第118話 賭けの儲け

 カジノでの儲けは最終的に翠金貨二百六十五枚まで膨らんだ。ウルルスの賞金の約三倍近く儲けたことになる。これは末代まで遊んで暮らせる額だ。これだけ儲けさせてもカジノ王はさほど痛くないと豪語した。それはカジノの王が人の欲に果てしない事を知っているからだ。

「どうしましょう。こんな量の金貨見たことありません……」

「金貨じゃなくて翠金貨な。金貨の百倍の価値だよ。一般庶民が見る機会はほとんどないかな」

「なんだか目が回ってきました……」

「普通はそうなる、気にすんな」

「師父は平気そうですね?」

「金は所詮、金だからな」

 そう言って翠金貨を袋に詰め込む。かなりの重量だが持てない事はない。カジノ王が用意した丈夫な皮袋なので穴が開くことは無い。

「流石にロイと金貨の詰まった袋を同時に持つのは不可能だな……」

「私が持っておんぶの隙間に挟むと言うのは?」

「俺の負担が大きい。カジノ王に頼んで馬車を借りよう。嫌とは言うまい」

「また賭けを持ち出すんでしょうか?」

「奴との勝負はもう済んだよ。娘が賭けをしに家まで来そうで怖いけどな」

「師父と結婚する為にですか?」

「そうだけど。どちらかというと儲けた金を取り戻す為かな」

 一度だけ会った事があるが全ての物事を損得勘定で考える子だった。恋愛感情なども損得で考えるような偏った性格で苦手意識を持ったものだ。

「少し遅くなるが馬車で帰ろうぜ。中で残りの調教も出来るし」

「……。まだ有ったんですね」

「嬉しいくせに」

「の、ノーコメントです……」

 


 カジノ王は快く馬車の手配をしてくれた。用意してもらった馬車は四頭引きだった。これならすぐに帰れる。

 五日ぶりの我が家なのだが様子がおかしい。

「これは一体どおいう状況だ?」

「私には分かりません、師父」

 家の前に人だかりが出来て家の中の様子が分からない。人々は全員子供以外は酔っている様だ。

「主役が帰ってきたぞ‼」

「異端者の楽園万歳‼」

 なんだろう、とても嫌な予感がする。

「お、帰ってきたな、ウルルス」

「墓守、これはどういう状況だ?」

「お前の運はこの町で知らない者はいない。大金を稼いで来たんだろ?」

「まあな」

「それを見越しての前祝いをしていたのさ」

「そうかい実際一人で使うには大金過ぎて困ってたんだよ」

「幾ら稼いだ? ウルルスなら白金貨三十枚くらいは軽いだろ?」

「二百六十五枚だよ」

「は?」

「だから翠金貨二百六十五枚だ」

「……。翠金貨? 白金貨じゃなくて?」

「翠金貨だよ」

「えぇぇぇぇぇぇぇ‼」

「うるさいな……。俺ならカジノ出禁じゃなけりゃこれくらい稼げるっての」

「遊んで暮らせるじゃん。町民全員遊んで暮らせるじゃん!」

「それは精神衛生上お勧めしない」

「何故だ?」

「生きる事に張り合いが無くなるからだよ」

「確かにそうか……。でも、そんな大金どうするんだ? 国の国家予算以上の金だぞ?」

「それは町の発展に使うしか無いだろ」

「それはそうだな。金があれば色々な設備が作れるだろうし」

「じゃあ、金貨はとりあえず俺が預かるぞ?」

「ま、この町で一番安全と言えるからな一任する」

「慣れない馬車旅で疲れたよ。じゃあな……。家には入るなよ?」

「それ位町人達もわきまえてるさ」

「どうだかな……。偶に不埒者が居るんだが?」

「知らん。それは私の管轄外だ」

「ま、火傷でよく医院にいるけどな」

「ティアは怖いなぁ」

「阿保か、超絶可愛いだろ!」

「性格が怖い」

「俺以外に肌を許さないとか可愛いくない?」

「ただの危険人物だ」

「ま、意見の相違って奴だな」

「そうだな」




 

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