰も文句は言わないが、視線が物凄く痛い。ウルルスは金は所詮金だと言う認識だが、他の人間がどう思うか考えたことも無かった。
「金は使ったら無くなる。分かってると思うが……」
「使いませんよ? 私達の子供の為ですもんね!」
「少し町の発展にも使うがな、主な理由はそれだ。ホントに分かってんだろうな? 嘘ついたらロイに施したことの三倍のお仕置きが待ってるからな?」
「……。アレは価値観を根底から壊されました……」
「五日間に何してたんですか!」
「ロイの新しい扉を開いてみたぞ」
「し~しょ~う~ぉ?」
「新しい扉を開かれた私は被害者ですよ! 断固抗議します!」
「へ~。じゃあ、師匠はしばらくえちぃい事は禁止です!」
「それは私に死ねと!」
「本当に何してんのよ、ウルルス」
「夜は暇だから、ついな……」
ウルルスは自分の運を性交渉で分け与える事が出来るのだが、それは秘密だ。ロイがカジノで大勝ちしたのはそのせいだ。それでもティアは結局家族内では弱いのだが……。フェイとローガンはウルルスの子を宿しているので運はかなり強い。ロイとティアは運自体は同じくらいなのだが、ティアの勝負勘の悪さはある意味才能だと思う。
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